1902年01月07日 (火) | Edit |
【過去固定エントリ】につき、以前いただいたコメントは削除しています。ご了承ください。ありがとうございました。

Q.42歳の娘が結婚すると言ってきました。話を聞くとお相手は27歳とのこと。こんなに年の差があっては、行く末うまくいかなくなると反対したのですが、聞き入れてくれません。当然のことながら、相手のご家族も反対されているそうです。どうしたらいいのでしょう。

A.年齢差を気にされているようですが、吉永小百合さんご夫妻のように年の差があっても仲睦まじい例があります。吉永さんのところは男性が年上ですが、やみくもに反対なさらず、一度相手の男性とお会いしてはいかがでしょうか。
(とある身の上相談より適宜省略して記憶引用)



ぐぐったところ、吉永小百合夫妻も15歳差とわかりましたが、夫が年上の例では相談者は安心せんぞ、と、つっこみたい。
相談者は年の差そのものよりも、女である娘の側が夫となる男性よりかなり年上であることを気に病んでいるのでは。
昔っから言われています。
女が年上の結婚は「不似合」であり、「自然に反している」(※)と。

(※)「自然に反している」
紀元前4-3世紀の、アンティゴノス朝第2代のマケドニア王であるデメトリオス1世は、若い頃、父から「年から云ふと不似合で年上だけれども」、閨閥上申し分のない女性を娶るよう勧められました。
気乗りしない息子を父は諭しました。
「利益があるなら自然に反しても娶らなければならない」と。
(プルターク「英雄伝」デメトリオス-14)



「将来、若い女に心変わりされて泣きを見るのはお前なのに、なにゆえにこんな身の程知らずの結婚を…。世間様にも恥ずかしい…。」

相談者にしてみれば、「回答者は、わたしの気持ちをぜんぜんわかってくれてない」ってもんじゃないないかな。

ということで、相談者がうちのブログをご覧になる可能性は皆無ですが、ちょうどいい歴史ネタとして奥さんが10歳以上年上の夫婦をつらつらと語ります。
なお、相談者との脳内トークの形式であるのは、書きやすかったからで、妄想が高じているのではありません。

◆イオカステとオイディプス

ご存知「エディスプス・コンプレックス」の元となった神話の悲劇の主人公たち。
イオカステはオイディプスの実母なので、最低でも12歳ぐらいは年上のはず。
仲の良さについては不明ですが、二男二女を儲けています。
予言の成就がなければ、平穏に過ごしていたんじゃないかな。

余談になりますが、幼少のわたしを取り巻く大人たちは「夫婦は夫が年上であるのが当然」と考えており、同い年であってさえ、どことなく男性側が「劣る女」をもらったように憐みの目で見る雰囲気がありました。だから、図書館の児童向けの神話でくだんの物語を初めて読んだ時はびっくりしましたよ。
げー、うそーー、年のことを伏せていたとしても、母親くらいの年上なら雰囲気でわかるじゃん。
こんなお嫁さんをあげますと言われて、オイディプスはイヤだと思わないの~?断らないの~?と、母子相姦の悲劇よりもそっちの方が気になってしかたなかったです。
…お恥ずかしい。
子どもって、純真かもしれませんが、大人の偏見にもどっぷり浸っているという見本です。

 え?神話じゃいい見本になりませんか?
 んじゃ、実在の人物を。

◆アリエノール・ダキテーヌとヘンリー二世

アリエノールは11歳年上です。
後世、「ヨーロッパの母」と称されることになるアリエノールは夫とともに領土を統治し、14年間で五男三女を儲けました。

・・・しまった、このご夫婦、後に夫が若い愛人に心変わりして破局を迎えたんだっけ(主たる要因は、統治上、政治上の意見の食い違いだと思うけど)。おそらく相談者が娘さんの身の上に起こるやもと想定しておられる末路だよなあ。この二人ではいい見本にならないから、仕切り直しで、仲睦まじく添い遂げた例。

◆ディアーヌ・ド・ポワチエとアンリ二世

年齢差20歳。
関係は夫婦ではなく、王と愛妾でありますが、アンリ二世は政略で迎えた同い年の王妃をさしおいて、ディアーヌへの愛情を誰はばかることなく、おおぴらに見せつけていました。
残念ながら若いアンリ二世が先に亡くなった為、ディアーヌは王妃の命によって宮廷から追放されましたが、死が二人を別つまで、年下の「夫」に愛された、年上の「妻」の一生でした。

 は?外人さんだから、変わったカップルでも有り得るんですってか?
 日本人には平凡が一番なんです、とおっしゃいますか。
 では、日本人ご夫妻の中から。

◆藤原敦忠の娘(源延光未亡人)と藤原朝光(ふじわら・あさてる)

朝光さんには、高貴な血筋の若い妻がいて、数人の子女を儲けていましたが、その妻を捨てて、源延光未亡人と一緒になりました。
源延光未亡人とは母子ほども年が離れていたと言われます。奥さんの娘さんも、朝光より上だとのことですから、15歳以上は離れていたんじゃないかなぁ。
さて、そんな「不似合な」夫婦の行く末は…。

「栄花物語」はさすが女の筆なので、この間の消息を伝えています。「かの枇杷の北の方いみじう、賢うものしたまふ人なり」それにくらべ、もとの妻は「ちごのようにおはしければ」とあります。あまりにも子供っぽい妻にくらべ、未亡人の聡明さは朝光の心を捉えて離さなかったのかもしれません。朝光はこの人に、女の真の美しさを見たのかもしれません。
朝光は生涯ついに、「親のような」年上の妻と添い遂げました。千年昔の話です。
田辺聖子「文車日記」内「朝光の恋」より



 いかがでしょう、娘さんの後押しをなさる気持ちが芽生えたでしょうか?
 え?千年前の話じゃ参考にならないって…。
 じゃあ、現代のお話を。

◆とある作家さんと旦那さん

(ご本人がエッセイで公表しておられるけど、他人がネット上でおおぴらにするべきではないと思うので匿名で)
ブレイク中のとある作家さんは、旦那さんよ14歳年上です。
文字通り、恋煩いで入院した旦那さん(当時21歳)に責任を感じて(?)、プロポーズを受諾。
結婚後10年以上を経た現在も仲良いご夫婦です。

 ん?その人は作家という特殊な職業だから、特殊な結婚でも不自然ではないんです、うちは平凡な家庭なんだから、平凡に同い年か年上の男性と結婚して欲しいんですってか・・・。

ええとですね、この作家さんが、旦那さんとの結婚を決意した動機のひとつに「母親の大プッシュ」があったとのことです。

親は常に我が子に幸せになって欲しいと願うもの。
例に出した作家のお母さんが、「さぁ自分の手に掴みなさい!」と、幸せに向けて娘の背をドンと押されたのと比べると、相談者は、「不幸に近づくのはよしなさい」と両手を広げて、娘の前に立ちはだかっているように見えます。
後者も、子どもを守る親の姿として批難されるものではありませんが、相談者さんが省みるべきは、「女が15歳年上では絶対うまくいきっこない」「将来、若い女に心変わりされたら娘の惨めさは、年上の夫に捨てられたそれとは比較にならずに酷い」との思い込みじゃないかなぁ。
さらに、破局したら、「世間様」は、それ見たことか、と、身の程知らずな振る舞いに、優越感たっぷりの憐みと蔑みをよせてくるにちがいない、という怯え。

ごめんなさい。
相談者に偉そうに言える立場じゃありませんよね、わたし。
所詮は他人だし。
わたし自身も「偏見」から解き放たれているとは言えないし。

作家さんを仮名にしたのは、プライバシーだからというのもさりながら、このエントリを目にされた人の中に、「女が14歳上」という夫婦を見下す輩がいるかもしれないと懸念したからです。
この通りに、わたしも世間が持っておいるであろう、その種の偏見が気になるのですから、相談者が娘さんの心配している気持ちを諭す資格はありません。

「男が年上の夫婦では、例として不適切だろう」とのツッコミから始まった、歴史トークのつもり、だったのですが、手に余る方向にきたので、ここでおしまい。

関連後エントリ【藤原頼長さんは愛妻家…なのですか?】

しかるに、リウィアは帝政ローマの創始者にふさわしい、理想的な伴侶であった。

そうえいば、現代版かつハッピーエンド・ヴァージョンの「ディアーヌ・ド・ポワチエとアンリ二世」ともいえるのが、藤間紫さんと三代目市川猿之助ご夫妻です。
有名人で例に出すなら、このカップルの方が適切では。

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