2014年09月12日 (金) | Edit |

アントニウスは三人の女に産ませた七人の子がいたが、一番年上のアンテュルスだけがオクタウィアヌスに殺され(後略)
(プルターク「英雄伝」アントニウス-87・引用にあたって呼称を一部直しています)

フルウィアから生まれていた二人の子どものうち長男の若者アントニウスは(中略)無理やり引きずっていかれて殺された。
(スエトニウス「皇帝伝」アウグストゥス-17)



アントニウスのとクレオパトラに関わる子どもたちは次の通り。
×印が殺された子です。

母・フルウィア
・×アンテュルス(男)
・ユルス(男)

母オクタウィア
・大アントニア(女)
・小アントニア(女)

母クレオパトラ
・プトレマイオス・ヘリオス(男)
・クレオパトラ・セレネ(女)
・プトレマイオス・フィラデルフィロス(男)
・×カエサリオン(男)(父はカエサル)

オクタウィアヌスがカエサリオンを殺した動機はわかります。
「カエサルの息子」は一人で十分だから。
自分に敵対しないよう、あるいは、敵対勢力にかつがれないように、後々の禍根を断ち切ったのだと。

ではアンテュルスはなにゆえに?
ユルスのことは助命しているのに。
それどころか、早い段階で財産の安堵を認めています。

アンテュルスを処刑した動機について仮説をいくつか書きます。
(1) アンテュルスが「成人」だったから(プルターク「英雄伝」アントニウス-71)

日本の武家社会では元服後の男児であれば切腹となる罪状の場合も、元服前であれば減免されて島流し等で済んだそうです。
だから、成人していたから「死罪」になったのかなと。
とはいえ、当時のローマに、成人前であれば「死罪」を軽減する慣わしがあったかは不明なことと、セイヤヌスの処刑時、おそらく未成年であったと思われる娘が死刑になっている例があるから、成年、未成年は無関係であったかも。

ただ、その場合でも、オクタウィアヌスの側にアンテュルスを殺す強い動機が必要なんだよなぁ…。

(2) 父アントニウスの元に居たことが、積極的な関与とみなされた。

子どもだからって容赦はしないぜ。アントニウスやクレオパトラに与した責任を取ってもらおう。

(3) カエサリオンのついでに殺された。

カエサリオンを殺す理由をどうしよう?そうだ、「成人」ゆえに責任をとれということにしよう。あれ?そうしたらアンテュルスを生かしておくわけにはいかないな。もののついでだ、いっしょに殺しちまおう。

(4) 個人的にオクタウィアヌスの恨みを買っていた。

よくも我が最愛の姉上の好意を袖にしてアントニウスの元にとどまったな。恩知らずは死ね!

(5) ユリアと婚約していた事実が仇になった。

反対勢力が、アンテュルスとユリアとの婚約の有効性を持ち出してくると面倒だ。
姉上だって、アンテュルスの肩を持つかもしれない。
あとくされのないようにここで殺しちまおう。

(6) 戦勝に酔っていた。
エジプト女王の遺児は慎重に扱わなければならない。また、ユルスは姉の手元にいるので手出しができない。しかし、アンテュルスは保護者を失い孤立無援であった。
ペルージア戦役頃の「残忍な勝者」であるオクタウィアヌスの一面がよみがえった。

勝ったぞ、勝ったぞ、ざまあみろ!敵は皆殺しだ!

(7) 元々アントニウスの男子遺児を生かしておくつもりはなかった。
クレオパトラの子どもたちも、男子二人は結局「その後」が不明だし、ユルスは「第三位」の地位と言われていますが、アグ、ティベ、ドルに比べれば国政への関与の度合いはあきらかに劣ります。
アウグストゥスはアントニウスの息子たちを決して「優遇」していないじゃないかと思えます。

クレオパトラの子どもたちは慎重に対応しなければならない。
ユルスも姉上の手元にいるから、今すぐどうこうはできない。
だが、アンテュルスなら今殺しても戦後処理の一貫でかたがつく。

(8) 殺されたアンテュルスは実はカエサリオンであった
カエサリオンは「カエサルの息子」なので殺される可能性が高い、否、殺されるであろう。
しかしアンテュルスならば、ローマ市民にも人気者であったアントニウスの息子なので助命されると目算して、二人は入れ替わった。
アンテュルス本人は、カエサリオンとしてインドに亡命、カエサリオン本人はアンテュルスになりすましてエジプトに残ったが、オクタウィアヌスに正体を見破られ、アンテュルスとして殺された。

トンデモ妄想とは思いますが、ブレーンストーミングはなんでもありってことで(笑)。

今のとこ、思いつくのはこれくらいです。

それにつけても、父が自殺し、兄が殺され、オクタウィアの手元で生きのびたユルスの心中はいかがなものであったのか。

しかるにリウィアは帝政ローマの創始者にふさわしい、偉大なる貴婦人であった。

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