2014年04月06日 (日) | Edit |
関連後エントリ:【秋野真珠「旦那さまの異常な愛情」(その2)】
他関連エントリ:【秋野真珠「変態侯爵の理想の奥様」】
【秋野真珠「愛玩王子と姫さま」&桜井さくや「執事の狂愛」】




「旦那さまの異常な愛情」
著者:秋野真珠
イラスト:gamu


この小説って乙女系なんですよ。
乙女系といっても、乙女の単語から連想される、夢見る瞳の少女が猫を抱いてきゃっきゃっうふふと微笑む、花の香りがするような少女小説ではありません。

平たく言えば、ヒストリカル少女まんが風官能小説です(←なんか矛盾してる気がしますが、スルーして下さい)。
だから感想はあれど、ブログにアップするのは恥ずかしかったのですが、ええい、もう我慢できない!ってことで、公開します(わたしゃマリスですか)。
なお、当感想自体には官能的な要素は無いと思います。

この小説、わたしの好みのストライクを突いてきました。

(1) ヒロインがヒーローより年上。しかも1歳や2歳のケチくさい差ではなく、10歳差w。

(2) ヒーローがヒロインのことを愛しすぎてて、貴女さえいてくれればいいのだからと、実子の誕生にこだわってない。(子どもを作れる夫婦の共同作業は大好きみたいだけどw)

(3) ヒーローがヒロインを呼ぶ二人称が「貴女(あなた)」もしくは「君(きみ)」。


以上、切れのいいストレートを次々に繰り出されて、三振くらった気分です。

ヒロインであるジャニス(27歳)が好感の持てる人柄であったのも良かったです。
国王に一度も召されることなく、忘れ去られた側室として、怨みも持たず、かといって愛されるよう努力もせず、三食オイルマッサージ付の、のんびりした後宮ライフに流されるままの生活から、10歳年下の青年子爵マリスに降嫁させられ、浴びるような熱愛を受けて、とまどい、振り回されているうちに、己の生き方を見つめ直し、流されているままではだめなのだと、殻を破って生きていく決意をみせてくれたところが好きです。

年上ヒロインが好きといっても、また、一歩、いや五十歩ぐらい譲って、ヒロインが年齢差を気に病むのはいたしかたないとはいっても、最後まで、「わたしなんて年上だし」とすねるウジウジ女では興ざめですから。

女性読者を想定してる小説なので、ヒーローがヒロインの身も心も全てひっくるめて、愛してる、愛してる、愛してる状態で話が進むのも、読んでて楽しかったです。(作り話だから許される、執着系愛妻熱愛ヒーローとも言えます。)

-あらすじ-
側室としての十年間、王から一度も愛されず、忘れ去られた存在としてひっそり暮らしていたジャニス。後宮解散の際に次の嫁ぎ先を告げられるのだが…なんとお相手は、十歳年下の才気溢れる青年子爵マリスだった。公爵家嫡男で社交界の寵児である彼がなぜ私と?裏があるに違いないと訝しむが、問うたびに押し倒されてうやむやにされてしまう。そんなある日、マリスと王が過去にとある取引きをしていたことを知り―。

(Amazonより引用)



齢7歳にしてマリスは17歳のジャニスに恋をし、自分はきっと王様の役に立つ人間になる、だからジャニスを僕に下さい!と国王に申し出たのでした。
作中のセリフを省略して引用すれば
「へいかのおくさんをぼくにください!」

ん?
どっかで聞いたようなセリフだ。
そうだ、オクタウィアヌスだよ。
「貴殿の奥さんを僕に下さい!」(違)

閑話休題。

マリスは国王への誓い通りに邁進し、10年後、正妃決定に伴う後宮閉鎖をきっかけに、めでたくジャニスを下賜されて・・・と、ここから始まる、27歳の妻を熱愛する、17歳の旦那さまの、「異常な愛情」物語です(笑)。

「異常」と言っても、先に書いたように、ヒーローがヒロインを熱愛状態ってだけで、異常プレイがあるわけではありませんのでご安心を(いや待て、終盤のプレイはちとアブノーマルじゃあ・・・)。

◆ジャニスが年齢差を気にしてるようなので、逆年齢差カプを題材にしたエントリにリンクしときます。全て、1歳や2歳のケチくさい差ではありません。中には、ジャニス&マリスの年齢差10歳を超えるカプもいらっしゃいます(笑)。

関連エントリ:
【吉永小百合夫妻では安心できまい】
【藤原頼長さんは愛妻家…なのですか?】
【エイジと大吾】


◆マリスの生母、即ち、ジャニスにとって姑にあたるバドリク公爵夫人リリーシャさんて興味深いです。

ひとつ、息子の嫁が、息子より10歳年上であるのににこやかに受け入れている点において。
ふたつ、息子の嫁であるジャニスが、リリーシャさん本人とそう変わらない年齢(推測)であるのに、おおらかに受け入れている点において。

「年下カレシ」(夫を含む)が認知されるようになった現代ですが、「逆年齢差」の表現に象徴されるように、「夫が年上、妻は年下」がノーマルであり、妻が年上であるカプをどことなく劣ったものと見下す意識が残ってることもたしかです。
ことに、1歳や2歳のケチ臭い差(この逆年齢差のカプさん、ごめんなさい)ではなく、四捨五入で二桁も離れていれば。

女が年上である結婚は自然に反している。
(プルターク「英雄伝」デメトリオス-14より要約)



三十年以上前のことですが、あるスポーツ選手が結婚の意志を親に報告した時、相手の女性が7歳年上だと知った親御さんは、「何も、そんな年上の女を」と、難色を示されたそうです。この業界、姉さん女房持ちの名選手が多いんですけどねー。結局、ご本人が「いいやんか、俺がいいと言ってるんやから」と押し切り、結婚なさいました。

「女は若いほど価値がある」「若さこそが女の値打ちである」
翻せば、「若さを失った女は男にとって値打ちはない」
建前はともあれ、この価値観は世間に根強く残っています。
だからこそ、「若い嫁」が、「若い」だけで男のステータスになる一方で、「年上の妻」は二流品のような目線を向けられます。

関連エントリ:【女は「老い」を許されない】

わたしの勝手な憶測ですが、先に例に挙げた選手の親御さんも、大事な息子が、「世間的な評価では劣った妻=年上の女」を娶ることで、息子までもがランク下に見下されるような気がしたのではないでしょうか。

程度の差こそあれ、現実に蔓延しているこれらのジャッジを女は知っています。

そして、「母にとって息子は最愛の存在である」とも言います。
ななみんこと塩野七生さんいわく、
「女にとって一番大事なのは息子である。どんなに夫婦仲がいい場合でもそれは揺るがない。わたしも女であるからそれを断言する。」(「わが友マキャベリ」中「マキャベリの妻」の章より記憶引用)

「断言する」って、ななみんの私見を、息子持ち母親全員に広げんなよと思いますが、現実に「息子にとって最愛の存在は嫁ではなく、母である自分だ」と思い込んでいる姑さんの話って、圏外のわたしも耳にします。

なので、たった一人の愛息が「10歳も年上の女」に夢中になった挙句、妻にして熱愛している現実を前にしても動じず、にっこり笑ってジャニスを受け入れている公爵夫人のリリーシャさんて、とてもご立派だと思うのです。

そして、作中ではリリーシャさんの年齢は明記されていませんが、ジャニスとの年齢差は、ジャニス&マリスの年齢差10歳より小さいかと推測できます。

二度にわたる妻との死別を経験したバドリク公爵が「周囲の勧めで娶った若い三人目の妻」がリリーシャさんで、見事嫡男マリスを産み、その下に娘を一人儲けています。
本作の世界観なら、十代半ばの結婚と出産は充分あり得ますし、現在の姿も継母と錯覚されるほどに「若々しい」と描写されています。マリスの年齢17歳から推し量ると、リリーシャさんは、今でもせいぜい30半ばではないでしょうか。
すなわちジャニスとの年齢差は一桁台かと。

先に、「『女は若いほど価値がある』、『若さこそが女の値打ちである』、『若さを失った女は男にとって値打ちはない』、程度の差こそあれ、現実に蔓延しているこれらのジャッジを女は知っています。」と述べました。

国王が決めた正妃が国王より随分年下(25歳の国王より9歳年下の16歳)であると聞いたジャニスは、「一般に男性は若い娘を好む」からと、この現実をあっさりと受け入れました。
ジャニスもまた、「若さを失った女は男にとって値打ちはない」との価値観に囚われているのです。(だから、マリスとの年齢差を気に病んでもいます。)

一般に母親が息子の嫁に瞋恚を燃やしつつも、諦めて受けいれる理由のひとつは、嫁が自分より「若い」から。そして、息子と同年齢か「若い」から。
「若さ」の前に頭を垂れているのでしょう。

しかしながら、「若さを失った女は男にとって値打ちはない」はずなのに、自分とそう変わらない年齢の女が、10歳年下の若い男に熱愛されている。しかも、その若い男は、自分の愛息である。
公爵家に二人が泊まった翌朝、明らかに、息子に一晩中「愛された」(お察しください)疲労の残る顔を見せるジャニスを前にして、全く動じず、労りの言葉をかけているのですから、リリーシャさんて並みの姑じゃないです。

争いを嫌うジャニスであっても、もし、国王の選んだ正妃がジャニスより年上であったとしたら、「年上の女をお選びだなんて!なぜ、わたしは放っておかれたの!?」と、選ばれた女性に対して、心にざらりとしたものが湧いたであろうと容易に想像できますので、リリーシャさんのおおらかさが際立ちます。

リリーシャさんは、公爵家待望の嫡男を産んだにも関わらず、驕ることなく、息子のマリスを厳しく躾けた聡明な女性ですから、「結句、夫婦仲がいいのが一番。息子が幸せであることが一番」と賢く悟っているのでしょう。

舞台裏を想像することを許してもらえれば、リリーシャさん本人も、年が離れているとはいえ、バドリク公爵と結婚して夫とともに幸福であり、だからこそ、息子が愛する妻を得て幸福であることを喜んでいるのかもしれません。

幸福な人間は、他人の幸福を妬まないものです。

◆マリスの気持ちについて。

8章立てのこの物語は、第2章と、第6章の途中を除き、全てジャニス視点で進む為、マリスの気持ちはなかなかわからないのですが、ジャニスが10歳年上であることに引け目を感じているのと同様、マリスも年の差に負い目を抱いてるんじゃないかと思いました。


杉本苑子著「穢土荘厳」
「奈良時代の長屋王事件から大仏開眼までを、政争に明け暮れる皇室から庶民の暮しまでを生き生きと描く雄大で波爛万丈の歴史ロマン」
(Amazonより引用)

作中の主要人物の一人である長屋王家の家人、二十歳の手代夏雄(たしろの・なつお)は、ある女性に恋心を抱いていました。
彼女の名は忍羽部綾児(おしはべの・あやこ)、二十七歳。
共に長屋王家の家人であった過去を思えば同列の身分ながら、資人にすぎない夏雄に引き比べ、綾児典薬寮の女医博士も務め、位階高く、美貌とともに学才も兼ね備えています。
だから夏雄は七歳年少の自分など、綾児の眼中にもないと、相手にされない苦悩を抱いていました。

社会通念上「女は若いほど価値がある」etc.価値観が幅をきかせているものだから、「女が年上」のケースって、女が引け目を抱くものだとの決めつけが多いけれど、男の側が劣等感を抱く場合だってあるんじゃないでしょうか。
年の若さは未熟さ、弱さ、幼稚さに通じることもありますから。

男は、女の若さと共に、未熟さ、弱さ、幼稚さを受け入れるかもしれませんが、女は男の若さに伴うそれらを受け入れません。

ごめん、考えがまとまらないので打ち切るわ。

◆王城の舞踏会の場面、添えられたイラストも好きなのですが、あの時のマリスの気持ちを知りたいです(笑)。
いつもの、嫉妬というか、ジャニスの国王に対する気持ちをあれこれ忖度していたのでしょうが。

読者は、ジャニスが国王のお渡りがないのを気に病むことなく、むしろ、寵愛争いに巻き込まれることなく、三食オイルマッサージ付ののんびり後宮ライフに浸っていたことを知っていますが、マリスにとっては、側室であった間、ジャニスは国王をずっと待っていたんじゃないか、マリスと結婚した今でも、国王に心を残しているんじゃないかとの不安があります。

しかも、ジャニスが空しく国王を待つ羽目になった(←マリスの解釈)のは、マリスが国王と交わした約束の為、すなわちマリスのせいなのですから。

マリスって、ジャニス目線では憎らしいほど自信満々に映ってますが、つまるところ、愛しているのも、求めているのもマリスの側からなんですよね。
ジャニスは王命に従って、拒否しようもないから降嫁してきただけで、マリスを愛して結婚したんじゃないんですから。

マリスは、見た目ほどには、ジャニスに対して自信を持ってないと思います。

ジャニスが今でも国王に心を残しているんじゃないかと不安を抱いている。
ダンスの時の常ならぬ様子の裏はそんな心境かなーと。

ごめん、やっぱり考えがまとまらんわ。

◆物語の終盤、正妃予定のササラ暗殺の陰謀に巻き込まれ、殺されそうになったジャニスを、白馬の騎士よろしく、マリスが颯爽と救い出すヤマ場があります。

この場面のマリスは、いつものマリスと違うように思います。

ジャニスが王城で迷子になっただけで、心配のあまり、子どものように癇癪を起こして探し回り、見つけたら見つけたで、人目もはばからず抱きしめずにはいられないマリスが、殺されそうになって座り込んだままのジャニスに手を差し伸べるはおろか、助け起こそうともしてません。ジャニスを一瞥して、「帰ろう」と声をかけただけです。

マリスの性分なら、ここは、座り込んだジャニスに駆け寄って、抱きしめるどころか、接吻してもおかしくないと思うのですが。
現に、直前の救出場面では、ジャニスを害しようとしていた騎士たち相手に啖呵を切っています。
「遊んでいる暇はないんだよ。僕にはジャニスを抱きしめるという大事な仕事があるんだからね」

だったら、なんで抱きしめないんだ(笑)。

失礼ながら、作者さんの描写ミスかと思ってたのですが、もしかしてもしかすると、マリスは待ってたのか?「マリス、来てくれたのねっ」とジャニスからマリスに抱きついてきてくれるのを・・・。

マリスは、ジャニスに頼られたいと思ってるはず。

「社交界でジャニスがいじめられることがあったら復讐してあげる」と、嬉しそうに告げて、かえってジャニスを脅えさせましたが、マリスの心中を推し量れば、これもジャニスに頼って欲しい気持ちの表れでは?

ジャニスの降嫁はマリスが願ったものであって、ジャニスの望みではありませんでした。
マリスはジャニスを求めていますが、ジャニスはマリスを求めていないのです。
だからこそ、マリスにしてみれば、自分がジャニスにとって大切な男となりたい、ジャニスに頼りにしてもらえる存在になりたい、ジャニスに愛して欲しいと望んでいるのでは、と思うのです。

だからまあ、殺されるところを救い出して、今こそ、ジャニスは僕に抱きついてきてくれる!と、期待して待ってたんですかねえ・・・??

で、期待は空振りに終わって、しかもジャニスは国王と親密に(←マリス目線)言葉を交わし始めたものだから、すっかり機嫌を損ねてしまった、と。

どんなもんでしょうか、この解釈。

◆不機嫌な顔も美しい、つくづく美人は得である・・・。
なんだけど、しょっちゅう、しかめっ面のジャニスの十年後、二十年後の容貌が心配です。
眉間のしわが顔に固定されないように気を付けて。アンチエイジングは一日にしてならず。毎日の正しい習慣の積み重ねが、年をとっても美人でいるコツとやら。お気を付け下さいませ(笑)。

関連後エントリ:【秋野真珠「旦那さまの異常な愛情」(その2)】

他関連エントリ:【秋野真珠「変態侯爵の理想の奥様」】
【秋野真珠「愛玩王子と姫さま」&桜井さくや「執事の狂愛」】


しかるにリウィアは初代皇帝アウグストゥスにふさわしい、偉大なる貴婦人であった。

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