2014年05月18日 (日) | Edit |

「旦那さまの異常な愛情」
著者:秋野真珠
イラスト:gamu


◆乙女系はイラストも大事。

イラストが大事であることは同様の、とあるライトノベルのヒロインは、文章ではこれでもかってなくらいに、絶世の美女としての描写がされていたのに、イラストはアニメ風頭でっかちデカ目幼児体型の女の子姿でありました。わたしはちぐはぐだなあと違和感を抱き、小説本体を読み進める気が失せました。
しかし、売れ行きはよかったようで、読者ニーズには合ってたんでしょうか、あのお子様ランチみたいな美少女イラストは。

本作は、ジャニスの27歳という年齢を汲みとって、大人っぽく描いて下さってます。まとめあげてアップにした髪型が多かったからそう感じたのかな?
十代にしか見えない女の子にされなくてよかった!

カバー絵ではジャニスは髪を下していますが、作中イラスト10枚中、7枚がまとめ髪でした。
マリスに愛されている(お察しください)最中でもまとめ髪なんです。その時の、まとめ髪がくずれそうでくずれてない感じがなんとも好きですw

・舞踏会でダンスする二人。
・ソファでマリスがジャニスを抱擁している場面。
・初夜の場面(いや、昼だったけどさ・・・)。
・後朝(きぬぎぬ)の場面。
以上、四場面のイラストが特に好きです。
ダンスと抱擁の場面は二人ともちゃんと服着てるのと、ジャニスのドレス姿と、マリスの表情が好きです。
初夜の場面でのジャニスは、いつもまとめ上げている髪がほどけてすこうし乱れてて、そこが好き(けっして性的な理由じゃない)。
後朝の場面、こちらはジャニスのみだれ髪と恥じらう表情が好きです。

二人の出会いの場面もイラストで見たかったなw。

ちょっと気になったのが、画風なのか、本作だけなのかわからないのですが、ベタが極端に少なく、トーンが多かったこと。それも似た感じのトーンが多くて、見づらい感じもしました。
あるいは、似た印象のトーンを多用していると感じるような使い方である、と言った方がいいのかな。
気になって手元の別ラノベやらまんがやらを見直しましたが、わりかしトーンを使いつつも、トーンが多いと感じませんでしたから。

・・・と、紙本ではそう感じたのですが、KINDLE版だとトーンが全然気にならなかったです。むしろ綺麗。
(紙本を立ち読みしたんじゃありません。紙本を定価買いして読んで、気に入ったのでKINDLE版も購入しました。)
トーンの印象って、デジタルと紙本では印象が変わることもあると知りました。

余談ですが、某ジョゼフィーヌまんがのこと。
少女まんがだから、ヒロインが実年齢不相応に「若く」描かれるのは許容範囲です。
しかし、実年齢不相応に「幼く」描かれるのはないわ。
結婚しようが、子どもを産もうが、子どもたちが成長しようが、ジョゼフィーヌ本人は十代前半にしか見えないキャラデザで、いただけなかった。
おかげで彼女が何をやっても何を言っても、おままごとの世界に見えたよ。
夫のアレクさんとナポさんが幼女好みの変質者に見えたよ。
物語の終盤でやーーーと、頭身が伸びて、十代後半に見えました。
成長した姿が、まだ十代・・・。

◆ヒストリカルの利点と言うか、マリスがジャニスを呼ぶ二人称が好きです。
貴族の青年っぽく、「貴女(あなた)」もしくは「君(きみ)」。

現代だと、男から女への二人称って、「おまえ」が幅をきかせてるもんね・・・。
夫婦になればなおのこと。
「おまえ」とは元々「御前」であり、敬意を表する二人称だったと言われても、現代では明らかに目下を指す、場合によっては見下した意すら含む二人称です。

本作では、国王が他者を「お前」呼びしていました。
マリスや正妃予定のササラは目下でもあり、年下でもあるのですが、相当年長のバドリク公爵に対しても「お前」呼びでした(p86-87)。
まあ、国王ですから。国で一番偉い方ですから。

国王でも皇帝でもないのに、女を「おまえ」呼びするニッポン男児ェ・・・。

感想(その1)のリンク先(「エイジと大吾」)で紹介している「め組の大吾」。
好きな作品ですが、大吾から落合静香さんへの二人称は、結婚後、「おまえ」でありました。
小さい一コマ、しかも手書きのセリフで、「おまえに似たんだ」だけだったので、めくじら立てるものではないかもしれませんが、そっか、結婚して夫になったら、年上の妻の静香さんを「おまえ」呼びするんだーと、もやっとくるものがありました。
理解はしてますよ、夫婦になって距離が縮まり、親しさが増したゆえの「おまえ」呼びであると。
しかし、親しさが増したからといって、静香さんが大吾を「おまえ」と呼びますか?呼んでません。実際、静香さん側からは、「あなた」もしくは「大吾」でしたし。
大吾も「おまえ」他、「静香」と、名前呼びもしてましたけど、二人称については非対称です。

ジャニスを妻にしてなお、「貴女(あなた)」呼び、「君(きみ)」呼びを崩さないマリスが、とってもいい夫に見えるよ!

またまた余談。
某少年誌に連載された年上ヒロインものについて。
少年誌掲載なので、ヒロインが男のロマン系痴女(←わたしの感想です)なのは、まあしょうがない。
しかし、男主人公が中1(13歳)の身で、ヒロイン(高校生17歳)をはじめ、年上のおねえさんキャラたちを「おまえ」呼びしてるのは、すっごく不快でした。
今どきの中学生男子らしく描いたらそうなったんでしょうけれど。
別に偉そぶった尊大な子じゃない、ラブコメの主人公にふさわしく優しいとこもある平凡な子なんだけど、中1にして、年上相手でも、女を「おまえ」呼びすることを身に着けちゃってんだな。

この子は、たいていの男子相手でも「おまえ」呼びでしょうが、じゃあ、女の側からこの子を「おまえ」呼びするか?と考えれば、そんな呼び方はしません。できません。非対称なんです。
男は女を「おまえ」呼びするけれど、女は男を「おまえ」呼びできないのです。
女が男を「おまえ」呼びしたら、「女らしくない」とか「乱暴だ」とか批難ごうごうですよ。

関連して思い出したついでに。
少女まんがと青年まんがで逆年齢差カプものを読む機会がありました。
どちらも男主人公が小学生(10歳前後)からお話は始まり、ヒロインは7、8歳年上でした。
そしてこの両作品とも、小学生のくせして、男主人公は年上ヒロインを二人称では「おまえ」呼びしてました。
中1どころか、小学生で女を「おまえ」呼びすることを身に着けてるんですよ、男は。
両作品とも「不快」であったのは言うまでもありません。

なお、この二作品のヒロインは、やることなすこと非常に「幼稚」(←わたしの感想です)で、その点でも「不快」な作品でした。

マリスはジャニスが「可愛い、可愛くてたまらない」そうですが、わたしの目には、ジャニスは世間知らずなところはあっても、分別のある大人の女性でした。
よかった、年上ヒロインだからといって、年下ヒーローに「釣り合う」よう、幼稚な女にされなくてほんとによかった・・・。
(例に出した少女まんがと青年まんがで、年上ヒロインを年下男に釣り合うようキャラ設定すると、「幼稚」化する点に問題が含まれていると思います。)

◆「貴女(あなた)」呼びと、「君(きみ)」呼びの件。
当初、王城での情事以前は「貴女(あなた)」呼び、以後は「君(きみ)」呼びに変化してると読んでて、ああそうか、王城の小間で、ジャニスがマリスの気持ちに揺れているところを見せたので、夫としての自信が少しついて、「貴女(あなた)」呼びから「君(きみ)」呼びに変わったのかと解釈しておりました。
が、王城以前にも「君(きみ)」呼びがあるのに気付きました。
残念、この解釈、気に入ってたのに。

王城以前の「君(きみ)」呼び→P73「(前略)君は馬車に乗って、僕の手を取って一緒にいるだけでいい」

この先、夫である自信がついても、「おまえ」呼びに落ちるなよ、マリスw。

◆面白いと言うか、興味深いのが、マリスが「誰にも挿れてない清い体」(お察しください)のまま、「でも娼館で、挿入以外はあらゆる手管を練習してきたから閨の技術はばっちり習得しているよ。ジャニスを最高に気持ち良くしてあげることができるよ」状態で、初夜に備えていたこと。

一見、男性向けエロ作品に登場する「処女だけど、最初っからエロい、感度よし、具合よし」と三拍子そろった男向け妄想女の子キャラの対称に見えて、対称じゃないんじゃないかという気がして。

惣領さんの「チェーザレ」で、アンジェロが娼館で初体験の後、本命の女と一発か二発か知りませんが、やって別れた展開にもやもやしてるんですよ、わたし。
言葉づかいが乱暴なのは、あの展開が不快であったからです。悪しからず。

初体験だけで終わってれば、男子向けによくあるPL(プライヴェート・レッスン)ものと割り切れたのに。
一晩経験したくらいで上達するわけでなし、せいぜい穴の位置と出し入れの仕方を経験したぐらいなのに、別れの一発をすませる資格ができたとでも思ってるのかボケとか、どうせたいして上達もせんだから、せめて、「清い体」を本命彼女に捧げりゃよかったのにとか、そして、一番もやもやくるのは、不快ではあるけれど、わたしがスルーしているPLものの害をご丁寧にあぶりだしてくれたことです。

PLものって、性交に伴う責任を男にまるきり教えないくせに、穴の位置を知って、出し入れを経験しただけで男に一人前だとの間違った思い上がりを植え付ける、すっごい無責任なお話の作りだと思うのです。これって、リヴェンジ・ポルノで男が免罪されてることと同根だと思うのです。

脱線しまくってます。

考えがまとまらないのですが、「清い体でなおかつ、愛する女性を最高に気持ちよくしてあげられる手管を身に着けている」マリスの設定は興味深いです。
なお、ここで大事なのは「女を」ではなく、「愛する女を」である点です。

◆もう一点、興味深かった点があります。
それは、当初、マリスが娼館で挿入済み、もとい、経験済みであると誤解したジャニスがその事を不快に感じてた点です。

この件についても考えがまとまらないので、先のマリスの件(「清い体でなおかつ、愛する女性を最高に気持ちよくしてあげられる手管を身に着けている」)とワンセットで、興味深いとだけ書いときます。

マリスの貞操とジャニスの不快感の件について考えがまとまりました。
よろしかったら、次のエントリをどうぞ。後半でマリスの貞操堅固っぷり(笑)について言及しております。
関連エントリ:【アンドレが童貞でないことを受け入れる女性読者の心理について】

マリスは、究極の乙女系ヒーローだ!

◆校正もれかと思われる箇所を一カ所見つけました。
P128「結果、さらにマリスにの近くに」
あきらかに「マリスにの」のくだり、「に」は不要です。

◆書くか書くまいか迷いましたが、ところどころ、ひっかかる単語使いがあったので、自分用のメモとして記しておきます。
わたしの感じ方であるのはわきまえています。間違いだと指摘したいのではありません。

P43「乳房を遊んでいた手が(後略)」
→どうも座りが悪い続き具合だなあと。
「乳房を」と、「を」を生かしたいなら、続く言葉は「弄んで(もてあそんで)」か、「弄って(まさぐって)」が適切かと。
逆に「遊んで」を生かすなら、「乳房で」の方がよいのではないかと思います。

P74「ジャニスがマリス以外を望むとなると」
→「マリス以外」の後に「男」という単語があった方が意味がより通じるのでは。
「ジャニスがマリス以外の男を望むとなると」という具合に。
なくても意味は察しがつくのですが、直前に「ジャニスが望むならなんだって手に入れて見せる」と考えてますし、ちゃんと「ジャニスが望むもののであっても、男は別」と明確にしてもいいんじゃないでしょうか。

P97「あれからかなり時間が経ったはずだが(後略)」
→十年という長い歳月が流れているので、「時間」よりは「月日」の方がよろしいのでは。

p106「(前略)ジャニス様のどちらが一番お好きになられましたの?」
→「どちらの」よりは「どこが」の方がいいような気がするのですが、念のため「どちらの」を引いてみたら、「複数の中から一つだけを、限定しないまま、取り立ててさす」との意味もあり、用例として「どちらがお好きですか」と挙がっていたので、「どちらの」でも適切なのかもしれない・・・?。
しかし、複数の美点を挙げてその中からじゃなくて、ジャニス全体の中からと漠然としてるから、やはり「どこが」の方が適切な気がするんだけどなあ。

P107「(前略)すぐに申し訳なさそうな顔で陛下を仰ぐ。『・・・申し訳ありません、陛下』」
→地の文で「申し訳なさそうな」の後にすぐ、セリフで同じく「申し訳ありません」と続くのは、ちょっとくどいと言うか、文章として美しくないと言うか。
「すまなそうな顔」とか「心苦しさをいっぱい湛えた表情で」とか、意味は同じ別の言い回しがありますから。

P145「マリスが夢中になるだけあって予想通りの方ね」
→「予想」は「物事の成り行きや結果について前もって見当をつける」意味なので、「想像」の方が適切では。
「想像した通りの方」あるいは「想像していた通りの方」等。

追記.
この感想をアップ後、「日出処の天子」(山岸凉子著)を読み直す機会がありました。
作中、主人公の第一夫人が第二夫人と初めて顔を合せた時、心中、「予想していたより美しい」と評してました。
既にあったのですねえ、「予想通りの方」と同じ用い方が。
「日出処」は1980年から1984年にかけての連載なので、ほぼ30年前から、この用い方があった、ということでしょうか。
ただ、わたしの感覚では、「想像」の方が適切のように思います。あくまでも、わたしの感覚ですので、絶対正しいとは言いません。

そして、用語の件とは別に気が付いたのですが、「日出処」中、「女が年上の夫婦は自然に反している」観が見受けられました。せいぜい、女の側が2、3歳年上なだけなんですけど、あまり年の差を持ち出す必要がない場で、さぞ重要な瑕疵のように使われていて、30年前はたかが2、3歳の差でもみっともないかのように見られていたのか、と嘆息しました。



話を戻して、最後に、初夜にジャニスを引かせたマリスのセリフ、「初めては、ジャニスがいいから」は、ずばり

「挿れたいのはジャニスだけだから」

の方が良かったんじゃないかと思いますw
「初めては」との言い方をするので、「てことは、二度目以降は別のオンナでもOKってことかよ」とつっこんでしまいましたw。
だから、やはりここは、「挿れたいのはジャニスだけだから」でww。
そもそも、「初めて」も「二度目」も「三度目」も(以下続く)、挿れたいのはジャニスだけでしょ、マリスはwww。





三度に渡って長々と書きました。
書き足りない気もしますが、ひとまず、書き上げた感想全てアップ出来て、「あー幸せ!」(わたしゃマリスですかwww)。



・・・「あー幸せ」で終わらせたかったのですが、もう少し。ちょっと愚痴です。
本作の設定「ヒロインがヒーローより10歳年上」。
これは、マリス風に言えば「二度と起こらない奇跡と言ってもいいほど」の設定なんですよね・・・。

「ヒーローがヒロインより年上」設定であれば、10歳年上であろうがなんだろうが、何度でも繰り返し用いられるでしょうが、「ヒロインが年上」設定は冷遇されています。
こんな現状では「ヒロインが10歳年上」である作品は、もう二度とお目にかかれないでしょう。残念です。

関連前エントリ:【秋野真珠「旦那さまの異常な愛情」(その2)】

他関連エントリ:【秋野真珠「変態侯爵の理想の奥様」】
【秋野真珠「愛玩王子と姫さま」&桜井さくや「執事の狂愛」】


しかるにリウィアは初代皇帝アウグストゥスにふさわしい、偉大なる貴婦人であった。

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