2014年05月27日 (火) | Edit |
「時の娘」系リチャード三世贔屓のわたしが、イギリス関連の一般向け歴史本を読む時、ついチェックしてしまうのが、「リチャード三世についていかなる説を採用しているか」

目安として○、△、×の「リチャード・ポイント」なるものを用いております。
分類の基準はおおざっぱに次の通りです。

○…リチャード三世見直し論(甥殺し等数々の悪行はヘンリー・チューダーらによるプロバガンダである等)の記述と共に、「甥殺しに非ず」の立場をとっている。

△…リチャード三世見直し論を記載しているが、甥殺しを否定していない。

×…チューダー史観そのまんまの「甥殺しの簒奪者」として記述している。


以下、勝手にリチャード・ポイント判定。

なお、これはお遊びです。

リチャード三世の「行為」については論争が続いている状態であり、黒白の結論は出ていません。
また、リチャード・ポイントが×だったり、△だったりしても、著作全体が不出来って言いたいんじゃありませんから。そこんとこ誤解しないでね!
なお、漫画、小説等創作は除外しております。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「肖像画で読み解く イギリス王室の物語」
著者:君塚直隆
新書:208ページ
出版社:光文社
リチャードポイント:×

チューダー朝のヘンリー七世から、現代のエリザベス二世までの肖像画採りあげて、イギリス史の流れを楽しめる佳品ですが…。

「一四八〇年代初頭までには、優勢を誇るようになっていたヨーク側ではあったが、シェークスピア史劇で悪名高いリチャード三世が兄の遺児や有力者を次々と殺害して権力を掌握するや、その権勢にも陰りが見られるようになっていった。」

シェークスピア史劇を持ち出した挙句に、断定してまんがな…。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「図説 ロンドン塔と英国王室の九百年」
著者:出口保夫
単行本: 252ページ
出版社: 柏書房
リチャードポイント:△

ヘンリー七世首謀者説を紹介していますが、「リチャード三世がどうもこのシナリオを書いた張本人のように思える」ですってさ。いいけどね・・・。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「ダークヒストリー 図説 イギリス王室史」
著者:ブレンダ・ラルフ・ルイス
訳:高尾菜つこ
単行本: 342ページ
出版社: 原書房
リチャードポイント:×

リチャード三世の悪行は、勝者であるチューダー朝がねつ造したものとの書いておきながら、結論は従来の「リチャード三世は甥殺し」にほぼ落ち着いていたぜ。
何を言ってるかわかんねぇと思うだろうが、俺もさっぱりわからないぜ。おそろしいものの片鱗を味わったぜ…。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「幽霊のいる英国史」
著者:石原孝哉
新書: 256ページ
出版社: 集英社
リチャードポイント:○

最初は「リチャード三世が甥の二王子を殺した」風に書いていあってがっかりしたのですが、後半ではちゃんとヘンリー七世による殺害説にも言及してありました。
なんとなく、著者はリチャード三世に好意的な感じがします。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「リチャード三世は悪人か」
著者:小谷野敦
単行本::236ページ
出版社::NTT出版
リチャードポイント:△

最終的にロスの見解(リチャード三世は甥殺しに関与している)を採用しておられるようですが、賛否両論の史実論争の流れや各人の主張の要点がわかりやすくまとまっていたのでありがたいです。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「図説 テューダー朝の歴史」
著者:水井万里子
単行本(ソフトカバー): 135ページ
出版社: 河出書房新社
リチャードポイント:×

「チューダー朝の歴史」だからこそ、公平に「他のヘンリー七世首謀説」にも言及はあるかな、と期待したんだけど、チューダー史観そのまんまのリチャード三世像でしたわ。

教訓.期待は裏切られるためにある。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「イギリス 王妃たちの物語」
著者:石井美樹子
単行本: 307ページ
出版社: 朝日新聞社(1997/06)
リチャードポイント:×××××

はっ、×を5つもつけてしまった…。

本作307ページ中、アン・ネヴィルについて割かれたわずか5ページ及びその前章のエリザベス・ウッドヴィルの項目にリチャード三世についての言及があるのですが、ヘンリー7世御用達チューダー史観そのまんまというか、「参考文献はシェイクスピアの『リチャード三世』です(キリッ)」という勢いの内容です。

「グロスター公リチャードは(中略)ヘンリー六世や兄ジョージの殺害に手をくだすなどして、もっぱら汚れ役を買って出ていた。」
「(ヘンリー六世の)皇太子エドワードにとどめを刺したのは、エドワード四世の弟リチャードだったと言われている」
「王妃アンはリチャード三世に毒殺されたとの噂が流れた」

わたし、この方の「薔薇の王冠」も「エリザベス 華麗なる孤独」も「王妃エリアノール」も好きですよ。
好きだけど、一般向けとはいえ、歴史本でシェイクスピア準拠のリチャード三世はいただけんわー、ってことで、「イギリス 王妃たちの物語」を読んで以降は、目に付けば石井さんの著作をチェックしておりました。
先に挙げた「イギリス 王妃たちの物語」は1997年7月の刊行です。
その後の出版物を見てみれば…(いずれも出版年)


◆1997年10月「イギリス・ルネサンスの女たち-華麗なる女の時代」中央公論社

リチャードの王位簒奪と甥殺しを確定した事実として記述しておられます。
ところで、この書で言及されるエリザベス・ウッドヴィルとマーガレット・ボーフォートの結託のくだりを読むと、「逃げて-、息子たちを連れて、エリザベス・ウッドヴィル逃げてー、マーガレット・ボーフォートはあなたの息子たちは殺すつもりだよー」と、声をかけたくなる。

◆2007年8月発行の「図説 イギリスの王室」河出書房新社

モアのリチャード三世像について、「最近は(中略)は修正がくわえられているが」と断りつつも、「彼(リチャード三世)がイギリス史に落とした影は拭いされていない」との見解のもと、甥殺しと決めつけておられる様子です。

わたしがひっかかったと言うか、少々気分を害したのは、「リチャード三世は、ばら戦争のさなかで生まれ育った、だから、残忍で機を見るに敏に育った」とのくだり。
ええええーーーー?じゃあ、育ちが気性を決定するってことですか?

◆2011年11月15日発行の「イギリス王室一〇〇〇年史」新人物往来社

おおおおおおおおお、「何か変なものをお召し上がりになったのですか?」と問いただしたくなるくらい、改善されている!

おなざりにリチャード三世犯人説への疑義を書き添えているのではなく、ちゃんと、王位継承権を失った二人の王子を殺す動機はないこと、二人の王子の他、王位継承権を有する者は大勢いたこと、簒奪者ヘンリー7世にこそ動機があったことを述べておられます。

従来お持ちであった「リチャード三世は悪人」との見解の残滓もちらほらと垣間見え、あいかわらず「リチャード三世がばら戦争のさなかで生まれ育った」から「残忍な性質に育った」との理屈も持ち出してきておられますが、随分な変貌っぷりです。
やっぱり、何か変なものをお召し上がりになったのではないでしょうか?(違)

その他、森護さんの「英国王室史話」「英国王妃物語」「英国王の愛人たち」、他、「プランタジネット家の歴史」等も読みましたが、しんどくなってきたのでパス。

関連後エントリ:「リチャード・ポイント、リウィア・ポイント(その2)」

しかるにリウィアは初代皇帝アウグストゥスにふさわしい、偉大なる貴婦人であった。

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