2015年01月13日 (火) | Edit |


Part1  Antony in the East(41B.C. to 40B.C.)

今回は、リウィアとアントニウスの会食の様子とその帰路のクラウディウス・ネロとリウィア夫妻の様子を紹介します。

世界最高の実力者アントニウスに会える!と興奮していたリウィアですが、その喜ばしい出来事も、夫のネロさんに水を差され、中断しそうになりました。
ネロさんが、アントニウスは女を寝椅子に押し倒す恥知らずな手の早い奴だとほのめかしたからです。
「妻の椅子がないなら、わたしは失礼します」

もしアントニウスが、ネロの妻の小さな卵型の顔の魅力を好ましく思っていなければ、怒声とともに追い出されていたでしょう。
アントニウスは歯をむき出して笑うと、リウィアのために椅子を持ってこいと命じ、その椅子を、寝椅子に横たわる自分の前に置かせました。

この後、会食出席者(アントニウスと男三人とリウィア・ネロ夫妻らしい)の位置関係の説明とか、ネロさんが成行きに気分を害したり、それでもアントニウスが粗野な証拠が露わになったから結果オーライだと考え直したり、いろいろあるのですが、わかりにくいのでパス。

ここにきて、リウィアの外見の描写が始まります。

「頭にかぶっていたベールを外すと、リウィアが長い袖と高い襟足の淡黄褐色のドレスを身につけていることが明らかになったが、体つきの魅力や、非の打ちどころのない象牙色の肌は隠せるものではなかった。
夜のように黒く濃厚で、かすかに藍色の光沢を帯びた髪は、紐によって簡素に襟元でまとめられていた。
そして彼女の容貌のこの上ない美しさ!
小さく瑞々しい紅い唇、ピンクの頬、小さい鷲鼻、全てが完璧に構成されていた。」

「そして彼女の容貌のこの上ない美しさ!」
原文は、“And her face is exquisite!”
「この上ない美しさ」としましたが、exquisiteには、「申し分ない、上品な、洗練された、気品のある」との意味もあるので、「美」とともに、「気品」も含めた賞賛でしょう。
後々、リウィアと出会ったオクタウィアヌスも、彼女の挙措を指して「exquisite」と表現しています。

そして、リウィアの眼の色がわかりかねてアントニウスが苛立ったまさにその時、リウィアが椅子の位置を動かしたので、細い光が彼女の目の色をさらしました。

「これは驚いた!(Oh! Amazing!)
濃い青い瞳に、髪の毛のように細い、淡黄褐色の、不思議な一筋の線が刻まれている。」

リウィアの瞳については、オクタウィアヌスも同様に、「Amazing!」と言ってます。
「瞳の中に色の異なる一筋の縦じま」って、猫の目か?化け猫?猫娘?妖怪系の目ですか。

案の定、アントニウスも「こんな眼は今まで見たこともない、そして―不気味だ」と思います。
しかし、アントニウスは決意します。
リウィア・ドルシラ、俺はお前をいただく!そして、俺に惚れさせてみせる、と。

無理!絶対に。

盛大に突っ込んだ所で、続いて、「リウィアはアントニウスをどう見たか」に参ります。

検索避けのため、見苦しいけれど、この先伏字があります。

さて、「リウィア・ドルシラ、俺はお前をいただく!そして、俺に惚れさせてみせる」と、決意したアントニウスですが、早くも次の行で、“But it wasn’t possible.”と書かれちゃってます。
日本語に直すと、「全く見込がなかった」、「そんなことはあり得なかった」というニュアンスでしょうか(笑)?

リウィアは羞むこともなく、アントニウスとの会話に気さくに控えめに答えていました。求められれば、簡潔に自分の意見も述べています。
けれど、彼女から意欲的に会話を盛り上げようとはしていません。
アントニウスがもう少し敏感な男であれば、リウィアの顔に時々よぎる、会話への嫌悪の表れに気づいたでしょうが、幸か不幸か、アントニウスは察しのいい男ではありませんでした。

リウィアは冷静にアントニウスを値ぶみしています。

「アントニウスは、取り返しのつかない失敗を犯した妻を殴った。けれど、ネロのそれとは違う。冷たく、計算しつくされたものだ。
アントニウスはフルウィアへの仕打ちを恐ろしい怒りでやってのけた。そうして、怒りが静まった後も、自分のしたことを後悔していない。彼女がしでかした罪は、許されないことだからだ。
ほとんどの男はアントニウスを好きになり、彼に魅了される。そして、ほとんどの女は彼を欲する。」

リウィアは、セクストゥス・ポンペイウスの膝元、シキリア島にいた僅かな日々の間に、身分の低い女たちに曝されたため、愛について、男について、性愛について多くのことを知りました。

「より容易に絶頂に導いてくれるので、女は大きな性×を持つ男性を好むようだ。(リウィアはその答えを出していなかった。尋ねて笑われるのが怖かったからだ)」

リウィアさん、違うから!間違った知識は貴女の為にならないから!!

前述の、「身分の低い女たち」は、原文では”low women”です。
リウィアの得た知識の元は、娼婦たちか、あるいは、下層兵士の奥さんとか情婦で、露骨な会話を聞かされたのか?誰だ、リウィアにこんなヘンな知識を吹き込んだのは。
もしかして、HBOドラマ「ROME」のアティアが、息子の嫁の為に、次元を超えて出張ってきてたのか(笑)?
「ROME」のアティアは、第6話にて、セルウリィアとの仲直りの為、巨×奴隷を贈り物にしていました。嫌がらせではく、喜んでもらえるはずと真心から。

それはさておき、女には巨×が望ましいかどうかは判然としないリウィアでしたが、アントニウスが無限の生殖力がある「装備」で名高いことを知っていました(「装備」はお察し下さい)。

そうであったとしても、リウィアは今、アントニウスに、何ら好ましい所も、賞賛すべき点も見出せませんでした。殊にも、アントニウスがリウィアから反応を引き出そうと四苦八苦している事を理解した後では。
アントニウスを拒絶した事はリウィアに大きな満足を与え、女が権力を手に入れるにはどうすればいいか、その手がかりを教えてくれました。

えーーーっと。
最初はなんで下ネタを持ち出してくるんだと戸惑いましたが、ここで、アントニウスの性的魅力に価値を見出さないリウィアは、後に出てくるオクタウィアとの対比かもしれません。

後々、アントニウスと結婚したオクタウィアは、最初の夜ですっかりアントニウスの虜となります。
故人となった前夫マルケルスより素晴らしいと満ち足りています。翌朝、ベッドから離れるのを惜しんでいたら、アントニウスがもう一度と誘ってくれて、これまた感激しっぱなし。

閑話休題。

アントニウスの邸宅を辞去した帰り道、リウィアとクラ・ネロさんとの会話を紹介します。

「おまえは、あの偉大な男をどう思う?」
帰り道、夫に聞かれてリウィアは目をパチクリさせました。夫は、誰のことであれ、何のことであれ、彼女の考えを問うことはなかったからです。
リウィアは答えます。
「出自は高く、品性は低い。野卑で粗野な男です」
「まったくだ」
夫の声音には喜びがこもっていました。
結婚して以来初めての親密な関わりに勇気を得て、リウィアは思い切って夫に政治的な問いかけをしました。
「あなた、なぜマルクス・アントニウスのような野卑で粗野な男につき従いますの?
どうしてカエサル・オクタウィアヌスになさらないのです?彼の人となりには、粗野な所も、野卑な所もありませんわ」
振り返った夫の顔には、苛立ちよりも驚きがありました。
「生れはその両者より重要だ。アントニウスの方がより高貴な生まれだ。
ローマは選ばれた貴族のものだ。貴族だけが、高い地位を有し、属州を支配し、戦争を指揮することができる」
「けれど、オクタウィアヌスはカエサルの甥です。カエサルの生まれは、申し分のないものではありませんか?」
「ああ、カエサルは全てを持っていた。生まれ、優れた才気、美しさ。
威厳ある貴族の中でも、最も尊厳(august)な人物だった。
彼に流れる平民の血でさえも、母はアウレリア氏、祖母はマルキア氏、曽祖母はポップリア氏と、高貴なものだ。
オクタウィアヌスなぞ、騙りにすぎん!」

この後も、クラ・ネロさんのオクタウィアヌスこきおろしが続きます。
「ユリウス氏の血など、ほんの僅かで、後は残りかすみたいなもんだ。
ウェリトラエのオクタウィウス氏?誰だそれは?
オクタウィアヌスの曽祖父の一人は綱作りの職人で、別の一人はパン屋だ。祖父は両替屋。
卑しい、卑しいよ。
彼の父親が再婚で、カエサルの姪を娶ったのは幸運だったな。
もっとも、彼女は汚れ(けがれ)ているがな。
金に困っていた頃、ユリウス氏の人間は、娘たちを結納金と引き換えに売っていたんだ。
姪の父親にあたる男も、まったく無名であったが金持ちで、そうして、カエサルの姉妹を金で買ったのさ。」

あんたは、×××××か?とつっこみたくなるほど、オクタウィアヌスに対する悪意と敵意が奔流のようにほとばしっております。
(×××××は某大御所女流作家。彼女の著作「小説クレオパトラ」で描かれたオクタウィアヌスは、数あるクレオパトラものなかでも、陰険さ、卑小さ、狡猾さにおいて群を抜いてます。)

それにもめげず、リウィアははっきりと自分の意見を述べます。
「甥ならば、ユリウス氏の血を四分の一汲んでいるのではありませんか?」
「姪の息子にすぎん!八分の一だ。残りはお粗末なもんだ。
リウィア、言っておくがな。わたしは金輪際、オクタウィアヌスのような男と組むことはない!」

夫の断固たる宣言に、リウィアは沈黙を守りますが、心の中では激しく反発しました。
それが、貴族がオクタウィアヌスを憎悪する理由か。
高貴な血の一人として、わたしもまた、彼を忌避するべきなのだろう。
けれど、わたしは彼に興味をそそられる。
彼は高みに昇っているではないか。
わたしは彼を崇拝する。彼を理解できるから。
おそらくローマは新しい貴族を作らなければならないのだ。偉大なるカエサルも遺言をしたためた時、その事を承知していたのだ。

Part1でのリウィアの出番はここで終わりです。
この後は、アントニウスと母ユリアの再会、ユリアを保護してアテネに連れてきたリボ(スクリボニアの兄)とアントニウスの会話でPart1は終わります。

垣間見たことすらないというのに、すでにオクタウィアヌスに好意を抱いているリウィアでした(笑)。

しかるにリウィアは初代皇帝アウグストゥスにふさわしい、偉大なる貴婦人であった。

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コメント
この記事へのコメント
いやー面白いです!
毎回、楽しく読んでおります。
それにしても、リウィア様の若い頃をこうやって体験できるのは、本当にうれしいことです。さすが現代のイタリアでも、女性を我が物にするのが宿命と言わんばかりの代名詞になっているアントニウス。その名に恥じぬ行動ですね。

大きな性×を持つ男性を好むと信じられていたのは、ひょっとしたら豊穣の神として崇められていたプリアポスの影響があるかもしれませんね。この頃から、大きいことがより容易に絶頂に導いてくれると思い込んでたとしら、とんでもない神様だったかもしれませんが、まぁ、それくらい男性は生まれた時から、数の多さや大きさに拘る男性社会に身を投じているところがあるかもしれません(苦笑)

そんな中、アントニウスに見事なびなかったリウィア様はやっぱり聡明ですね。ちなみに、一つ気になったのですが、この作品では、アントニウスと政略結婚したオクタウィアヌスの姉オクタウィア様のことを、リウィア様はどのように見ていたのでしょうか?


2015/01/20(Tue) 14:03 | URL  | Josh #r13xZNus[ 編集]
Re: いやー面白いです!
>Joshさま

> それにしても、リウィア様の若い頃をこうやって体験できるのは、本当にうれしいことです。さすが現代のイタリアでも、女性を我が物にするのが宿命と言わんばかりの代名詞になっているアントニウス。その名に恥じぬ行動ですね。

こんばんは。小説(フィクション)だけれど、わたしも生き生きしたリウィアが堪能できてうれしいです。
現代イタリアでもなかなかの代名詞になっておりますな、アントニウス(笑)。
クレオパトラものを描いたとある作家さんは、「元祖イタリアの種馬」と二つ名を進呈されておりました。

> 大きな性×を持つ男性を好むと信じられていたのは、ひょっとしたら豊穣の神として崇められていたプリアポスの影響があるかもしれませんね。

プリアモスは豊穣も兼ねているのか、でかいですね(笑)。
芝崎みゆきさんの「古代ギリシア がんちく図鑑」では、古代のギリシアでは小さくて形がいいのが尊ばれていたと述べられていて、こちらはさすがギリシア、「美」を尊ぶのかと。

> そんな中、アントニウスに見事なびなかったリウィア様はやっぱり聡明ですね。ちなみに、一つ気になったのですが、この作品では、アントニウスと政略結婚したオクタウィアヌスの姉オクタウィア様のことを、リウィア様はどのように見ていたのでしょうか?

ええと、英語の本なので、理解がすみずみにまで及んでなくて、リウィア→オクタウィアお姉さまへの見解を把握していないのです。
逆のオクタウィアお姉さま→リウィアへの見解は読めたのですが。
後々レビューしますが、簡単に語ると、女らしい、子どもを愛し、夫に尽くし愛される幸せを満喫するオクタウィアお姉さまには、夫に協力して政治活動に邁進するリウィアが理解できず、「冷たい魚のよう」と見ています。

2015/01/20(Tue) 20:51 | URL  | サラ #ndrEhoxc[ 編集]
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秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
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