2015年01月30日 (金) | Edit |
このエントリの公開は少しためらいました。
ただでさえ、電車内でもエロ広告が氾濫するほか、女性を性的消費することに罪悪感の少ない社会なのに、それを助長することわざを題材にすることに躊躇したからです。
死語となって、ひっそり忘れ去られていけばいいことわざであると思うので。

なのに、公開することにしたのは、躊躇を払拭する使命感にかられたから、ではなく、ただの自己顕示欲です。
ブログなんて、多かれ少なかれ自己顕示欲の発露だし、自分では気に入ってるエントリなので公開します。

さて、「二十(はたち)後家は立つが、三十(さんじゅう)後家は立たぬ」とのことわざがありまして。
意味は・・・。

二十そこそこで夫に先立たれた女は性愛の旨みを充分に知っていないので、その後男と深い関わりなしで通せる。結果的に独り身で通せ、亡夫に操を立てられる。
しかし、三十で後家になったら、性愛の旨みを充分に味わっているので、情を交わしたい想いを止められない。結果的に、新たに男を求めてしまい、亡夫に操を立てられない。


こんな感じです。

言っときますが、性愛への渇望は個人差が大きいです。
また、仮に、「情を交わしたい想いを止められない」女がいたとしても、周囲が勝手に「やってもいい女」とレッテル貼りすることも、一方的に性行為を求めることも許されません。
彼女には「自分が望まない性行為を拒否する権利」があります。


話題を戻しまして、わたしが「二十後家、三十後家」の言い回しを知ったのは、たしか高木彬光さんの短編ミステリだったと記憶していますが、タイトルも詳細な内容も忘れたので、省略しまして、とある作家さんのエッセイから「二十歳後家、三十後家」を。

1963年、自宅にて、作家さんが母親とテレビを見ていたら、暗殺されたケネディの墓前に、永遠の火を点火する妻ジャクリーン夫人の姿が映りました。
「永遠の火」が夫妻の「永遠の愛」に重なり、作家さんがその感動を口にすると、御母堂からは、
「『二十後家は立つが、三十後家は立たぬ』と言うてね。どうしたって再婚せずにはいられなくなるよ」
と、返ってきたとか。
作家さんはいやらしいと腹を立てたものの、5年後、ジャクリーヌ夫人再婚の報に、母の言い分の正しさに脱帽せずにはいられなかった、とのこと(※)。

(※)「二十後家、三十後家」の例として出しましたが、ジャクリーン夫人の場合、性的渇望じゃなくて、子どもたちを含めた身の安全保障の為では?

そして、ン年後、再々度「二十後家、三十後家」を目にしました。
まさか、まさかの書籍の中で。

「私の孤閨に同情して下さい。夫を与えて下さい。私にはそれにふさわしい若さがまだあります。貞淑な女には結婚より外に慰めがありません。市民の中にはゲルマニクスの妻と遺子を受け取る資格のある人物がいる筈です。」
(タキトゥス「年代記」4巻-53)



「二十後家、三十後家」の言葉は出てきませんが、意味するところはまさにそれ。
(大アグリッピナの立場であれば、子沢山であっても、「生活費の為の結婚」は不要でしょう。)

大アグリッピナは19歳以前にゲルマニクスと結婚し、約14年の結婚生活の間に少なくとも6人の子どもを産み、33歳で寡婦となりました。
先に引用した懇願は、おそらくAD26年頃、すなわち、大アグリッピナ40歳頃の出来事です。

ここでわたしはもう一人の「三十後家」を思わずにいられません。
大アグリッピナの姑にあたる、小アントニアです。

小アントニアは、18歳頃にドルススと結婚し、9年間の結婚生活の間に3人以上の子を産み、27歳で寡婦となりました。

ともに、勇猛果敢で外向的で明朗快活で民衆に人気のある夫を持ち、約10年の結婚生活を送り、数人の子宝に恵まれ、30前後で寡婦となった人生は似通っているのに、大アグリッピナは再婚を欲し、小アントニアは亡き夫への操を守って、一説によれば「アウグストゥスからの再婚の圧力もはねのけて」生き抜きました。

何ゆえ、亡夫への想いだけが対照的になったのでしょう。

ものすごく散文的に答えると、「個人差です」だと思うけど、それだとエントリが盛り上がらないので、見方を変えて述べます。

先ほど、二人の人生を大雑把にくくって強引に「似通ってる」と言いましたが、結婚年数は異なっています。
大アグリッピナは14年間。
小アントニアは9年間。

もしかすると、大アグリッピナの心と身体に残る、夫と愛し愛された記憶、小アントニアよりも5年分長いそれがあればこそ、もう一度、「夫と愛し愛される充足」への渇望となったのかもしれない、と思うのです。

しかるにリウィアは初代皇帝アウグストゥスにふさわしい、偉大なる貴婦人であった。

ちなみに三人目の「三十後家」ユリアについては見解がまとまらないので省略。
(ユリアは、ティベリウスのロードス隠退によって、32歳で事実上後家になっております。)

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