2015年02月25日 (水) | Edit |
浅見光彦シリーズ(内田康夫著)、十津川警部シリーズ(西村京太郎著)を、まんが版で大量に読む機会を得ました。
せっかくなので、少しばかりですが感想を。

(注意)
(1) 原作は読んでません。全てまんが版で読んだ感想です。
(2) ミステリなので、ネタばれに触れると判断した場合は反転仕様にしています。
(3) 十津川警部シリーズ名を出しましたが、本エントリでは「母の国から来た殺人者」の感想だけです。


感想の前に、浅見光彦シリーズ原作の思い出を。
思い出と言いましても、昔々、1冊読んだきりで、題名もあらすじもゲストキャラも全てきれいさっぱり忘れてます。ただひとつ覚えてるくだりがありまして、その件です。

一文でまとめれば、「永遠の33歳、浅見光彦、脱童貞の一夜を回想する」
細部は覚えてないのですが、浅見光彦が若かりし頃、浮いた噂のない彼を案じた友人たちが、酒に酔わせた光彦に女をあてがって一夜を過ごさせたというものです。
光彦本人は何があったか、そもそも、性行為があったのか、なかったのかも判然としない状況だったのですが、とりあえず、女と一夜を過ごしたことで、「童貞の汚名を免れ」(←たしかこういう一文だったような?)たとのこと。
そんな一夜を回想して、「わが童貞に乾杯!」と独り言ちる光彦でした。

(この成り行き、男女逆なら「性犯罪」なんですけどね。ほんと、「性規範」て、とことん男女で非対称になってるなあ・・・。)

結局のところ、脱童貞できたか、できなかったのかどっちだ。

独身で性愛の気配がない名探偵は、シャーロック・ホームズを筆頭に、金田一耕介、他に、えーと、えーと、神津恭介、他にもいるかと思いますが知識がないものでごめん。
(ちなみに、明智小五郎の名を出そうとして、念の為ぐぐったら、文代さんという配偶者がいたよ。昔読んだはずなのに覚えてなかった・・・)

この三人の貞操および性生活については、それぞれの作者さんから、この種の「言い訳」とも「アリバイ」ともつかない一文はなかったと思います。
(ホームスは全編読んだので断言してもいいけど、金田一耕介と神津恭介は読んでないのもあるので保留。)

なんで浅見光彦については、「脱童貞の一夜」が必要だったんでしょう。

読者からの質問が多かったんでしょうか?
「光彦は毎回もってもてですが、童貞なんですか?33歳で童貞なんて気持ち悪いと思います。でも、光彦さんが既に女を知ってるなんてそれはそれで嫌かも。でも、まだ女を知らないなんてこれもいやーーーー!」

で、多数の読者の多様な願望に応じた結果が、完遂したか否かの断定を避けた「浅見光彦、脱童貞の一夜」なのかなと思ったり。

「娼婦を買って脱童貞」設定にしちゃったI田R代子さんよりは、読者それぞれが好ましい方を選べるようにして下さった内田康夫さん方式の方がお上手な落としどころですが、そもそも必要ですかね?「脱童貞の一夜」って。

回想から推し量ると、仮に性行為があったとしても、光彦にとってはその一晩きりみたいです。一晩きりの性経験でも、「童貞」であるよりはマシってことですか?

(しかも、光彦が被害者とも言える性犯罪もどきの経験なのに。
女から男に為された性行為の強要は、「性加害」として認識されにくい現実は、よーく理解しておりますが。)

こんな「言い訳」ともつかぬ回想が挿入された根底には、やっぱり、「33歳にもなる男が童貞だなんてありえない、みっともない」との意識(作者さん側にも、読者側にも)があったんですかねえ・・・?

関連エントリ:
【アンドレが童貞でないことを受け入れる女性読者の心理について】


もし、この回想収録作品をご存知の方がいらっしゃったら、教えていただければ嬉しいです。
あげつらう為でなく、「男女の性規範の非対称」の一例として再確認したいので。
人に頼る前に、「浅見光彦 童貞」でぐぐったのですが、とあるブログが作品名なしで話題にされていたのみでした。

では、まんが版からいくつか感想を。
作品名の前に作画者さん名を記載しています。
ついでに光彦の髪色処理も記載。

◆辛口感想は先に述べておきましょう。

(1) お手伝いの須美さんていやな人です、と、わたしは感じました。あんだけ出番は少なかったのに。光彦の仕事に支障がでる妨害はしていないみたいだけど、光彦に関わる女性相手だと敵愾心を抱くって、お手伝いの立場を逸脱してます。

仕事はちゃんとしてるみたいですが、どうも立場を弁えない人だなあと不快感を抱きました。

(2) 「先の副将軍、水戸光圀公なるぞ!」は楽しめるのに、「刑事局長、浅見陽一郎のご令弟であーる」はいやな感じでした。
ここは本シリーズの売りなんでしょうが、わたしには合わなかった。

水戸光圀は「本人」が「副将軍」だったからよろしいでしょうけれど、光彦の場合は、「兄」が「刑事局長」であって、本人が権力を有してるわけじゃないですから。光彦はその事を弁えているみたいだけど、「身分」を知った以上は、ヘコヘコしなければならない警察関係者が気の毒で、気の毒で。
刑事局長本人に頭を下げるならまだしも、なんで弟に頭を下げなあかんのかと、頭を下げられている光彦本人にいやな感じを持ちました。光彦にいばろうという気持ちはなくても。

◆中西ゆか「崇徳伝説殺人事件」(ベタなし)
愚か者め!浅見光彦、おまえの愚かさは万死に値する!!
大河ドラマ「平清盛」にて、井浦新さんが熱演なさった崇徳天皇の伝説にまつわる作品とのことで期待したのですが、浅見光彦の無能っぷりで台無しです。
失礼ながら本作は失敗作では?
【反転開始】
老人ホーム内での殺人の隠匿を承知できない職員(准看護師)小沢慈美は、告発すべく、フリーライター新坂達之に証拠写真(死体)を渡すことにした。

この証拠写真を新坂と人違いされた浅見光彦が受け取ってしまうのです。
小沢が「あれは殺人事件です」「これが証拠です」と口にしながら渡したのだから、ただならぬ案件だと察しはつくでしょうに、人違いされたまま、気圧されるままに証拠のフィルムを受け取ってしまいます。
とはいえ、ここの失敗はまだマシです。次に述べる致命的な失敗に比べたら。

新坂達之が殺された事を知った光彦は、よりにもよって、警察連れで、現像した証拠写真(死体)を持って、該当の老人ホームに、直に、問い合わせに行ったのです。

アホや、光彦はアホや。
証拠写真持っていったら、施設の人間には「内部に裏切り者がいる!」と即わかってまうやん。
なんで、気付かれんように探るいうことをせんかったんか。
バカや、光彦はバカや。
こんだけ致命的なミスを犯しといて、全然気づいてないバカや。
光彦の愚かな行動のせいで、告発者の小沢さんは殺されました。

作品として他に美点があろうが、光彦のこのアホっぷりひとつで本作は失敗作です。

【反転終了】

◆沢音千尋「若狭殺人事件」(ベタなし)
被害者の一人、サラリーマン細野久男さんと、奥さんの関わりが良い雰囲気で好きです。
より厳密に言えば、生前「夫婦としては空気のような関係になっていた」夫であったけれど、彼の死後、亡き夫との関わりをより深めていく様子が好きです。
浅井光彦のおせっかい、もとい、事件解決への活動も、結果的にそれを促している点も好ましいです。
【反転開始】
長淵静四郎が浅見光彦の自殺の勧めに応じたのって、「殺人」が明るみに出るのを怖れた為ではないですか?「強姦」だけだったら、しらばっくれて生き延びるつもりだったように見えて、もやもやする。
犯罪(「強姦」)の性質上、いまさら被害者に頭を下げにいったってどうにもならないけれど、こんな奴が爺になるまでぬくぬくと生きていたってことに腹が立つ。
創作としては綺麗な終わり方であったけれど、強姦野郎が自殺できれいに死んだって納得できない。強姦で裁くことは出来ないのだから(時効済み)、殺人事件の加害者として世間から糾弾されて欲しかった。

【反転終了】

◆千村青「「紅藍の女」殺人事件」(ベタなし)
「被害者」が気の毒で。これはひどい。ひどい。ひどい。ひどい。ひどい。
【反転開始】
このシリーズ、善人が殺されるってことがしばしばあるんですが、黒崎賀久男さんの痛ましさは抜きんでてる。
資産家のクズどもの偽証のせいで、濡れ衣をきせられ、獄中に35年。出獄して、昔の恨みに区切りをつけて静かに暮らそうとしたのに、冤罪をネタに悪事を企む二人に殺される。しかも遺体は相模湾に沈められ見つからず。お墓にも入れないんですか。
なに?この人の人生っていったいなんだったの?なんの為に生まれてきたの?
殺害犯人よりも、黒崎の人生を狂わせた偽証者に腹が立つ。

主な偽証者三人。二番目のかっこ内は偽証の動機。×付は殺された人。
(1) 三郷伴太郎(ヒロイン父)(真犯人である友人を守る為及び、使用人の分際で黒崎が輝子お嬢様に恋心を抱いていることを不快に思ってた。)
(2) ×甲戸天洞(ヒロイン友人の父)(真犯人である事を隠匿する為)
(3) ×泉野梅子(ヒロイン叔母)(兄である三郷伴太郎の依頼及び、輝子に恋している黒崎への嫉妬)
犯人二人の殺害計画の中に入ってなくてよかったね~、三郷伴太郎(嫌味)。
三郷伴太郎が最後まで無傷なことに腹が立つ。
妻の輝子さんは、かつて想いを寄せてくれた黒崎の死後再審を訴えたそうですが、「離婚した」との記述はありません。
そこまでするなら、夫を捨てろよ。離婚しろよ。
三郷伴太郎が生きてることに腹が立つ。

【反転終了】

◆稜敦美「十三の冥府」(ベタなし)
推理とは全然関係ないとこなんですが、夫の留守に初めて訪ねて来た男(浅見光彦)を家に上げるものなんでしょうか?フリーのルポライターの肩書なんて、家に上げるほど信用はないと思う。
でも山下氏の奥さんはそうしてるんですよ。
しかも夜遅い21時までも。浅見光彦は図書館の閉館時間の後に山下さんちに戻ったから、大体18時以降に再訪問していますね。
こんな遅い時間、よっぽど親密な関係でないと、夫が留守しているのに、男の人に上がって待っててくれなんて言えない、と、わたしは思うのですが。
それとも、昔の田舎は鍵をかけなかったと同様、「十三の冥府」界の黒石温泉郷落合は、夫の留守に初見の男を家に上げるくらい、他人を信用する気風なんですか???

東北のとある歴史書と言われる「都賀留三郡誌」を題材にしておられます。
【反転開始】
「都賀留三郡誌」はフィクションですが、元ネタは「東日流外三郡誌」になります。
と言う事は、「都賀留三郡誌」の発見者兼所有者、秦宮司は、「都賀留三郡誌」の発見者W氏にあたる、とは思いませんが、そう解されてしまいかねない立場の人物を徹底的に悪人に描いてますなあ。
W氏本人はお亡くなりですが、関係者がいらっしゃるでしょうに、ここまで書けるものなんやなあと。

失礼ながら、犯人の1人である睦子のアリバイ・トリック(「血縁はないけれどソックリさんに身代わりを頼む」)がご都合主義すぎて呆れたのですが、もし、「生き別れの双子」とか「生き別れの親戚」だったら、納得したかもしれません。
後者もご都合主義であることは同じなので、だったら「血縁のないソックリさん」も受けいれなければならない・・・のか?

【反転終了】

◆鳥羽笙子「ユタが愛した探偵」(トーン髪)
トーン髪光彦、トーン髪光彦!
漫画制作では、ベタとトーンは面倒くさいって読んだことがあって、そうだろうなと思えるので、トーン髪を採用なさった作画者さんの意欲に感心します。
主役だから出ずっぱりキャラでもありますのに。
少女まんがで育ったので、この方の絵、好きです。

◆中邑冴「秋田殺人事件」(ベタなし)
副知事に抜擢された女性がかっこよくて素敵でした。経歴から推測して、アラフォーである年齢の高さも良し(笑)。秋田杉美林センターの欠陥住宅問題に関わる県庁の闇を炙りだした後、「責任をとって副知事を辞任します!」との潔さも好き。
本作ヒロイン(若い方)も、別に意味で潔い娘さんでした。

作画の中邑冴さんは、「耳なし芳一からの手紙」も担当しておられます。
やさしい、穏やかな印象の絵をお描きです。好ましいです。

◆黒川晋「鞆の浦殺人事件」(ベタなし)
◆千村青「鬼首殺人事件」(ベタなし)

どちらも被害者がいい人だった。悲しい・・・。

◆宗美智子「追分殺人事件」
信濃のコロンボ・ジリーズです。浅見光彦シリーズに非ず。
なんだかわからないけれど好きな作品です。

宗美智子さんの絵も好きです。
少女まんが風の美しさと、青年誌風のしっかり骨太な線の印象が実にいい。
【反転開始】
なんだかわからないけれど好きな作品です。
で、好きの源は、被害者である二人プラスワン。

桑江仲男(元夕張炭鉱夫)
安岡耕三(元夕張炭鉱夫)
秋山徳二(元夕張炭鉱夫)(この人は被害者でなはなく、桑江氏の友人)

言っとくけど、美形キャラじゃないよ。それに勝ち組でもないよ。

ネタばれすると、追分節の同好会夕張支部があったが、炭鉱閉鎖とともに鉱夫でもあったメンバーは夕張を離れざるを得なくなり、支部は解散となった。
その夕張支部のメンバーの一部が、麻薬の密売をはじめ、先に加入していた安岡耕三が、仕事を探していた桑江仲男に詳細を伏せて誘った。
桑江仲男は喜んで赴いたけれど、安岡耕三とは落ち合えず、直接組織の人間から説明され、仕事の実態を知って拒絶、秘密が漏れることを怖れた組織に毒殺される。
そして、桑江仲男が殺されたと知り、逆上した安岡耕三も殺される。

あらすじを書いたのは、好きポイントの説明の為。

桑江さんが、安岡さんから誘われて、麻薬密売とは夢にも思わず「いい仕事が見つかった」「追分節をやっていてよかった」と語っている場面が好き。

安岡さんは麻薬密売に携わっていた悪人ではあるのですが、桑江さんが殺されたことに逆上したとこと、桑江さんとの再会時に、追分コンクールの記事が掲載された雑誌を見せようと持参していたとこが好き。

秋山徳二さんは、桑江さんの遺体写真を見ても動じない様子を訝しんだ刑事たちに、「『死体』は見慣れてますから」「炭鉱が仲間がずいぶん死にましたので・・・」と悲しみをはにかむ様に口にした表情が好き。続けて、炭鉱時代の苦労を淡々と述べているとこも好き。

作画の宗美智子さんて、年配者のキャラデザも達者でいらっしゃる。
この三人だけでなく、キャラ絵が良かったです。

【反転終了】

◆西村京太郎原作、苑場凌作画「母の国から来た殺人者」
これは、浅見光彦シリーズでもなければ、内田康夫さんの作品でもないけれど、公開する機会が他になさそうなので。
以下、犯人ばれ、動機ばれ有り。
【反転開始】
ネタばれしますと、母を殺された娘が、加害者たちに復讐(殺害)していく話。
加害者のうち民間人は比較的容易に殺せたけれど、大臣の要職にある人間は警備が固くて殺せない。だから、大臣が移動中の新幹線に爆弾をしかけ、助命を条件に、車内放送で自分の罪を告白しろと要求しました。

最初は告白を拒んでいた大臣も、背に腹は代えられず、車内放送で罪を自白します。さすが大臣職、演説はお手ものものというか、当初は見苦しく、警察が犯人逮捕できなかったせいだと責任転嫁した人間と同一とは思えないほど、上手に告白していました。
結びが「貴女の大切なお母さまと殺してしまい、すみませんでした」
さすが、大臣、演説の締めを印象的にする術を心得ている。

告白を聞きとどけた娘は、崖から身を投げて母の元へと旅立ちます。
わかり易く言えば、自殺しました。

物語としてはきれいな幕引きなんでしょうけれど、リアル政治家の厚顔無恥っぷり、健忘症っぷり、卑怯っぷりを見るに、大臣が逮捕され裁判で判決が下るまで生きて完全な失脚を見届けるべきだったと思います。

死人に口なしで、ばっくれるんじゃないでしょうかねえ?
「脅迫された状況での告白であり、真実ではない」
「乗り合わせた客の命を助ける為に、嘘の告白をした。」

さらに怖ろしいのは、こんな言い訳でも、あるいは他に証拠がそろっていても、地元有権者は支持を続けるかもしれないってことです。

娘さん、貴女は生きるべきだった。
貴女が生きていることが、大臣への有形無形のプレッシャーになったのに・・・。

【反転終了】

しかるにリウィアは初代皇帝アウグストゥスにふさわしい、偉大なる貴婦人であった。

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