2015年06月08日 (月) | Edit |


「年下王子の恋の策略」
作者:chi-co(ちーこ)
イラスト:五十鈴


複雑な生い立ちのセルマは、年老いた貴族との政略結婚を若くして受け入れ、男女の行為を知らぬまま過ごしてきた。
その夫も亡くなり、王妃の勧めで王宮の侍女として働いていたところ、第一王子のライナスが熱烈に迫ってきて……。
抗いきれずに一夜を過ごし、弟のように思っていた彼を一人の男性として意識し始めてしまう。
けれど、一度結婚した身では王子の相手にふさわしくない。
離れなければと逃げるセルマだが、ライナスは執拗に追いかけてきて――?
(「内容紹介」より引用)



わたしが紹介すると

「ヒーローは、ヴァージンのヒロインにチ×コを突っ込んだにも関わらず、我こそ、この女の征服者と思い上がることなく、チ×コを突っ込まなかったヒロイン前夫への敗北感に囚われ、ヒロインの愛を求めてあがくお話」

「ヒーローによるチ×コ挿入無敵」を否定するなんて、乙女系では異色では(わたしの感想です)。

◆世間の縛りを反映して、「年上ヒーロー&年下ヒロイン」の組み合わせがデフォルトのこのジャンルで、珍しい「年上ヒロイン&年下ヒーロー」ものとのことで、読みました。

が、たったの2歳差。
わたしの感覚では同い年みたいなもの。随分ケチ臭い差だなあと。
「野菊の墓」の時代じゃあるまいし、この程度の差で、大々的に「年下王子」とタイトルに掲げるとは図々しい(笑)。

「いつもポケットにショパン」は、80年代初頭に描かれたものだが、当時の恋愛環境がよくわかる記述がある。きしんちゃんがマリアさんという女と一緒にいるところを麻子が見て、悶々と焼き餅を焼くのだが、マリアが1学年年上だということを聞いて安堵するのだ。昔、いかに「年上の女と年下の男のカップル」があり得なかったのかがよくわかる。
今では、中学3年男子と高校1年女子がおつきあいする時代らしいので、昔の、人生がパターン化されていた時代というのは、余計な心配が少なくていいな。
(和久井香菜子【少女漫画に学ぶ[ヲトメ心とレンアイ学]】内「『いつもポケットにショパン』編~その2」より引用)
(冒頭のみ、わかり易くする為に手直しして、作品名を明記しました。)
(赤文字強調はわたしによります。)



ほら、和久井香菜子さんだって指摘していらっしゃる。
1980年代、すなわち昭和の時代なら「年上の女と年下の男のカップル」があり得なかったでしょうが、今は平成です。とっくの昔に去っている。

関連エントリ:【「年上ヒロインもの」チェック・ポイント】

作中世界は「野菊の墓」と同じく、「女が年上なんてとんでもない!」との風潮なのかと思いますが、一方で本レーベルは現代読者対象の作品でもあります。そして、大河ドラマや本格歴史小説とちがって、現代の価値感を汲むことが求められている、と、思います。
現代読者対象の作品で、2歳程度の差をうじうじ悩ませても、失笑ものだと思うんだけどなあ。
いやまあ、主語を大きくするのは卑怯なので、言い直します。
今どき、2歳程度の差でうじうじ悩む年上ヒロインなんざ、わたしゃ見たくもねーよ。

とまあ、土台の年齢差設定からして残念であり、加えて、ヒロインも残念なキャラでした。始終ウジウジ悩んで、自己卑下に囚われていて優柔不断。
ただし、ヒーローズは良かったです。本作はヒーローズの魅力につきます。

今「ヒーローズ」と複数形で述べましたが、複数プレイものではありません。
ヒーローである年下王子ライナスと、ヒロイン前夫のフレイン、この二人が非常に好感の持てる男性でした。

言っちゃなんですが、控えめに表現して、奇人か変人か悪人しかいないソーニャ文庫ヒーローのなかで、場違いなほど、誠実で善良で、それゆえにカッコイイ二人でした。

◆ヒーローズについて語る前に、全体の感想を。

うーんんんんん、一読して思ったのが、ソーニャ文庫(コンセプトは「歪んだ愛は美しい」「執着愛」)としてどうよ?と。

事前に試し読みにも目を通していたので、肉体関係こそなけれど、前夫がセルマを優しい愛情で包み込んでくれた善良な人物であることを知りました。
なので、あらすじとも突きあわせて、ヒーローである年下王子ライナスは、愛する人妻セルマを我が物とする為に、善良な前夫を死に至らしめたとの裏があるのだろうと予想しました。

だって、ソーニャ文庫ですもの。
(表紙絵からして、ライナスが前夫に一服盛ってそうな、ダークな雰囲気ですし(笑))

しかしながら、そんなことはなかったぜ!

作者さんはライナスを「腹の中はどす黒い」と評されてらっしゃいましたが、わたしから見れば、ものすごく真面目で誠実な人物です。

弟を大切にし、母を慈しみ、父の期待にも応えようとし、国政を担うものとしての責任を自覚し、その責務をちゃんと果たしている。

セルマとの恋の成就にしても、ライナスは、障壁に対して堅実に、誠実に取り組み、乗り越えていってます。だから、普通のロマンス小説に思えました。

本作がつまんなかったと言ってるんじゃないですよ。
ソーニャ文庫のコンセプトである「歪んだ愛」があろうがなかろうが、わたしが面白ければそれでいいと思って読んでますから。
むしろ、乙女系でありがちな、チ×コ突っ込んだだけで征服者づら全開のヒーローは大嫌いですから、ヴァージンのヒロインにチ×コをつっこんだ後も、彼女の愛を得ようとあがくライナスがたいへん好ましく映りました。

ただ、ここまで見事に、ソーニャっぽさ皆無のソーニャ作品て、初めて読んだなと思いまして。
敬語使いの下僕にして、ヴァージン・ヒーローのキース(桜井さくや「執事の狂愛」)ですら、歪んだとこを見せてくれたのになあ。

関連エントリ:
【秋野真珠「愛玩王子と姫さま」&桜井さくや「執事の狂愛」】


◆悪役がいない。

本作って、悪役がいないんですよね。
悪役をふれそうなキャラはいましたが、悪役にはならずで終わってる。

悪役をふれそうなキャラ、その1.セルマの実父と継母
序盤で退場して再登場なし。
小物すぎますので、悪役として再登場したらしたで、かえっていらっとしたかも。

悪役をふれそうなキャラ、その2.ライナス
ソーニャ文庫のヒーローなら、セルマを手に入れる為に、夫に毒を盛るくらいしろ!とは、ジョークですが、ヒーローが悪役ってパターンがよくあるソーニャさんで、さらには奇人でも変人でもなく、徹頭徹尾まともな青年でした。

悪役をふれそうなキャラ、その3.国王マティアス
息子ライナスとセルマの結婚に反対しましたが、反対しただけです。
二人の仲を裂く為に謀略をめぐらすこともなく、最後は折れてくれたし、いい人だ・・・。

とまあ、悪役がいないので、結局、ライナスの求愛にセルマが「わたしなんて・・・」と、ウジウジ悩んでいるだけで話をひっぱったって感じです。

◆ライナスを腹黒に思えない、ソーニャっぽいヒーローに思えない理由のひとつは、「セルマの前夫のフレインに敬意を抱いている」点にあります。

先に書いた通り、ソーニャ文庫属する乙女系のヒーローには、ヒロインの股にチ×コ突っ込んだだけで支配者づら全開になる下衆野郎がしばしば見受けられます。チ×コ挿入至上主義者であり、チ×コ挿入万能脳の持ち主たち。

だから、ヴァージンであったセルマを抱いたにも関わらず、セルマを抱かなかった前夫・フレインに対して優越感を持たず、見下さず、侮らず、「もう勝つことは叶わない相手」(p168)と見なし、「フレインの人間としての器の大きさ」(p242)に嫉妬し、衷心から「君の旦那さまは素敵な人だったんだな」(p246)と讃え、「今の私では、まったく彼にかなわない」(p246)と兜をぬぐことのできるライナスが、たいへん好ましかったです。
少なくとも彼は、チ×コ挿入無敵メンタルの持ち主ではない。

さっきからチ×コ、チ×コとごめん。
乙女系であるソーニャ文庫小説を読んでて言うのもなんですが、不愉快で腹が立つんです。チ×コを挿入すれば女はオレのモノ精神のヒーローは。貴族だ王族だときどったところで、ゴロツキやチンピラと同じじゃん。けっ。

橋本治さんの「桃尻娘」の一節がわかり易いので紹介します。
女主人公が脱ヴァージンを回想する場面です。

当分あんな事よそう、ちっともよくなんかないもん。「なんだ、初めてだったのかよ」なんて、小山のヤツにも言われるし。(中略)
それをサ、あたしが初めてだったからって、なんで小山のヤロウに「ゼンブ分ってんだぜ」って顔されなくちゃなんないの?教えて欲しいわ、何が分るのか。何も分ってない癖にサ。
(中略)
「一遍寝たからって、愛してるなんて思うなよ」だって。なぜエ?教えて欲しいわ、どうしてそんな事言えるのかしら。そんなに自分が愛されていると思う訳?冗談やめて欲しい。
(橋本治「桃尻娘」より引用)



ソーニャ文庫のヒーローさんて、程度の差こそあれ、この小山と同じ下衆メンタルをしばしばみかけます。

処×にチ×コを突っ込んだから、オレが支配者。
処×にチ×コを突っ込んだから、オレが勝者。
処×にチ×コを突っ込んだから、オレが征服者。

わたしが読んだソーニャ作品の中では、一番謙虚で善良なヒーローかもしれません。ライナスは。

◆ライナスはヴァージンじゃない。

ある程度経験があると思っていた自分の方が触れるのに緊張してしまった。
(p173)



そうか、「ある程度経験がある」ってことは、君はヴァージンじゃないのか。
残念だよ、ふっ(笑)。
まあ、結婚予定のあった王子様ですしね。22歳になりますしね。
しかたないっちゃ、しかたないのですが、残念だよ、ふっ(笑)。

しかしながら、自分の側は経験済みなのに、驕ることなく、ヴァージンであったセルマを征服した快感に浸らないライナスはやはり立派な人物です。

ヴァージン・ヒーローにして好青年のクラウス(水月青「君と、初めて恋をする」)ですら、ヒロインのアイルを強引に抱いた後、彼女が処女だったと知って、征服者の快感に浸っていましたもの。同じヴァージンであったにも関わらず。

また、ヴァージンでなかった分、セルマを労って、痛くならないよう工夫してくれてましたしね。その点もよかったです。

◆官能シーンの印象が薄かった。
4回ほどあったので、わたしはそれでお腹いっぱいですし、「印象が薄かった」と印象に残ったんだから、一周回って印象的、・・・なのか?

思い返せば、4回とも寝室のベッドでした。
それが普通なんですが、思い出す範囲では、ソーニャは、一作品一回以上はベッド以外のパターンになってるので。
堅物のキース(前述)だって、牢屋とお風呂場、好青年のクラウス(前述)も野外でいたしてました。エロ重視の「氷の略奪者」(沢城利穂著)は、バラエティに富んでましたなあ(お察しください)。

でもライナスはずっとベッドで。
この青年らしいといえばらしいのですが。
それに、終始、セルマを労っていたのは好印象です。

◆たった2歳差ってことで、年齢差設定に不満はありますが、わたしが思う「年下ヒーローのツボ」を押さえてくれてました。

すなわち、「年齢差に引け目を感じるのは女の側だけとは限らない」。

二歳差。
それを気にしているのは、むしろライナスだ。どんなに性技に長けていても、話術で負かしても、永遠にこの差は埋まらない。セルマ(※)は年上で自分は年下だと、子供っぽくこだわっている自分に呆れもするが、これはもう永遠に超えることができない宿命だと思うしかないと諦めている。
(p174)



これですよ、これ!
年齢差に引け目を感じる年下ヒーロー、こういう気持ちを読みたかったんだよw

(※)「セルマ」の箇所、原文では「フレイン」です。
ライナスはヴァージンであったセルマを抱いたにも関わらず、セルマを抱かなかった前夫・フレインに優越感を持つこともなく、セルマの心に残るフレインの存在を気にしています。だから、「フレインは年上で自分は年下だ」とこだわっていてもおかしくはないのですが、この文章、そもそもはセルマとの年齢差を気に病む記述から始まっています。
なので、「セルマ」の書き間違いではないかと推測し、「セルマ」に変更して引用しました。

◆物語のラスト、ライナスが国王となり、セルマを王妃に迎えるのではなく、王位を辞退し、セルマの夫として生きることを選んだとこが好きです。

「王よりも、君の一生の伴侶になりたい」
(p251)



惜しむらくは、ライナスにここまで言わせる魅力がセルマから感じられなかったことです。
わたしが感知できないだけで、ライナスにとっては、充分に魅力ある女(ひと)なんでしょうけれど。

そういえば、ライナスはセルマに対して
「私は、君と一緒に歩きたい」
「私と君は、同等だ」
と語りかけていました(共にp200)

セルマの側に、この言葉に応えるほどの力量をうかがえなかったのが残念です。

◆ヒロイン・セルマについて。

ヒーローのライナスはヴァージンでなくても(ヲイ)好ましい青年でしたが、ヒロインのセルマがねえ・・・。
残念だ、ああ、残念だ。
せっかくの年上ヒロインなのに(たった2歳差とはいえ)。
せっかくの20代ヒロインなのに。

全然、年上っぽくない。
全然、20代っぽくない。

ヴィクトリア(沢城利穂「氷の略奪者」)も年上&20代ヒロインにしては、物足りない人物造形でしたが、滑舌がはっきりしてただけマシかも。

関連エントリ:
【沢城利穂「氷の略奪者」】


滑舌云々は冗談ですが、ランダムにセルマのセリフを抜粋しますと、
「い、いえ、あの」
「あ、あの、ライナス様は執務室に・・・」
「わ、私は、そんな・・・」
「あ、あの、どこに?」
「・・・ライナス、さま」
「私も、します」
「だ、だから、それを考え直して下さいっ」

長セリフをするするとしゃべっていた時もあるのですが、全体を通しては、こんな風に始終自信なさげにおどおどしていた印象です。

本作のダークな表紙絵は、セルマの心象風景なのかも。
とらえどころのない、月明かりしか頼るもののない真夜中のような不安に誘う風景が、セルマの目に映るものなのかも。

悪役のいない物語なので、「身分違い」に悩むセルマを二人の恋の障壁として物語を引っ張ったとわかるのですが、ライナス一人が奮闘してて、セルマは始終うじうじ悩んでいただけでした。

乙女系ヒロインは「受け身」が基本であると推測できますが、その点を呑込んで読んでも、非常に物足りないヒロインでした。

作者さん曰く「純粋培養で生きてきた可愛らしいセルマ」。
そっかあ、24歳になるけど、「大人」じゃないんだね、セルマちゃん・・・。

たぶん、男性であるフレインやライナスから見れば、セルマは「守ってやりたい気持ちを刺激する可愛い女(ひと)」なんでしょう。

◆セルマの前夫、フレインについて。

作者さんとライナスが褒め称える通り、素敵な男性でした。

当初は、老齢ゆえの性的不能だったので、セルマと肉体関係を持たず過ごしたのかと想像していたのですが、性交可能の体でありながら彼女の気持ちを尊重してあえて抱かない方を選んでいたとは・・・。

ワタクシ、「人妻とか子持ちとか、ヴァージンでなくてもよい立場のヒロインを、作者が作為を施して、ヴァージンのままヒーローにささげる設定」が嫌いです。

例えば、とあるハーレクインのとある未亡人ヒロインは、亡夫が身体障害者であった為、何度かトライしたけれど、最後まで遂行できず、ヴァージンのままヒーローと結ばれる展開でした。
作者名もタイトルも忘れましたが、前夫を身体障害設定にして、ヒロインをヴァージンのままヒーローに捧げた仕掛けが気色悪くて、その点は覚えてます。

したがって、本作のフレインの設定も嫌いであるはずなのですが・・・、嫌悪はありません。

理由のひとつは、フレインの意志が尊いから。
「フレインがセルマを大切に想うからこそ抱かなかった」、これもまた、先に触れたハーレクインで、「ヒロイン前夫を身体障害者にした」と同様、ヒロインをヴァージンのままヒーローに捧げる為のご都合主義ではあるのですが、すごくセルマを労り、大切にしている想いが伝わってきて、前者に感じた嫌悪はありません。

「相手を愛し、大切に想うからこそ、無理強いをしない。自分の要求だけで求めない」
人間であるからこそこんな愛もあるのだと、すごく美しく、尊いものだと思います。

理由のもうひとつは、ライナスがフレインに敬意を抱いているからです。

先にも書きましたが、この乙女系ってジャンル、
チ×コを突っ込んだから、この女はオレのもの
チ×コを突っ込んだから、オレが勝者
と、チンピラ、ゴロツキと変わらぬチ×コ挿入全能主義のヒーローが珍しくないと思います。
(一斑をもって全豹を卜す。ほぼソーニャ作品しか読んでませんが、乙女系の傾向は察しがつきます。)

そんな中にあって、ライナスはヴァージンであったセルマを抱いたにも関わらず、セルマの征服者にならなかったのと同様、セルマを抱かなかった前夫・フレインに対して優越感を持つことはありませんでした。

だから、「ヒロインをヴァージンのままヒーローにささげる展開(フレインはセルマの気持ちを尊重して抱かなかった)」に卑しさを微塵も感じず、不快感を持たずに済んだのだと思います。

今「卑しさ」と述べました。
先に例として紹介したタイトル失念の某ハーレクインの顛末は、たしか、未亡人=非×女と思い込んでいたヒーローが、初夜の後、ヒロインが処女であったと知って大感激という、まるで処×厨小説でした。
卑しいです。ヒーローも、こんな設定を作り出す作家も。
前夫はまるで踏み台だね・・・。

閑話休題。

ライナスがフレインを貶めていないので、「セルマの気持ちを尊重したフレインが妻を抱かなかった」フレインの決意をそのままに、崇高なものとして受けとめることができました。

◆「身体障害だから、しかたなく性関係なしに過ごす」
あるいは
「老齢ゆえの性的不能だから、しかたなく性関係なしに過ごす」
と、異なり、
「心身ともに性関係可能だ。けれど、セルマの為を想ってあえて、性関係なしに過ごす」ことを選んだところが、ご都合主義にも関わらず、嫌味がないのだと思います。

注意.
前者二例のケースでも、「しかたなく」感が漂っていなければ、印象は悪くないと思います。

◆イラストについて。
すみません。わたしは絵心がないので、不満はあってもくささないようにしてきましたが、ごめん、やっぱり我慢できない。

表紙のカラーイラストは良いのですが、本文のモノクロイラストがものすごく手抜きに見えます。
まるで、時間がなかったので大急ぎで片付けましたといった感じです。
実際にお時間がなかったか否かはわかりません。あくまでも、わたしの目にはそんな印象のイラストだということです。

二人の出会いの場面(p21)は、なかでは唯一(?)手をかけた印象のあるイラストです。
ただ他が、雑な印象で。

ベッドシーンも、ベタなし頭同士だから、白っぽくなりがちで難しいのかもしれないけれど、ほんとーに、画面が白っぽくて、すごく手抜き感があります。
ただし、同じ条件、「ベタなし頭同士」のベッドシーンを、メリハリつけて描かれたイラストレーターさんもいらっしゃるので、「ベタなし頭同士」だからは、許容する理由にはならないと思います。

気になって、イラストレーターさんの他のソーニャでのお仕事(「皇帝陛下は逃がさない」「影の花嫁」)をチェックしたところ、そちらの二作品ではちゃんとした印象のイラストでした。
本作では、イラストレーターさんの通常のお力が発揮されていない様子であるのが残念です。

◆お遊び企画「本作をもっとソーニャっぽくしてみよう」

1) 人妻であったセルマを愛したライナスは、夫のフレインを密かに死に至らしめた。

2) ライナスはセルマを王妃付侍女となるよう画策し、なんだかんだあって、彼女を強引に抱く。
抱いた後、セルマが処女であったことを知り、セルマにチ×コをつっこまなかった故・フレインを見下し、セルマを我がものにした支配者の快感に浸る。その後は、チ×コによる性的調教の繰り返し。

3) セルマとの仲に反対である父王マティアスは、セルマから身を引くように差し向けるべく、複数の部下に彼女を強×するよう命ずる。
しかし、父王の企みがライナスにばれ、あわやという所で、部下たちは返り討ちにされる。

4) ライナス、セルマを襲わせた父に怒り、父王を退位せしめ、事実上監禁状態に(後々、密かに殺す)。
当初の計画通り、王位は弟に譲り、ライナス本人はセルマを娶る。

5) ラスト、セルマの意を汲んで、ともに故・フレインの墓に、結婚の報告をする。しかしながらライナスの心中は、セルマの処女もセルマ自身をも奪いとった勝者の愉悦に満ちていた・・・。

だいぶソーニャらしくなったと思いますが、不愉快ですな、こんなヒーロー、こんな話。

ヴァージンであったセルマを抱いても、征服した快感に浸ることなく、そして、セルマを抱かなかったフレインを決して見下すことなく、衷心から、フレインの墓前に「セルマを幸せにします」と報告するつもりでいる本作のライナスが好きです。

これを改良すると、

5)-別ヴァージョン
フレインからの手紙はセルマに残されたものの他に、ライナス宛てのものあった。
開封して一読したライナスは愕然とした。フレインはライナスによる置毒を知っていた。知っていて、セルマの幸福を思い、あえて死を受け入れていたのだ。
今までフレインに対して抱いていた優越感は木端微塵に砕け散った。彼我の器の大きさを噛みしめ、ライナスは、せめてセルマには一生何も悟らせず、彼女を幸福に守り抜こうと決意した。

うん、ちゃんと「反省」と共に、「覚悟」も入っていて、これだったら、悪人ライナスでも受け入れることができます。

◆ライナスとフレインは魅力的でしたが、本作自体は「年上ヒロイン&年下ヒーローもの」としては物足りなかったので、わたしが満足した一冊を紹介します。
同じソーニャ文庫の、年齢差10歳の年上ヒロインもの、「旦那さまの異常な愛情」(秋野真珠著)です。


作者:秋野真珠
イラスト:gamu


10歳違いのインパクトもさりながら、ジャニス(ヒロイン)と結婚する日の為に娼館通いして閨のテクを磨きつつ、最後の一線だけは守っていたマリス(ヒーロー)のジャニスへの恋着っぷりが素晴らしいです(笑)。
なんせ貞操を守った動機が「気持ちよくなる時はジャニスといっしょじゃなきゃイヤだから」なんですから。あっぱれw

関連エントリ:
【秋野真珠「旦那さまの異常な愛情」(その1)】
【秋野真珠「旦那さまの異常な愛情」(その2)】
【秋野真珠「旦那さまの異常な愛情」(その3)】


★求ム★
「旦那さまの異常な愛情」に勝る、「年上ヒロイン&年下ヒーロー」もの(笑)。


しかるにリウィアは初代皇帝アウグストゥスにふさわしい、偉大なる貴婦人であった。

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