2015年09月20日 (日) | Edit |
フライング尊厳者誕生日記念。
ユリ・クラ・ファミリーで小ネタ3つ、その2です。

◆その1.へぇ・・・。

アントニウスは土壇場で和睦の条件を示し、合意に達しようと試みたが、アウグストゥスは自殺を押し付け、その死を見とどけた。
(スエトニウス「ローマ皇帝伝」アウグストゥス-17)



アントニウスの自殺の流れは、クレオパトラを題材にしたドラマ・小説・評伝等がほぼプルタークに準拠しているため、

(1)クレオパトラが死んだと聞かされた。
  ↓
(2)もう生きていたくないぜ、ハニー、待っててくれ、すぐに君の元に行くぞぉぉぉぉ!

この流れが、一般にも流布していますが、皇帝伝の簡潔な記事からは、オクタウィアヌスがアントニウスに直接自殺を強いたとも読めます。


◆その2.悠仁さまとマルケルス

悠仁親王殿下。
皇太子ご夫妻に男児誕生がなければ、遠い未来でありますが、皇位を継承される方です。
なぜならば、皇室典範は皇統に属する男子のみに皇位継承権を定めているから。
分家の男子であろうと、本家の女子をさしおいて皇位を踏む資格を有するのです。
そして、登極にあたって、本家の血統を皇位につなげるために、いとこの愛子内親王と結婚する必要はありません。
悠仁さまは悠仁さまであるだけで、十分に皇位継承権が保証されています。

さて紀元前のローマ。
マルケルスは、息子のいないアウグストゥスの甥であるだけでは後継者と認められるのに不十分だったのでしょうか?

たとえば、マルケルスが別の女性を好きになって結婚した場合、甥であっても後継者候補からはずされたのでしょうか?

甥であることと、娘の婿であること、どちらが後継者となるポイントとして重視されたのか。

周知のごとく、マルケルスはユリアと結婚したので、この問いに明確なありません。

けれど、マルケルスの死によって、ユリアの重要度は明らかに上がったと思います。

家族を結びつける絆が家父長権であることは、言い換えるとファミリアが父子関係を基軸として構成されていることを意味する。(中略)女性を通じて家族関係が広がらないのである。
(島田誠「古代ローマの市民社会」p61)



にも関わらず、アウグストゥスの後継者選びにおいて、女性こそが重要な鍵となりました。

ユリアです。
アウグストゥスとの血縁を持たない男たちにとっては、ユリアとの婚姻および、ユリアとの間にアウグストゥスの血を引く跡取りを儲けることが、後継者と認知される暗黙の条件である認識が形作られたのですから。

しかも、この件(皇帝家の女性との結婚が帝位継承のキーになる)は後々まで尾を引き、セイヤヌスの帝位への野心を後押ししたのでは、と思います。
彼は、ドルッススの未亡人リウィアとの結婚を帝位への足掛かりにしようとしました。
「皇帝家の女性との結婚」に帝位継承のキーがあればこそです。

◆その3.パラティヌス丘の王子たち

ロンドン塔の王子たちといえば、忽然と歴史の闇の中に消えた、エドワード4世の息子たちです。
長い間、王位簒奪者の叔父リチャード3世に殺されたと言われていましたが、わたしは「時の娘」(ジョセフィン・ティ著)による、否定説を支持しています。

さて、共和政末期のローマ、パラティヌス丘の質素な邸宅に、異国の王子王女がやってきました。
親を亡くしたその子たちは、父の妻であったオクタウィアと呼ばれる女性の元で、養育されることになりました。

子供たちの父はアントニウス、母はエジプト、プトレマイオス王朝最後の君主クレオパトラ。
子供たちの名は
長女 クレオパトラ・セレネ
長男 アレクサンデル・ヘリオス
次男 プトレマイオス・フィラデルフォス

オクタウィアの美徳のひとつとして、彼女が引き取って育てたことがよく知られているので、うっかり見落としていましたが、成長後の消息が明らかなのは、マウレタニアの王妃となったクレオパトラ・セレネだけです

男児二人の消息は不明。

古代の史料にもほのめかしすらありませんが、想像をゆるしてもらえば、オクタウィアヌスによって密かに殺されたってことはありませんか?

嫁に出せるクレオパトラ・セレネと違って、なんといっても男児である二人。
成長の後、エジプト王位への野心を抱いたり、王朝再興のシンボルとして担がれる事を恐れて、葬ったのだと。

単にエジプト王家の利権のことだけでなく、オクタウィアヌスはアントニウスの男系血筋に冷たい気がするんです。
長男のアンテュルスを殺しています。
ユルスは第三位の待遇を得ていたと言われていますが、アグリッパやリウィアの息子たちに比べて、国政への関与度合いが高くなく(調査中)、「飼い殺し」に近いものであったような気がします。

とはいえ、想像にすぎません。
王子様は二人とも早々に自然死して、記録に残らなかっただけかもしれませんしね。

しかるにリウィアは初代皇帝アウグストゥスにふさわしい、偉大なる貴婦人であった。

↓「日本ブログ村」に参加しています。記事がお気に召したらクリックを!励みになります。
にほんブログ村 歴史ブログへ にほんブログ村 漫画ブログへ
スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
お久しぶりです!
どもども!
ユリクラ朝のネタ、興味深く読ませていただきました。我々が一般的に知っているであろう物語と、実際の史実の差って結構ありますよね。

◆その1
アントニウスが壇場で和睦の条件を示し、合意に達しようと試みたってのが本当だとしたら、ガラリと印象が変わりますね。
クレオパトラの後を追って印象は、やっぱりシェイクスピアの影響が強いような気がします。実際にカエサル暗殺の時にも、あの有名なセリフも言ってなかったみたいですし、そもそも暗殺者の中にはほかにもブルートゥスがいたって可能性もあったりとか。しかし、本当に和睦の条件を示そうとしたなら、アントニウス、なんてへっぽこなんだ。小オクタウィアもどんな思いだっただろうか。。。

◆その2.
アウグストゥスの後継者選びにおいては、本当に女性こそが重要な鍵でしたよね。アウグストゥス死後も、ある意味ユリクラ朝での女性達は凄まじい限りです。セイヤヌスは元々エトルリア系統で生まれアエリウス氏族の養子になっているので、自分に皇族の血が流れていないことは確かなわけですよね。それでもアラ・パキスの中に刻まれている皇族達をみると、やっぱり女性によって皇族として列したローマ市民もいるので、セイヤヌスが野心を抱いてもおかしくはなかったのでしょうね。特に、アウグストゥスの後継者問題、アグリッパとユリア、ティベリウスとユリアの結婚などを身近で見てきた者としては。

◆その3.
僕もオクタウィアヌスがアントニウスの男系血筋に冷たい気がするのは同感です。そもそも信頼の置ける男系以外には冷徹さえありますよね。飼い殺しをするくらいなら、殺してしまえってことはありえるかもしれませんね。それこそ、記憶抹消の刑にのせることもない内戦の奴隷ならば。僕として「文化系の僕を見下した、体育会系のアントニウスなんか嫌いだ!」ってところでオクタウィアヌスが次々に殺しちゃったってのもありかな~っと、かってに妄想しています。

話は変わるのですが、最近、なんでアグリッパの彫刻があんなにムスっとしているのか?だんだんわかってきたような気がします。おこがましく私事なのですが、バンド率いているボーカルとしての自分と、ギターをやっている友人の関係が、すごくそんな感じなんですね。ともに同い年でありながら、こちらはバンドの曲(法則)やら演出(インフラ)を決めたり、集客(税金)などをどんどん増やしていくわけで、ギターやっている者としては楽器隊(軍隊)整備に勤しむしかなく、結構不満たらたらだったりするわけです。けれどやっぱりそれが自分と同じようにできるか?というと、人間得手不得手ってモノがあって、全体的な視点で見ることはできないもんなんでしょうね。時折、ギターの顔を見ててアグリッパそっくりに見えてきて、そんなことを言うと「俺はアグリッパじゃない」なんて、またまたムスっとしているわけです。そういえば、うちのギターも昔は体育会系でした。体育会系であったアグリッパが文化系であるテルマエや橋の建設の才能があったのも、アウグストゥスとしては利用できると考えていたとしてれば、男の世界の友情ってものは、そういう沈黙の争いみたいなもの水面下に必ずあるのかもしれませんね。

2015/09/26(Sat) 22:46 | URL  | Josh Surface #uszzu23E[ 編集]
Re: お久しぶりです!
>Josh Surfaceさま

こんばんは。興味を持ってくださってありがとうございます。

> ◆その1
> アントニウスが壇場で和睦の条件を示し、合意に達しようと試みたってのが本当だとしたら、ガラリと印象が変わりますね。
> クレオパトラの後を追って印象は、やっぱりシェイクスピアの影響が強いような気がします。

シェイクスピアの影響はわりかし強いと思います。
それに、「クレオパトラとアントニウスの恋」はドラマで何度もテーマにされましたし。
ドラマ上は、「熱烈に愛しあった」との展開が必要なんでしょうな。

和睦するつもりだったなら、へっぽこではあるけれど、人間くさいとも言えて、面白いですけどね(笑)。
オクタウィアの気持ちもさりながら、娘二人もどんな気持ちであったやら。

> ◆その2.
> アウグストゥスの後継者選びにおいては、本当に女性こそが重要な鍵でしたよね。アウグストゥス死後も、ある意味ユリクラ朝での女性達は凄まじい限りです。セイヤヌスは元々エトルリア系統で生まれアエリウス氏族の養子になっているので、自分に皇族の血が流れていないことは確かなわけですよね。

そうです。皇族の血が流れていないセイヤヌスに帝位への野心を抱かせたもの、それがアウグストゥスの後継者政策であったとしたら皮肉なものです。

塩野さんも指摘してらした記憶があるのですが、結句、アウグストゥスがユリアがもたらす自分の血統を重視したから、必然的に皇族女性の地位が高まったと。
たしか、小アグリッピナについての項目で述べていらしたかと。
ネロりん本人は、ドミティウス・アヘノバルブスの息子なので、母アグリッピナの息子である点で、帝位へと導かれてるんですよねえ。

> ◆その3.
> 僕もオクタウィアヌスがアントニウスの男系血筋に冷たい気がするのは同感です。

悪意はないけれど、アウグストゥスは無能な人間、自分の役に立たない人間に対して冷たいのかなあと思う時があります。
アントニウスの男系血筋が無能だったとは断定できないのですが、そういった「冷たさ」が、ユルスやアンテュルスやエジプト皇子たちに発揮されたのかと。


>「文化系の僕を見下した、体育会系のアントニウスなんか嫌いだ!」ってところでオクタウィアヌスが次々に殺しちゃったってのもありかな~っと、かってに妄想しています。

歴史の真相は意外とそういった卑近な感情に基づくものかも(笑)!?

>男の世界の友情ってものは、そういう沈黙の争いみたいなもの水面下に必ずあるのかもしれませんね。

身近な例を基にしての、アグリッパ考、面白いです。
バンドさんは「アグリッパ」の話が通じるのですか(笑)?
皆が皆スポットライトが当たるものではない。
それぞれの役割があって、その役割を果たしてこそ、組織は上手く運営される、とわかっていても、割り切れない時があるかもしれないですね。

では。
2015/09/28(Mon) 20:39 | URL  | サラ #ndrEhoxc[ 編集]
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック