2015年10月27日 (火) | Edit |

「Tiberius, Reluctant Caesar」
Author:George Vass


意訳すると、「ティベリウス、気乗りしない登極」といった感じでしょうか。

M. Retallick氏のレビューに惹かれて購入しました。

He also takes a different tack than Graves on Tiberius' mother Livia, here portrayed as a loving mother and wife.
「著者はまた、ティベリウスの母リウィアについてもグレイブスとは異なる方針で描いている。作中のリウィアは、愛すべき母であり妻である。」(日本語・管理人)



また出たか、グレーブスの「I,Claudius」こと「この私、クラウディウス」。Mary Muddさんが指摘する通り、昔、タキトゥス、今、ロバ・グレがリウィアの印象に大ダメージを与えています。

届いたので、リウィアの出番だけざっと目を通しました。
リウィアの印象は、M. Retallick氏のレビュー通りかなり良いです。

評伝・伝記のつもりで購入しましたが、創作と思える描写が多々あるようなので、小説とみなした方がいいかも。
なので、Allan Massie「Augusutus」、Colleen McCullough「Antony and Cleopatra」と共に、リウィアが肯定的に描かれている三大小説とします。

おお、すごいぞ。
リウィアに好意的な小説がいつのまにか、三冊も出版されてる!

(全部英語で、邦訳されていないのが悲しいけどね)

三作品での共通点はアウグストゥスの愛妻ということで、三大小説のリウィア像を比較すると、


「Augustus」
Author:Allan Massie


尊大、気位が高い、気が強い、秋の森のブナノキの葉のような色した髪と大きな青灰色の瞳を持つ美人


「Antony and Cleopatra」
Author:Colleen McCullough


頭が切れ、上昇志向が強く、俊敏。
黒髪と一筋の縦じまの入った濃い蒼い瞳を持つ際立った美人。

そして、

「Tiberius, Reluctant Caesar」
Author:George Vass


愛らしい気立てと振る舞い、これに尽きます。
アウグストゥスにとっては、実に愛すべき奥さんです。
ちなみに、目を通した範囲では、美人描写は見当たらず。

しかしながらティベリウスにとっては、愛すべき母と言い難い。
前半はいいお母さんでしたが、後半、特に登極以降、リウィラ(ティベリウスの息子の嫁)、大アグリッピナ(説明不要と思う)と並んで、ティベリウスから「三つのおでき」と称されちゃってます。
死ぬ前にティベリウスと再会し和解の機会を得たこと、リウィアの訃報をティベリウスが悼んでくれている描写があるのが救いですが、「三つのおでき」とまで言われるとは。

リウィア贔屓のわたしでも、アウグストゥスの死後の、ティベリウスとの関係には、積極的にリウィアの肩を持つ気にはなれないものなぁ・・・。


「Antonia Augusta: Portrait of a Great Roman Lady」
Author:Nikos Kokkinos


リウィアの息子ドルススの妻アントニアの伝記。
編集側の紹介によると、碑文、硬貨、パピルス写本、彫像、記念碑を渉猟し、政治史の中でのアントニアの立場にポイントを当てたものらしいです。

興味をそそられます。
それにしても、小アントニアは才色兼備でドルちゃんの妻として注目を浴びていますが、お姉さんの大アントニアって、やや影が薄くない?単に、わたしが詳しく知らないだけ?ネロ帝の祖母なのよね、たしか。


「Julia Augusti: The Emperor's Daughter」
Author:Elaine Fantham


アウグストゥスの娘ユリアを主人公とした小説、らしい(もしかして、評伝かも。断定する自信がありません)。
現時点では、英国Amazonに読者レビューが1件あり、5つ星です。
それによると、危険なローマ社会の中を生きた、公正で機知に富む魅力ある娘として描かれているようです。ユリアだけでなく、生母スクリボニアも好意的に描かれているらしい。
ただ、ティベリウスが、ユリアを殺し、アウグストゥスの後継者となるため、ユリアの前夫たちも殺したという設定にされているみたいで、そのあたりで、わたしは、「小説」ではなないかと思いました。

ユリアを主人公とした小説は、Edward Burtonによる「Caesar's Daughter」もあります。
こちらも、英語Wikiによると、ユリアが善良で、スクさんは立派、リウィア・ティベリウス側が悪役設定になってるようです。

なんだか、あちら立てればこちらが立たずって感じです。
まるで、おねねを肯定的に描けば、淀殿が否定的になり(永井路子・司馬遼太郎等)、逆に淀殿を肯定的に描けば、おねねが否定的になる(杉本苑子)現象です。

ユリア、リウィアの両者を肯定的に描くことも不可能ではないはずなのに。

なお、「Julia Augusti: The Emperor's Daughter」は「Women of the Ancient World」シリーズの一冊らしく、シリーズとして他にもキケロの妻子であるテレンティアとトゥリア、グラックス兄弟の母コルネリア、アレクサンドロス大王の母オリュンピアス、カラカラ帝の母ユリア・ドムナの本 が出版されています。

しかるにリウィアは初代皇帝アウグストゥスにふさわしい、偉大なる貴婦人であった。

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コメント
この記事へのコメント
羨ましいかぎりです!
どもども、海外は本当に色々なローマ帝国の本が出版されていて、本当に羨ましい限りですね。

この間買った「ネロ 暴君誕生の条件」も1967年に出版されていたのに、出来る限り新しいネロ像に挑戦していて、結構昔の日本の方がマニアックな本の出版に頑張っていたような気がします。

「ティベリウス、気乗りしない登極」というタイトルはいいですね~。本当にティベリウスの印象って、気乗りしないような消極的なイメージが世界共通なんでしょうね。イタリアで現地の人と話しても、ティベリオって名前に持つイメージは同じようなイメージがあるようで、やっぱりアントニオの陽気さや伊達さが全然違く、好まれ方も違うそうです。

ジョブス亡き後のアップル帝国引き継いだティム・クックCEOって、ジョブスが生前の頃、製造部門の効率化を担った自らを「在庫のアッティラ王」と呼んでいたそうですが、ジョブス死後にiPhoneを爆発的に売上げたりアップルの株価が最高になるなど業績を上げていて、どうしても当時のティベリウスが堅実に国庫を蓄えていたのとダブってしまって、こんな感じだったのかな~って思ってみています。

それにしても、大母后リウィア様の「愛らしい気立てと振る舞い!」なんと素敵な表現なんでしょうか!M. Retallick氏のレビューにはカリグラの事も優遇を受けたと書いてあるので、とっても興味がそそりますね!

大アントニアって本当に資料が無くて、なかなか掴み辛い人物ですよね。HBOドラマ「ROMA」では、一瞬だけ小アントニアと大アントニアが遊んでいるシーンが映ってましたが、小アントニアの方がぐんと表舞台に立っているような気がしますね。やっぱりクラウディウス皇帝の母親ってところで注目されるのでしょうね。因みにローマのアラ・パキスを観に行ったとき、現地の人に色々と質問したのですが、一応アヘノバルブス家もそれぞれ彫刻がされており、ネロ帝の父親グナエウスとその姉ドミティッラがいたので、その上にいるのは彼女ではないか?といってました。

http://cdm.reed.edu/ara-pacis/altar/right-side-south/far-right-2/


ネロ皇帝にとっては、姉の大アントニアが祖母なのに、妹である小アントニアはアグリッピナが入っているので曾祖母になるのが、このユリクラ朝の複雑怪奇な関係でしょうね。
2015/10/28(Wed) 15:26 | URL  | josh #r13xZNus[ 編集]
Re: 羨ましいかぎりです!
>joshさま

> どもども、海外は本当に色々なローマ帝国の本が出版されていて、本当に羨ましい限りですね。

まさに。ちょっと検索しただけでも、カルプルニアさまとか、ゲルマニクスとか、小アントニアの小説も出版されています。
せめて真面目に英語に取り組んでいればよかったと思います。


> この間買った「ネロ 暴君誕生の条件」も1967年に出版されていたのに、出来る限り新しいネロ像に挑戦していて、結構昔の日本の方がマニアックな本の出版に頑張っていたような気がします。

意外と古かったのですね、「ネロ 暴君誕生の条件」。

> 「ティベリウス、気乗りしない登極」というタイトルはいいですね~。

いろいろと巡り合わせが悪かったというか。でも、誇り高い本人は、決して巡り合わせのせいにはしないでしょうけれど。
アントニオことアントニウスは、いかにもイタリアン!って感じですね(笑)。あの人は残酷になっても、「陽」のイメージしかない。

> ジョブス亡き後のアップル帝国引き継いだティム・クックCEOって、

初代が偉大だと二代目はしんどいものですが、ティム・クックCEOもがんばってらっしゃいますね。
どうしても、初代が持つイメージの派手さに目がくらみますが、初代が築いた土台も堅実に守り発展させる二代目あればこそ、組織は続くのですから。

> それにしても、大母后リウィア様の「愛らしい気立てと振る舞い!」なんと素敵な表現なんでしょうか!M. Retallick氏のレビューにはカリグラの事も優遇を受けたと書いてあるので、とっても興味がそそりますね!

はい、こういう「実に愛すべき奥さん」タイプのキャラ設定されたリウィアは初めて見ました。
いや、さかもと未明版のリウィアもわりかし愛らしいタイプでした。

> 大アントニアって本当に資料が無くて、なかなか掴み辛い人物ですよね。

ネロ帝の祖母だからもっと注目されてもいいと思うのですが、史料的にはあまり目立ってない気がします。
日本風に言えば、外に嫁に出た娘と、妻(リウィア)の連れ子とはいえ、皇帝一族内の男(ドルスス)と結婚した娘の立場の違いが出たってとこでしょうか。

> 因みにローマのアラ・パキスを観に行ったとき、

アラ・7パキスの情報をありがとうございます。
名門アヘノバルスブス家の面々も皇帝一族の係累として彫刻されてるのですね。
この彫刻、いつ見ても写実的でユリ・クラ・ファミリーがあの時代に生きていたなだなあと、しみじみさせてくれます。

ではw
2015/10/29(Thu) 20:37 | URL  | サラ #ndrEhoxc[ 編集]
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