2015年12月08日 (火) | Edit |
その1. 副詞の重み

「オクタウィアヌスはこの姉が好きであった。」

「オクタウィアヌスは、女の模範だと言われたこの姉が非常に好きであった。」
(プルターク「英雄伝」アントニウスの章31節)
(引用にあたって、わかり易いよう、呼称を修正しています)



「非常に」があるのとないのとでは、印象がまるで違います(笑)。


「リウィアからは一人の子供ももうけなかった。」

「リウィアからは熱烈に望んでいたのに一人の子供ももうけなかった。」
(スエトニウス「皇帝伝」アウグストゥスの章63節)



「熱烈に」があるのとないのとでは、印象がまるで違います(泣)。

その2. アグリッパの結婚

アグリッパの結婚年、その時の本人の年齢、花嫁の名前と年齢は次の通りです。

第1回目
紀元前39年から34年の間と推測される。
アグリッパ(24歳から29歳)
アッティカ(12歳から17歳)
年齢差12

第2回目
紀元前28年ごろ。
アグリッパ(35歳)
大マルケラ(16歳)
年齢差19

第3回目
紀元前21年。
アグリッパ(42歳)
ユリア(18歳)
年齢差24

年をとるにつれて奥さんが若くなっています。

無名の家系からの位人臣を極めた出世っぷりといい、ある種の男のロマンを地で生きたお方(笑)。

ついでに、アグリッパの友にして主人であるアウグストゥスの結婚歴は・・・、

最初、処女妻
次、年上妻
終わり、妊娠中の人妻

マニアックな官能小説の主人公になりそうです。

その3. 貞淑コンテストはあったようです。

「美人コンテスト」(※)は知らず、「貞淑な婦人コンテスト」はあったようです。

「もっとも貞淑な婦人」
マートローナたちの投票によって、もっとも謙虚であると判断された婦人の最初の例は、(中略)スルピキアであった。
彼女は前もって選ばれていた100名の名簿の中から、シュビラの書によって、ウェヌス像を奉納するために選ばれた。(後略)
(プリニウス「博物誌」7-35)



ところで、スルピキアさんは、「マートローナたちの投票によって」選ばれたのか、「シュビラの書によって」選ばれたのか、どっちなの?

(※)美人コンテスト
アウグストゥスは健全な家庭を奨励し、不健全な男女関係の取締に熱心でしたが、彼自身は決して貞節の手本となるような人物ではありませんでした。

「紀元前15年(or16年)、アウグストゥスが、マエケナスをローマを残し、ガリアに赴いたのは、かの地でこころゆくまで、テレンティアとの逢瀬を楽しむためだと、ローマっ子はもっぱら噂した」(ディオ「ローマ史」)の記述に続いて、

It was said that his desire for her was so great that he had once made her take part in a contest of beauty against Livia.

「アウグストゥスのティレンティアに対する情欲は非常に強かったので、テレンティアをリウィアに対抗する美人コンテストに参加させた。
(Cassius Dio「The Roman History」book54-19)(Penguin classic)(日本語訳・わたし)



んで、「a contest of beauty」って何なんでしょうか、いったい?

まんま、「美人コンテスト」と訳しましたが、contestには、「争い・競争」の意味もあるので、「リウィアと美しさを競わせた」って風に訳した方がいいんでしょうか。

「ageinst Livia」ということは、リウィアが社交界の美女として認められていたので、それにとってかわるよう、アウグストゥスがテレンティアの後押しをした・・・、のか?

愛妻と愛人を競わせてアウグストゥスは二人をどうしたかったんだ・・・。


「I, Livia: The Counterfeit Criminal」
Author:Mary Mudd


謎の美人コンテストを、Mary Muddさんは次のように解釈されています。

Dio’s reference to the beauty compention, moreover, reveals Livia as the standard against whom Augustus judged other women.

紀元前16年のテレンティアとのラブ・アフェアを否定的に検証されたうえで、「さらに、ディオが言及する美人コンテストも、アウグストゥスが他の女性に対して(容貌を)評価する基準がリウィアであったことが明らかである」

Mary Muddさんがリウィアさまをお好きなことと、アウグストゥス→リウィアのカップリングもお好きであろうことが察せられる名解釈ですが、結局、美人コンテストがなんなのかよくわからない・・・。

さらに数ページ後、再び「美人コンテスト」に触れて

「ディオの記述はリウィアとテレンティアの間に存在した騒々しい面をほのめかしている。
もし、アウグストゥスを喜ばせるために彼女たちが自分の魅力をみせびらかしていたのであれば、それは彼女らが自発的にしていたのであろう。
アウグストゥスは自分の楽しみの為に妻に恥をかかせるような事を強いるタイプの夫ではない。
彼は妻の感情や、情緒面の健康に注意深かった。」
(Mary Mudd著「I, Livia」p223)(日本語訳・わたし)



以下、Mary Muddさんの解釈を基にした空想劇場。

アウグストゥスが、愛人相手の気やすさから、テレンティアに「どうだ、わたしのリウィアは美しかろう。そなたも美女と名高いのだから、リウィアに見劣りせぬよう、美しくみせて、わたしを楽しませてみよ」といった感じで、くだけた感じで口にした。

そして、少々むかついたテレンティアがリウィアに対抗する素振りをみせた。

で、夫が元々自分をほめている事情を知らないリウィアが、やや怒りを誘発された。
「婢女相手のお戯れならともかく、身分ある人妻に手をだすなんて、ずいぶん、わたしを蔑ろになさること。ああ、そういえば、わたしの時も、強引な方でしたわよねえ、ホホホホホ」

・・・落ちはない。悪しからず。

しかるにリウィアは初代皇帝アウグストゥスにふさわしい、偉大なる貴婦人であった。

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