2016年01月03日 (日) | Edit |
お正月休みに「八重の桜」、戊辰戦争編を視聴したので、会津出身者が主人公である「あすなろ坂」に関するエントリを。

ただし、「あすなろ坂」の「会津」は、武士がなくなった明治以降において、「武士の生き方」を主人公たちの生きる土台とする為であり、かつ、その「武士の生き方」も「あすなろ坂流武士の生き方」なので、里中作品としてお楽しみくださいとしか言えませんわ。




では本文へ。

タイトルに「つっこみ!」と記されていますが、わたしは、里中満智子さんの「あすなろ坂」が好きです。
貶すため、あるいは馬鹿にするためのつっこみではありません。
好きすぎて、熱心に読み、細部に目が行き届いたゆえのつっこみです。

つっこみに入る前に、「あすなろ坂」の簡単な説明を。
「あすなろ坂」は、江戸時代末期から、明治、大正、昭和と続く、有馬家の女の愛の歴史を紡ぐ大河物語です。
初代ヒロインにして、物語のバックボーンとなるのは有馬芙美。
彼女から、子どもたち、孫たち、ひまごへとヒロインが代替わりしていきます。

あすなろの木の由来に寄せて、
「明日こそ檜になろう、なれないとわかっていても」、
「より良い未来を目指して、明日への希望を抱いて生きていく」物語でもあります。


↑有馬詩絵&源宣匠ご夫妻が表紙絵の4巻

では、三代目ヒロインの一人、有馬詩絵(ありま・うたえ)の夫となった源宣匠(ウォン・ソンジョン)さんにつっこみ!

・・・の前に、有馬詩絵さんについて語りましょう。

歴代「あすなろ坂」ヒロインの中で、わたしは、有馬詩絵さんが一番好きです。
大人しく控えめなヒロインたち揃いの「あすなろ坂」のなかで、異色でした。詩絵さんは。
気が強く、能動的で、ハキハキと自分の意見を口にできる女性です。

明治28年(1895年)生まれ(4月15日以前)。
女学校卒業後、大正初期である当時、偏見にさらされていた「女優」の道を選び、文芸協会付属の劇団に入団。2年足らずで準主役級となり、文芸協会付属劇団退団後、二十世紀劇場へと移籍し大女優へと飛躍を遂げました。

大好きなヒロインなので、肩入れしてる立場から見ると、作中での扱われようが、不遇に映ります。

関東大震災(大正12年・1923年)で被災し、下半身不随となり、女優としての活躍が約12年で幕を閉じることになったことは、その後、演出家への転身があったので良しとします。
が、髪色が手抜き、もとい、作画の手間が省けるベタなし頭のうえ、夫との間に子どもなしで終わったのが残念です。

わたしの好みは「子どものない、仲の良い夫婦」ではあるので矛盾した感情ですが・・・。

結局、年子の妹である忍が子ども(娘のみどり)を産み、その子が詩絵・忍姉妹の次代の「あすなろ坂」ヒロインとなり、作品テーマも受け継ぎ、物語のトリを飾りました。

詩絵さんが作品テーマを否定しちゃったのが良くなかったのしょうかねえ。

祖母の芙美から「あすなろ」の由来を聞いて答えていわく

檜じゃないのに檜になりたがるなんて愚かだわ。
あすなろはあすなろでいいじゃない。
その代り、「檜よりいい木だ」と自分で思い込めばいいのに。
(「あすなろ坂」第五部向日葵編・第二話より引用)(適宜漢字に直しています。)



それに、子孫の数を増やすと、話が広がり過ぎて収拾がつけにくくなる為なのか、有馬家のヒロインたちは、明治、大正の女性だというのに、子どもの数が少ないです(笑)。

初代ヒロイン芙美、一男一女(ちょいワケ有り)。
次代ヒロイン史織、子なし。
次代ヒーローの妻の珠絵、一男二女(但し、長男は12歳で死去)。
三代目ヒロインその1詩絵、子なし。
三代目ヒロインその2忍、一女。
四代目ヒロインみどり、子なし(最終話時点)。

彼女たちの生きた時代であれば、もう少し産んでてもいいと思うのですが、少なっ(笑)。
たぶん、お話を広げない工夫だと思います。

なので、三代目では、詩絵さんが「子なし」の役割をあてがわれたのでしょう。

詩絵さん語りはここまでにして、源宣匠さんにつっこみ!

◆源宣匠さん、あなた、仕事さぼって詩絵さんのアッシー(死語)&おっかけしてんじゃないですか?

源宣匠さんは昭和10年(1935年)4月10日、42歳で亡くなっています。
誕生日を迎えているものとして逆算すると、生年は明治26年(1893年)。
詩絵さんより2歳年上です。

二人の出会いは詩絵16歳(推測)の初舞台です。
祖母、芙美の知人、橋本運輸社長の代理で花束を届けにきたのが源宣匠でした。
年齢差を考慮すると、源宣匠は18歳。
この若年から推し量るに、おそらく橋本運輸でも下っ端だったのでしょう。だから、花束を届ける使いっぱしりの役目を仰せつかったのでしょう。

と、思いきや、初舞台のハプニングを乗り越えた詩絵に一目ぼれした源宣匠は、下っ端とは到底思えない行動に出ます。

真ん中最前列の切符を購入し、一か月に渡る興行中、毎日見に来たのです。

一か月間の切符代を賄えるほど稼いでいたのか?

そして、毎日観劇って、仕事はどうした。

当時の舞台劇興行については全然詳しくないのですが、夜の部の上演があり、橋本運輸終業後に通ったのだと解釈しましょう。
しかし、まだつっこみが。

源宣匠は詩絵の初舞台後も引き続き、彼女が出演する限り、最前列で毎日観劇し、さらには自動車で詩絵の送迎も買ってでたのです。

当時の自動車は高級品だぞ、社用車か、それとも自前の車か?

前者なら、社用車を私用に使ったことになるし、後者なら、自動車を買うだけの稼ぎがあったのか?

そして、仕事はどうした。

仕事との兼ね合いの点は、送迎を含めて、終業後でも間に合ったと解釈するとしても、さらにつっこみが。

若いのに橋本運輸の専務ですって。
(「あすなろ坂」第六部風花編・第一話より引用)



専務かよ!

仕事はどうした。

しかも、「専務」との情報が出た時点での年齢は、詩絵18歳、源宣匠20歳です。
(松井須磨子、島村抱月が文芸協会に在籍していることと、二人の醜聞が劇団内に知られていることから、大正2年(1913年)と推定しました。)

20歳で専務かよ!

橋本運輸の人事は型破りじゃのう!!
(同族会社ならありがちとはいえ、源宣匠は同族じゃない)

しかも、この推定20歳の時期に、橋本社長から鉄道部門を任されています。

よろしいのですか、社長さん。
毎日、詩絵さんの劇を見に通ってる人間にそんな大事な部門を任せて。
いや、そもそも専務に任命しといていいんか?。

さらにさらに、つっこみは続く。

同年、詩絵は恋人で脚本家の秋月精一郎と共に、文芸協会を脱会するのですが、そんな二人を受け入れたのが源宣匠でした。

完全な西洋風のどでかい劇場、「二十世紀劇場」をぶったてて。

わたし個人の資産で建てたんです。
(「あすなろ坂」第六部風花編・第一話より引用)



劇場建てるって、どんだけ金がかかると思てんねん!
切符代や自動車代の比じゃないぞ。
20歳だぞ、20歳!
いつの間にそんだけ稼いだんだ!?


大金持ちの息子ってわけじゃないのよ、源さんは。

源宣匠、外国人、みなしご。
子どもの頃から鉄道工事の日雇いをして、橋本運輸の社長に目をかけてもらい、学校へ通う。
(「あすなろ坂」第六部風花編・第二話より引用)
(「外国人」の箇所、原文は異なります。引用ルールから外れますが、検索避けです。)



この身上から推し量るに、橋本社長は源宣匠を学校に通わせたといっても、大学には進学させず、当時の中学まで通わせ、卒業後、自社に入社させ、専務に抜擢したってことかしら。だからといって、劇場建設費を賄えるほど金を儲けたのか?

いや、そもそも、身内でもないのに、20歳そこそこの人間を専務に抜擢って、橋本運輸は型破りじゃのう。

一目ぼれした女優の為に、上演中は、アッシー(死語)まで引き受けて観劇の為通いづめの男だけどな(笑)。

至れり尽くせりマヤのサポートをして、劇場の改修まで引き受けた「紫のばらの人」こと、速水真澄ですら、マヤが演じるお芝居が上演中、通いづめたりしてないぞ。ちゃんと仕事してたぞ。

以上、詩絵さんの夫、源宣匠さんて、この通り、つっこみどころ満載のお方です(笑)。

右目を黒髪で隠し、黒の上下のスーツ、黒マントで装った、「里中満智子が描くブラック・ジャック」(但し、白髪なし、傷なし)といった風情のかっこいい男性で、後々、運輸会社と製鉄会社の社長にもなる実業界の実力者なんですけどねw

◆詩絵さんにもつっこもう!

源宣匠が一目ぼれした詩絵さんですが、先に書いた通り、当時は脚本家の秋月精一郎と恋仲でした。

なのに、ずーーーーと、源宣匠にアッシー(死語)させ、薔薇の花束やら観劇やら劇場建立やら、上演の為のサポートやら、奉仕させっぱなしでした。

さすが大女優、奉仕させることにためらいがない。

源宣匠と結婚したきっかけも、恋人、秋月精一郎と妹、忍の為でした。
秋月精一郎が詩絵の妹の忍に心変わりした為、妹と元恋人が自分のことを気に病まず安心していっしょになるようにと願って、自分が幸せな様子を見せようと、てっとり早く、源宣匠との結婚を企んだのです。

いい性格しとるわ、さすが大女優。

なんだかんだ言って、結婚をとっかかりに、詩絵も源宣匠の人となりに触れて、愛情を抱き、互いに「愛してる」が口癖のラブラブ夫婦になりましたけどね(笑)。

何年アッシー(死語)してたのかしら、源宣匠さんは。

◆ちょっと真面目な疑問、その1。
詩絵さんと源宣匠さんは「法律婚」してたのか?

詩絵さんは日本人です。
源宣匠さんは外国人です。

ぐぐった結果なので違ってたらすみませんなのですが、当時の法律では、日本人女性が外国人男性と「結婚」した場合、夫の国籍になるそうです。

子どもを欲しがっていたから「事実婚」とは思えないけれど(当時の私生児差別を考慮すると)、女優としても演出家としても活躍していた詩絵さんが、国籍変更のリスクを負って「法律婚」したのか?との疑問もあります。

とはいえ、今、「国籍変更のリスク」と書いたけど、何がリスクかよくわかんないです。
たんに、わたしが「国籍を変更するって大変だなー、日本国内の中で『外国人』になってしまうって怖いなー」と、未知の物事に警戒心を抱いてるだけで、実際にはたいしたことないのかもしれないけれど。

◆ちょっと真面目な疑問、その2。
源宣匠さんに、選挙権はあったのか?

なかったんだろうな。
詩絵さんとの仲が、法律婚であれ、事実婚であれ、源宣匠さんが「外国籍」であることは変わらないのだから、普通選挙法施行後(1925年)も、選挙権はなかったんだろうな。
普選法が選挙権を認めるのは、「日本国籍を有する25歳以上の男子」だったのですから。

資産を充分に有し、運輸会社と製鉄会社の社長でもある実業界の実力者であっても、選挙権はなかったんだろうな。

関連エントリ:【「あすなろ坂」(里中満智子著)につっこみ!(その2)】

しかるにリウィアは初代皇帝アウグストゥスにふさわしい、偉大なる貴婦人であった。

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