2016年01月12日 (火) | Edit |


Part2  Octavian in the West(40B.C. to 39B.C.)

◆まずは「離縁されるリウィア」。

オクタウィアヌスの訪問を知らされていなかったので、リウィアは、いつもと変わらぬ態度で、夫の前に現われました。いつものように、従順で慎み深い、良き妻の見本のような態度で。

美しい。
クラウディウス・ネロは、改めて自分の妻は美しいと思いました。
なぜ、オクタウィアヌスは彼女に目をとめたんだ?
成り上がりにも関わらず、あやつは権力を持っている。
権力は、蛾が群がる灯りのように、女を引き寄せる。そして、オクタウィアヌスは権力を持っている。
一体全体、あやつは、一目会っただけのリウィアに、6年間、夫として一緒に暮らした自分にも見出せなかった何を見出したのだ?
ネロが盲目なのか。
オクタウィアヌスが欺かれたのか。
後者だ。後者に違いない。

「お呼びですか。あなた」
リウィアの問いにクラウディウス・ネロは離縁状を差し出しました。
「リウィア、お前を離縁する。宗教上の理由による。
シュビラの予言書に新たな一句が見つかった。荷物をまとめて、すぐにウェスタ神殿に向かいなさい」
衝撃のあまり沈黙に陥った彼女の外見からは、わずかに青ざめた顔色以外変化は見えません。
「子どもたちに会うことはできますか?」
「いかん。それは許さん」
「わたしのお腹にはもう一人子どもがいます」
「ああ、もうすぐ生まれるな」
「わたしに何が起きたのでしょう?持参金を返してくださいますか?」
「それはできん。部分的にも返せん」
「では、どうやって生活していけと?」
「お前がどう生活していこうと、もはや、わたしの知ったことではない。わたしに言えるのは、ウェスタ神殿に行けということだけだ」

突然の離婚の通告にどうしていいかわからず、部屋に戻ったとたん、リウィアは涙がこみ上げてきました。
追い討ちをかけるように、お腹の子どもが暴れだします。
「静かにしなさい!」と、思わず叫ぶと、なんとしたことでしょう。
まるで魔法のように、赤ん坊は暴れるのを止めました。
リウィアは考え始めました。

ネロはこれからの彼女の生活について何も保証してくれなかった。
けれど、彼女を、おぞましい結婚生活から解き放ってくれた神々が、彼女を再びご機嫌うかがいしかできない男との結婚や、餓え死に追い込むわけはない。
それにウェスタ神殿は、純潔の乙女たちの館だ。そこにいるのも長い期間ではあるまい。

そう考えると、リウィアは支度を整え、家を後にしました。
道の途中で、一人の召使女が待っており、ウェスタ神殿の中の一部屋に案内してくれました。
「お手洗いと浴室は廊下を下りた所です
ウェスタ聖女の皆様と同じ食卓につくことはできませんが、食事と飲み物はここにお持ちします。聖女長は、皆が利用しない時間帯の一時間だけ、庭を散策して良いと申しております。あなたは読書はお好きですか?」
「ええ、大好きですわ」
「どのような本がお好きですか?」
「ラテン語でもギリシア語でも、ウェスタ聖女にふさわしいものであれば何でも」
「何かご質問はありませんか?」
「ひとつだけ。わたしは浴室のお水を共有しなくてはなりませんの?」

ひとつだけと断った質問がこれって(笑)。
よっぽど、汚水に入った経験がこたえたのね・・・。

リウィアはウェスタ神殿での日々は、平穏に流れていきました。
妊娠中の女の滞在を快く思っていないことはわかっていたので、聖女たちとは顔を合わせないように、本を読んだり、庭を散歩したり、温かく清潔なお湯に入浴して過ごしました。
ウェスタ神殿は申し分のない所です。お手洗いは大理石でできており、浴場はエジプト産の花崗岩、食事は舌鼓を打ちたいほどです。
そんなある日、召使が一通の手紙を持ってきました。
オクタウィアヌスからでした。

「愛しいリウィアへ、喜びとともに。
ここに語る全ては、神君ユリウス・カエサルの息子からのものだ。
フラゲリエでお会いして以来、貴女を忘れたことはない。
醜聞と憎悪を避けて、貴女をネロから解放するのに時間を要した。
わたしは、わたしの解放奴隷のヘレヌスにシュビラの預言書を調べるように命じた。…」

この後、シュビラ預言書に発見された新しい詩についての言及が少々あって、詩が紹介されます。
まず、クラウディウス・ネロとリウィアを指すカップリングはローマを破滅に導くであろうと預言されていて、一方オクタウィアヌスとリウィアのカップリングならば次のようになるらしいです。
(オクタウィアヌスに言わせると、「カンパニアの薔薇のようだろう?」)

“The son of God , fair and gold hair
Must take as bride the mother of two
Black as night, of a foundered pair
Togther they will build Rome anew”

「金の髪持つ神の子は、
射干玉の夜の髪持つ、二児の母を花嫁となし、
新しきローマの創造者となる」

正直なところ、安っぽい手だと思いますが、民衆も貴族社会も、これで納得したのか??

詩を紹介し終えると、今後の婚礼の手順について書かれ、「愛を込めて」で、結ばれています。

読み終えたリウィアは不可解な行動をとります。
ドアをすり抜けると、廊下に誰もいないのを確かめ、溶鉱炉まで行くと、炎の中に手紙を投じたのです。

リウィア自身もなぜ?自分に問うています。
このあと、理由が述べられているのですが、「彼らはあえてオクタウィアヌスの手紙を盗み読むことはすまい。しかし、リウィアが背を向けたとたん盗み読むだろう」から、って、意味がよくわかりません。
どうやら、次の段落に出てくる「権力」がポイントらしい。
権力者の妻として、敵の手に渡ってはならない手紙を隠滅した、ということでいいのかな?

権力(Power)!彼はわたしに権力を与えてくれる。彼はわたしを求めている。彼はわたしを必要としている。彼はわたしと結婚するつもりだ!わたしたちは共に、新たなローマを創るのだ。シュビラの預言は真実を語っている。
もうすぐ、わたしは神君カエサルの息子の花嫁となる。わたしは、これ以上ない高み昇る。だから、彼のために、精一杯、力を尽くすのだ。彼が失脚する時、わたしも失脚するのだから。

リウィアが決意を固めたところで、次回は、Part2の結び「華燭」を紹介します。

◆続いて、PART2の結びとなる「華燭」です。

やっと結婚式です。
式にさきだって、リウィアはウェスタ聖女長(作中ではオクタウィアヌスの従妹となっています。異母姉の娘らしい)と会食していますが省略。(おそらく、アントニウスの遺言状強奪のための伏線です。この時、聖女長と親しくなったリウィアが、後々遺言状強奪に一役買うことになります)

ウェスタ聖女に支度を整えてもらい、リウィアは式に臨みました。
オクタウィアヌスは花婿の席で待っています。けれど、リウィアにわかるのは、彼のきらきらしい髪の輝きと、大きなシャンデリアを飾る100ものろうそくの光、式に臨む立会人の姿です。
ここに至って、リウィアは理解しました。
この結婚が、神前婚(コンファレアティオ)であることを。
彼は彼女と生涯を共にするつもりなのだ。通常の結婚のように、我らは別たれることはないのだと。

式が終わり、輿に乗って家まで運ばれるうちに、疲れがたまっていたのかリウィアは眠ってしまいました。
目が覚めて彼女は問います。
「何事?ここはどこ?」
「到着しました。ご主人様」女の声が答えます。
「一緒にお越し下さい。浴室の用意はできております。カエサルもやがてお越しになります。私は貴女様付き召使のチーフです。名をソフォニスバ(Sophonisba)と申します」
「お腹が空いたわ!」
「食事の仕度もできています。けれどまず入浴を」

婚礼の夜の第一声が「お腹が空いた!」
好きです。このセリフ。
リウィアは二人分食べなきゃならない体とはいえ(笑)。

まるで夢のよう、と、リウィアはうっとりしています。
彼女が案内された大きな部屋には、テーブルと二つの椅子があり、ボロボロのゴツゴツした寝椅子が三つ、隅に押し込まれていました。
椅子の一つにリウィアが腰かけると、オクタウィアヌスが部屋に入ってきました。
後ろには、料理を盛った皿、ナプキン、フィンガーボールとスプーンを運ぶ召使が従えています。

「わたしたちは田舎風に、食卓に座って食事をしょうと思う。」もう一つの椅子にかけながら、オクタウィアヌスは言いました。
「寝椅子を使ったら、貴女の眼を見ることができなくなる」
オクタウィアヌス自身の瞳が、灯りに照らされて、不気味な金色の輝きを帯びました。
「細い一筋の線の入った濃い青。なんと面白い!(“How amzing! ”って、アントニウスと同じ感想)」
手をのばして彼女の手をとり口づけました。
「貴女は空腹に違いない。さあ、お腹いっぱい食べたまえ」
「ああ、今日はわたしの人生で最も素晴らしい日のひとつだ!神前婚で貴女と結婚した。リウィア。もう貴女を逃しはしない」

聞きようによっては、ストーカーなみの不気味なセリフを吐いてくれていますが、リウィアが「わたしは逃げたりしませんわ」と応じているからいいか。

さて、「逃げたりしません」と言いつつ、リウィアは食事にも余念がありません。
ゆで卵や、オイルを垂らした白パンをつまみながら、まだ「お腹が空いてしかたない」と言ってます。
オクタウィアヌスは、そんなリウィアを、食事をする挙措さえも、申し分ないと、目を細めて見守っています。
手の形も完璧で、手入れされた先細の卵形の爪も、愛らしい。
彼女にふさわしいのは、とびきり極上の指輪だ。

「奇妙な婚礼の夜ですわ」
ようやく、一息ついたリウィアが言いました。
「わたしを寝室へお連れになりますの?カエサル」
オクタウィアヌスは恐ろしげに首を振りました。
「とんでもないことだ。貴女の為であるのと同様、わたしの為にもあってはならない。時間は十分にある。何年もね。貴女が最初にすることは、ネロの子供を産むことだ。そして体を回復させなさい。
貴女はいくつになった?ネロと結婚して何年になる?」
「二十一歳です、カエサル。ネロと結婚した時、わたしは十五でした」
「嫌なことだ。少女は十五で結婚すべきではない。十八が妥当だろう。
貴女が不幸であったことは疑問の余地はない。わたしと共にある限り、貴女が不幸になることはないと誓おう。貴女はこれから、愛と余暇に満ちた時を過ごすのだよ」

リウィアの顔が曇りました。
「わたしは既に余暇を持ち、厄介事ばかりでした。読書に書きものに、針仕事、機織り、何の意味もない!
わたしは仕事がしたいんです。意味のある仕事を!ネロの元には、わずかな女の召使しかいませんでした。
でも、ウェスタ神殿ではたくさんの女が働いていました。大工、漆喰塗り、瓦職人、れんが職人、医師。歯科医。聖女長の愛玩犬を診る獣医さえ女性です。
わたしは彼女たちがうらやましい!」
「その犬はおそらく雌犬だろうね」オクタウィアヌスは微笑みながら言いました。
「言いなおしますわ。貴婦人用の猫と犬です。
素晴らしい生活がウェスタ神殿では営まれています。誰しもが、働くことで価値を見出しています。
働かないなんて、わたしには何もない、何の価値もない。
あなたを愛していますわ、カエサル。けれど、あなたがいらっしゃらない時、わたしは何をすればいいの?」
「貴女が退屈することはないと約束しよう。
多くの女たちの中からなぜ貴女と結婚したと思う?貴女の眼を見た時、共にある同志の魂を見出したからだ。
わたしには、真にわたしの傍で助けてくれる者が必要だ。文字通り、人生を共にするほどの。
わたしには取り組む問題が多すぎて時間が足りない。寝床で共にある時も、わたしは貴女に相談しよう。女性の見解は男とは異なるもので、重要なものでもある。
貴女は教育もあり、高い知性も持っている。リウィア、わたしは貴女に仕事を頼んでいるのだよ」
リウィアの表情は喜びに変わりました。

この後、オクタウィアヌスは最初の仕事をリウィアに指示します。
家の内装を、”The First Man in Rome”に相応しいものにするようにと。

そして、オクタウィアヌスから高価な指輪と首飾りを贈られ、寝室に案内されたリウィアの喜びの言葉でPart2は終わります。

「まるでエリュシオンの野を漂っているよう。
あなたはわたしの為に、多くの困難とお金を費やしやしてくださいましたのね。
I looked at you and loved you, but now I know that every day that I am with you will see me love you more.」

“I looked”~は、「わたしはあなたを見て、あなたに恋しました」でよいと思うけど、その後がわかりづらいので、そのまま引用しました。
“but”で結ばれているから「けれど、わたしはこれから毎日、あなたと共にいて、あなたがより愛して下さっていることを知るでしょう」で、いいのかなあ?

PART2はこれで終わります。
ストックがなくなったので、以降は未定で。

しかるにリウィアは初代皇帝アウグストゥスにふさわしい、偉大なる貴婦人であった。

↓「日本ブログ村」に参加しています。記事がお気に召したらクリックを!励みになります。
にほんブログ村 歴史ブログへ にほんブログ村 漫画ブログへ
スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック