2016年05月02日 (月) | Edit |
(注意)ネタバレ有り。





「激甘ハネムーンは無人島で!?」
作者:桜井さくや
イラスト:成瀬山吹


ふっくらした体形と愛らしい微笑みで、いつもアンジュを癒やしてくれていた、年下の婚約者ラファエル。けれど彼は突然、ろくに理由も告げず船旅に出かけてしまう。二年後、ようやく戻ってきた彼は、別人のように逞しくなっていた! 二年間にいったい何が!?「港々に愛人がいる」という彼の噂が気になるも、ごまかすように押し倒されて、巧みな愛撫と激しい交わりでうやむやにされてしまう。昼夜を問わず熱烈に求められるたびに、疑心暗鬼になるアンジュだが……。
(公式作品紹介より引用)



ソーニャ文庫さんのいい所は、同ジャンルの他文庫に比べて、ガキっぽ・・・、もとい、子どもっぽくないタイトルを採用するとこだと思ってたのですが。。。

本作が「激甘ハネムーンは無人島で!?」、前月発売分の内一冊が「世界で一番危険なごちそう」(水月青著)、そして来月発売予定の内一冊が「陰謀は湯けむりのなかに(仮)」(春日部こみと著)
わたしは子どもっぽいタイトルで残念に思うのですが、もしかして、文庫コンセプト(※)修正とか、若い読者を開拓しようとしてるのか?
(しかし、「陰謀は湯けむりのなかに(仮)」は、一線を突破した感じがして、興味をそそられます(笑)。)

(※)ソーニャ文庫のコンセプト
「歪んだ愛は美しい」
「執着愛」



タイトルだけなら読む気にならなかったのですが、数少ない「年上ヒロイン&年下ヒーロー」ものであり、かつ、年齢歳も、1歳や2歳のケチ臭い差ではなく、まあまあよかろうと思える4歳差とのことなので読みました。
それに、好きな作品「執事の狂愛」と「闇に飼われた王子」の作者さんによるものですから。

◆本作の仮題は「年下狼のおかしな求愛」。
だから、もしかして、わたしお気に入りの「年上ヒロイン&年下ヒーロー」小説、「旦那さまの異常な愛情」(秋野真珠著)のマリスみたいな、ヒロインがからむことに関しては、常識を明後日の方角に置いてきた、暴走ヒーローかなあと想像してたんですが、すごく常識人でした。
うん、たぶん、常識人。ソーニャ文庫のヒーローのなかでは比較的常識人ってだけでなく、世間的に見ても常識人。
仮題の「おかしな求愛」も、わたしから見れば、全然「おかしな求愛」じゃなかったです。

本題は、「激甘ハネムーンは無人島で!?」なので、無人島エロスもの(例、ブルック・シールズ主演「青い珊瑚礁」)かと予想したけど、全然そんなこともなく。
終盤、沖合の島に流されて、そこで情熱的に愛し合う(お察しください)場面がありますが、この分量でタイトルに「無人島」と掲げるのは、「千葉にあっても東京ディズニーランド」みたいなもんじゃね?と。(追記.よく見たら、タイトルに「!?」マークがついてました。つまり、スポーツ新聞の見出しみたいなもん?)

ストーリーは単純で、「新婚さん甘々幸せ物語」
感想は、「謎の解明も展開も、容易に予想がついて、しかもほぼ予想通りで、物足りないストーリーなんだけど、読んで損したとか、がっかりしたとかの気持ちにはならず、なぜか好感を持ててしまう」。

なんでかなと考えてみて、悪役のレヴィを除いて、登場人物がみないい人だからかなと思いました。
そして、イラストが各キャラたち良さを上手に表現しています(後述)。

みな、いい人なんです。
ヒロインのアンジュも、ヒーローのラファエルも、ヒロイン弟のロイも、ヒロイン両親も、ヒーロー両親も、ラファエルの船仲間も。
こんないい人たちなんだから、わたしもいい人でなければならない!と思ってしまうくらい、いい人たち。

さらに、ラファエルとアンジュの関係が「支配するものとされるもの」にならなかったのも、好感情の原因かと思います。
このジャンルで、性関係を結んだヒロイン&ヒーローは、「ヒーローは支配者、ヒロインが被支配者」の意識に陥りがちですから。

◆本作のソーニャ成分を担うのは、悪役レヴィ氏。
ヒロインへの横恋慕男かと思ってたら、ラファエルにいろいろ複雑な劣等感も抱いていました。
一方で、悲惨な境遇からのし上がった努力家でもあります。

考えてみれば、レヴィをヒーローに据えた方が、ソーニャ文庫らしいんですよねえ。
ソーニャ・ヒーローにふさわしいレヴィを脇(悪役)に回して抜擢したヒーローなんですから、ラファエルにはもっと常識の枠を踏み破って、アンジュへの熱愛暴走を見せて欲しかったなあと思います。
「まっすぐで無邪気な分、勢いも人一倍あります」(あとがきより)とはいえ、マリス(先述)に比べるとかなり常識的な人物で、物足りないなあと思いました。
しかし、マリスに比べると、ものすごく感じのいい青年です(笑)。

◆悪役として影の薄いレヴィですが、レヴィとラファエルの関わりは、後述する同作者の「闇に飼われた王子」、ルカとカイルを連想しました。

◆ラファエルはヴァージン・ヒーローなのか。

「ヴァージンだった」とほのめかすやりとりはあるんですが、明記がないんだよなあ。
そこははっきり書かないけど、読者よ察しろってことなのかしら。
なんで明記しないのかな。経験済みのヒーローの方がいいと考える読者の為に、ヴァージンでない可能性を残す表記にとどめてるのかしら。

経験済みのヒーローの方がいいと考える女子読者もいるだろうって件についての関連エントリ:
【アンドレが童貞でないことを受け入れる女性読者の心理について】


酒場でのやりとりからは、99%「ヴァージンだった」と推定することが可能です。
でも、ラファエルの口からも、地の文にも明記がないので、残り1%の疑惑が。
浮気はしてないでしょうけれど、「練習」はしたんじゃないの?と。

問題は、やっぱ、世間的には、「女を娼婦と処女に分断すること」と「男が娼婦で経験すること」が是とされていて、本ジャンルもその考えを受け入れていることなんだよなあ。
だから、「ヴァージン(童貞)」と明記されるか、あるいは、公式で「童貞」ヒーローにカテゴライズされない限り、ヒーローの貞操に信を置けない。

追記.
公式で、「童貞」にカテゴライズされていました。
そうか、ヴァージン・ヒーローなのか。
はっきりしてよかったんですが、ヴァージン・ヒーローであるなら、マリス(先述)やカイル(「闇に飼われた王子」桜井さくや著)のように、高らかに「童貞宣言」して欲しかったな。

やたらに手馴れていたのは、多分、ゴードンさんと船仲間の教えだと思うので、説明があればねえ。下記のような感じで。
「僕は童貞だよ。アンジュ以外の女性となんて考えたこともない。
どうすればアンジュが喜んでくれるか、痛がったりせずにすむか、ゴードンさんはじめ、船仲間に聞いたんだ。みなの行為を見学させてもらったりもして勉強したんだ。」

潤滑剤を用いるくらい気遣いできるんだから、説明しろよ。

こういう説明をしないところが、ラファエルが常識人たるゆえんなんだろうなあ。
たぶん、常識人だからこういう説明をするのが、恥ずかしいんだと思う。


「旦那さまは年下狼!?」
作者:葉月エリカ
イラスト:芦原モカ


↑以前読みました。
処女と童貞が初体験をすませた後は、ひたすらやりまくってばっかり(しかも色々、いろいろ、いろいろ・・・)のうえ、わたし目線ではヒロインがアホすぎて、失礼ながら読み捨て作品となりました。

しかし、本作のラファエルに比べると、「ヴァージン・ヒーロー」として及第点だったなあと思い出しました。
しょっぱなは失敗。
ヒロイン以外の女など考えたこともない、だから、貞操を守っていたことも当然だと淡々と語る。
実践経験がないので、執事に聞いたり、本で読んだりして、勉強した。そして、その事をヒロインに告げる、等。

ヒロインの側も、相手が自分を想って未経験でいてくれたと知って、今までもこれからも互いがたった一人の相手である喜びをかみしめています。

初体験の後は発情期の猿さながらやりまくってましたし、ヒロインがアホすぎて、一読してもういいやと思いましたが、初めて結ばれる場面のヒロイン&ヒーローの心の動きはなかなか良かったなあと見直しました。

ヤリスギー・カップルのうえにアホ・ヒロインなんですが(我ながらしつこい)。

◆イラストについて。
わたしは絵心はなし、絵描きの技術も皆無なので、以下で、見当違いの感想を述べていたら、寛大に読み流してください(許せん!とお思いの場合は、穏当に指摘して下さい)。

(1) ワードアート・カラー

「王太子の運命の鞭」(秋野真珠著)の表紙絵の時も思ったのですが、EXCELのワードアート・カラーっぽくないですか?配色が。

「王太子の運命の鞭」は「夕焼け」あるいは「日暮れ」。
本作は「虹2」。

二作では判断しづらいので、イラストレーターさんのお名前をAmaoznでクリックして他のお仕事も拝見しました。
うーん、やっぱりカラーの配色に独特のセンスがおありのように見えるなあ。
見て不愉快な配色ではないので、印象が強いってことでは長所かと思います。

(2) 物語の魅力を倍増させるイラストだと思いました。
たんに作画が良いってだけでなく、場面選びがお上手です。

このジャンル、大事なキャラはヒロイン&ヒーローなので、イラストもその二人だけで占められるって場合が多いです。
それはそれで悪くないのですが、本作は、ヒロイン弟、ヒロイン父、悪役レヴィ(気絶体ですが)、船仲間、と、多彩な人物を描いています。
つまり、非エロ場面にも力を入れて描いておられます。

6歳の幼いラファエルが、ロイととともに、アンジュに添い寝してもらう場面。
娘のために精一杯背伸びして、ラファエルを問い詰める父の場面。
アンジュも同席して、酒場で船仲間と語り合う場面。

各キャラの「善良さ」が伝わってくることで、小説本体の魅力がアップしたと思います。

◆本作には好感を抱いていますが、「年下&ヴァージン・ヒーローもの」としては物足りなかったので、わたしが満足した一冊を紹介します。


作者:秋野真珠
イラスト:gamu


「旦那さまの異常な愛情」も、ストーリーは単調なのですが(ヒーローがヒロインを熱愛するあまりにずっと発情しっぱなし、行為におよびっぱなしで、最後の方でちょろっと正妃暗殺の陰謀に巻き込まれてフィナーレ)、ヒーローであるマリスのキャラが強烈でした。
ヒロインであるジャニスもわたし好みです。

関連エントリ:
【秋野真珠「旦那さまの異常な愛情」(その1)】
【秋野真珠「旦那さまの異常な愛情」(その2)】
【秋野真珠「旦那さまの異常な愛情」(その3)】







「闇に飼われた王子」
作者:桜井さくや
イラスト:涼河マコト


↑表紙絵を見て、縛りプレイがあるかと思ったけど、そんなプレイはなかったぜ(笑)!真面目に表紙絵への感想を語れば、カイルが「闇に飼われた」と同様、エマもまた闇に「縛られた」イメージを表してるのかなと思いました。

「今日も君が大好きだ!」幼い頃に一目惚れされて以来、王子カイルから何度も求愛されてきた子爵令嬢エマ。優しく朗らかな彼とゆっくり愛を育て、やがて心も体も結ばれる。だがその翌日から急に彼と会えなくなり、彼の放蕩三昧な噂まで耳にして…。1年ぶりに再会した彼は、享楽的で横暴―まるで別人のように変わってしまっていた。茫然自失のまま連れ込まれたカイルの自室でエマが見たものは、おぞましい真実だった―!?
(公式の「内容紹介」より引用)



内容紹介を拝見して読みたい気持ちはありました。
このあらすじならば、お互いに初恋で、かつ、ヴァージン同士で結ばれているだろうと想像できたので。
試し読みを拝見すれば、ヒーローによる、高らかな早漏、もとい、童貞宣言が(笑)。

(前略)私だって童貞なんだ。下手に決まっているじゃないか。だけど、今出来る最大限の努力を約束する!もし痛みが募っても、すぐに終わらせる自信があるんだ。(後略)



それでも読むことに少しためらいがあったのは、カイルが急に変貌し、放蕩三昧を繰り広げたとの点にありました。
この変貌の原因を、悪霊憑きとか呪いとか、とにかく、超常的な力により、本人の人格が変貌したのかと想像したので、ヴァージン(童貞)のままエマと結ばれたけれど、その後は、多数の女とやりまくりになったのかと、少々げんなりしました。

いやいやいや。
貞操堅固なヒーローが好きとはいえ、悪霊憑きとか呪いとか、本人にはどうしようもない事情により不貞を働いたことを断罪するほど、わたしは狭量じゃありません。
しかし、もしヒロインがそんな目に遭っていたら?
呪術の力で、あるいは悪霊の力で、何人もの男と交わったとしたら?

乙女系小説として成り立たないでしょうねえ。
いや、乙女系小説に限らず、リアルでも性被害者の女は、いかなる事情であっても、断罪される傾向にあります。「自衛が足りなかった」、「不注意であった」、挙句の果てには、「汚れた」、「疵物になった」と批難されて。

悪霊に憑かれ(あるいは呪術をかけられ)、他の女とやりまくりになったヒーローが、ヒロインの愛の力で元に戻る話かと想像したので、男ならご乱交は許される、でも女は不可抗力であっても許されない、そんなダブスタを見たくなかったので、ちょっと読む気になれなかったのです。

ところが、あとがきに目を通したら、ネタバレもネタバレ、「双子入れ替わり」のネタバレが書かれてあり、てことは、ヒーローは清い体(笑)のままだとわかり、購入を決めました。

ところで、不可抗力によって不貞に引きずり込まれたヒロインといえば、染殿の后がいますな。
祈祷僧に横恋慕され、鬼と化した彼に恋慕する呪術をかけられ、昼夜の別なく鬼と交わってしまったお后さま。
あのお話、后の顛末はどうなってたんだろう。正気に戻ったら戻ったで、周囲の視線が針のようにつきささってきただろうなあ。

◆双子の片割れ、ルカが可哀そうで、ヒロイン&ヒーローの恋がかすんでしまった印象です。

1年近く幽閉され、カイルもかなり苦しく辛い目に遭ったのですが、基本、エマとともに互いに、揺るぎない愛と信頼で結ばれていましたから。

それに比べてルカは闇の中で一人ぼっちでしたからね・・・。

◆おとんだよ、カイルのおとんだよ、おとんが諸悪の根源だよ。
「執事の狂愛」の父上には、さほど興味も関心も持たなかったのですが、本作のおとんには、否応なく注目する羽目に。いい意味ではなく、諸悪の根源の、クズ父として。

カイルの母上は、出産後亡くなったとのことですが、お産で弱った体に、精神の打撃が加わった結果ではないでしょうか。

1) 母の懇願で殺されずにすんだ双子の片割れであったが、宰相の進言により、一生暗闇の牢獄に鎖でつながれ幽閉となる。母上にすれば、自分が子の命を長らえさせたばっかりに、死ぬよりも辛い運命を課してしまったと強い悔いに苛まれたのでは。

2) そして、自分に一目ぼれした夫、相愛で結ばれた夫が、我が子への過酷な処置を斥けることなく受け入れたことへの失望。もはや絶望に近かったのでは。

「死に至る病」って知ってる?「絶望」ですよ。

おとん、クライマックス、ヒーローの危機に駆けつけて、その場を取り仕切って混乱を収束したけれど、遅すぎるわ!

この弱腰おとんが諸悪の根源だ。

◆ルカからエマへの一目ぼれを描く二部構成が好ましかったです。

物語の序盤で、5歳のルカが4歳のエマに一目ぼれしたことがさらっと語られます。
そして、終盤に再び、カイル視点でもう一度、最初よりも詳しく、彼がエマに恋した過程が描写されます。

いい意味で予想外で、うまいっと思いました。そして、すごくいいなと気持ちよくなりました。

気持ちよくなった理由、それは多分、「カイルがエマの内面に魅かれて恋に落ちた」と読み手(わたし)の前に示されたからでしょう。

カイルがエマを見初めたきっかけは、少年貴族たちにいたぶられ、崖に追い込まれた仔猫を助け、労っていたエマの優しさに触れたからでした。

ロマンスを主題とする作品で、恋のきっかけを一目ぼれとするのは、否定されることではありません。
一目ぼれが起きるような絶世の美男美女の物語を読むには楽しいですし、リアルであれ創作であれ、恋のきっかけが見てくれでも性格でも優劣はありません。

優劣はないんだけど、男女の恋愛の場にある、「女の子は可愛ければ頭からっぽでもいい。いや、頭からっぽでかつ外見が可愛い子が男に愛される」との有形無形の圧力が、喜ばしいこととは思えません。

A元康による「頭からっぽソング」という、適切な事例があったので、それへの批判をリンクします。
外部リンク:【「女の子」を愚弄した秋元康を<断罪>する  『glee』が私たちに教えてくれたこと】

外見なんてものは衰えるものです。
土台に恵まれていても、歳月とともに、衰えるものです。
和久井香菜子さん曰く、「どんなに若作りしたって、本当に若い人には勝てないんだから」。

人は誰でも年を取ります。老いるということは、美しさを失うということです。過剰に美しさにこだわるのは、失われていくものに追いすがり、勝てない戦を挑むようなものです。
だって、どんなに若作りしたって、本当に若い人には勝てないんだから。
【知恵と教養で逆境をのし上がれ!『夢の雫、黄金の鳥籠』】



どんなにがんばっても、衰えていく外見ではなく、努力によって培える、知性を含めた内面に、カイルは魅了されたことが、気持ち良さの理由だと思います。

◆主役二人が健やかな精神の持ち主で、読んでて気持ちよかったです。その反面、作中でのルカの結末に容赦なかったとこもいい。そして、あとがきで、ルカの今後について作者さんが希望の持てる方向で触れていてくださったのも嬉しかったです。

他、好きなとこを書くと・・・

(1) ルカが可哀そうですが、うまくいきすぎエンドにせす、ああいう育ちの人間としてはあり得る反応をとったこと(自由に生きていく術を知らない、自分から枷に囚われてることを望む)。

(2) カイルとエマに悪夢の後遺症を残しつつ、それでも二人でともに乗り越えていくだろう未来を予感させてくれたこと。

◆つっこみさせて。

カイルは、名付けもされないまま幽閉されていた双子の弟に「ルカ」の名を与えました。
命名「ルカ」の理由が・・・

カイルは少年をルカと呼ぶことにした。
我ながら気に入っている。カイルとは真逆の生き方をしてきたと考え、自身の名を逆さにして少し呼びやすく変えてみたのだ。



「カイル」を逆さから読んで「ルイカ」とし、発音しにくいから「ルカ」にしたのね。
英語で「Kyle」だと「Elyk」(発音がわかりません。「エリク」?)になります。
「カイル(KA・I・RU)」をひっくり返して「ルイカ(RU・I・KA)」って発想、日本語ですね。

王国ブラックウッドの公用語は日本語だったのか!?

お断り.
わたしの語学知識は、母国語である日本語と、学校で習った英語くらいです。
世界には多数の言語がありますので、「カイル」をひっくり返して「ルイカ」となる構造の他の言語があるかもしれませんが、自分の知識の範囲でしか語れませんのであしからず。

◆イラストについて。
好ましいと思える絵柄です。
本作は官能レーベルなので、エロシーンが10枚中4枚を占めているのですが、それ以外の物語の要所々々のイラストの印象が強かったです。

生意気申し上げてすみませんが、ベタなし頭同士なので、全裸で絡むと画面が白くなりがちで、体勢も含めて、エロシーンがちょっと単調だったように思います。
とはいえ、また拝見したいイラストレーターさんです。






「主人の愛執」
作者:富樫聖夜
イラスト:yos(よす)


女執事のティエラは、若くして当主となったヴァレオを支え、仕えることを生きがいとしていた。
幼い頃から一緒に育ち、姉弟のように仲が良い二人。
だがある日、「ヴァレオは愛人を執事にしている」と不名誉な噂を流されてしまう。
ヴァレオと引き離されることを恐れた彼女は、噂を打ち消すために、父に勧められた縁談を受けることに。
だがそれを知ったヴァレオは豹変し―!?
彼はティエラの理性と純潔を強引に奪い、快楽に沈めようとするのだが……。
(公式の内容紹介より引用)



ヒロインのキャラデザ買いです。

表紙絵ではさほど魅了されなかったのに、書店でパラ読みしたら、モノクロ・イラストのヒロインがドンピシャでわたし好みでした。
涼やかな切れ長の目、小さくひきしまった唇、何よりも、きりっとした大人な雰囲気。
このジャンルのヒロインは基本的に「愛らしい」系、「カワイイ」系ですもんね。

大人の雰囲気にふさわしく、かつ、執事職にふさわしく、首まで覆う燕尾服姿のストイックな魅力。
そして、前髪を片側にはらりと垂らした、結い上げたまとめ髪。

大人の雰囲気とまとめ髪にハートを射抜かれたのかもしれない、わたしは。
このジャンルのヒロインは基本的に長髪を垂らしてますもんね。

官能シーンでも髪は結い上げたままなのですよ。それが倒錯的で色っぽかったこと。
このジャンルで、もっとエロいイラストを見たこともありますが、本作の結い上げた髪のままの情事が一番エロティックに感じました。

終盤、身分差を乗り越えて結婚にこぎつけ、二人そろって女王陛下に挨拶にまかりこす場面があり、そこでのヒロインは、燕尾服ではなく当然ドレス姿で、少し可愛らしい感じに描かれていたのは残念でした。

ドレスはいいんだ。ドレスになっても、首まで覆うストイックな雰囲気を壊さないドレスだったし。
だけど、大人な雰囲気が削がれて、幼く見えるようになったのは残念です。

◆ヒロインのキャラデザばっかり誉めましたが、イラスト自体も好ましかったです。
トーン多めにも関わらず、「トーンだらけ」な印象にはならず、仕上がりがきちっとしてて、そこが良かったです。

◆小説本体について。

いつもと逆ですな。
いつもは小説本体の感想の後にイラストについて書いているのに。
いつもは、あくまでも本体は小説、そして、ラノベはイラストも大事な要素なので、後者の感想も書くことにしています。

今回、実際に読んでみたら、小説本体はヒロインのキャラデザほどには、ひかれるところがなかったので後回しにしました(わたしの感想です)。

ヒロインがキャラデザほどにはストイックでも気丈でもなかったのは仕方ない。
ジャンルがジャンルなんですから、ヒロインが流され系になり、かつ、性的快楽に弱い傾向があるのは織り込み済みです。残念だけど、ざ~んねんだけど仕方ない。
ものすご~く、期待外れで残念だったけど、腹が立って本を投げ飛ばしたくなるほどの残念さではないので、まあいいです。

なので、ヒロインの造形は脇に置くとしても、読み終えて、なんかこう、ちょっと寂れたドライブインのハンバーグ定食を食べた気分になりました
不味い(下手)と言いたいんじゃありません。
ちょっと寂れたドライブインであっても、ハンバーグ定食はそこそこ美味しいものです。商売ですから、衛生管理も味付けも調理もちゃんとしてますし。
同様に、キャラもプロットも展開もしっかりしている。つまらなくはない。
しかし、しかし、しかし、「読んで損した」との腹立たしさもないけれど、「読んでよかった」との高揚もない。

ヒロイン画は何度も、いつまでも眺めていたいけれど、小説本体にはそそられない。

一応山場とも言える場面はあったんですが(多分、ヒロインの危機とヒロインの出生の秘密)、あまり盛り上がりを感じず。
各キャラを作り込んでらっしゃることは読み取れるのですが、特に印象に残らず。
お話の展開を、ちゃんと作り上げてらっしゃるなあとは思うのですが、好きとか嫌いとか感情を揺さぶられない。
ひどい場面(善良な第三者に行為を見せつける)もあったのに、さほど腹も立たず。
せっかくの年下ヒーローなのに、年齢差に伴うヒーロー側からの焦り等、年下らしさも皆無なのに、不満を覚えるほどの感情の揺さぶりもなく。

だからといって、つまんないと切り捨てるほどのものでもなく、むしろ、きちんと作ってらっしゃると思えるし、結局のところ、ちょっと寂れたドライブインのハンバーグ定食のような読後感でした。

感想を書きたいとの気持ちの源は、ヒロインのキャラデザにつきます。




「皇帝に略奪された花嫁」
作者:吉田行(よしだ・あん)
イラスト:渋矢しかご


※ ソーニャ文庫ではありません。

いつもは公式による作品紹介を引用してるんですが、なんか、むちゃバカっぽ・・・、もとい、ガキっぽい紹介文なので本作はなしで。

あらすじはタイトル通りです。
花嫁ユリアは、結婚式の場から、皇帝ルキシウスに略奪され、昼夜問わず寵愛される内に、肉体も心も皇帝に魅かれていく展開に、宮廷内部の陰謀と、夫になるはずだった当て馬男マリウスが絡んできます。

乙女系では珍しく、わたしの大好きな古代ローマ風の舞台設定なので読みました!
このジャンル、中華風、西洋風、和風、シーク風ですからな。
余談ながら、古代エジプト風も見かけたことがあります。

本作を一読した印象は、

(1)ヒロインの名がリウィアでなくてよかった!
(2)やりまくってばかりだったなあ・・・。

◆皇帝の名が「ルキシウス」。
他は、ユリア、マリウス、カエキリアと古代ローマ人名辞典にも載ってる名なのに、皇帝は辞典にもない「ルキシウス」。

本作では、文字数が長い名前ほど身分が高い(※)ことと、後書きで「テルマエ・ロマエ」に触れてらっしゃるので、「テルマエ・ロマエ」の主人公「ルシウス」にちなみ、5文字に増やして「ルキシウス」になさったのかなと想像しています。

(※)参考までに作中の登場人物名と身分。
皇太后 カエキリア
皇帝 ルキシウス
平民ヒロイン ユリア
平民当て馬 マリウス
宦官奴隷 ヤニス
踊り子 ドニ

追記1.
「ルシウス」あるいは「ルキウス」に似た名で5文字であれば、「ルキリウス」という人名があります。

追記2.
古代ローマは我が守備範囲ではあるんですが、知識に万全なし。
わたしが知らないだけで、古代ローマに「ルキシウス」が存在するのであれば、指摘をお願いします。

◆素でカエソニアと読んでたよ。

悪役皇太后の名は「カエキリア」なんですが、ずっと、「カエソニア」と読んでました。
だって、悪役で皇太后で、「カエ××ア」であれば、カエソニアと読んでしまいますがな。

◆皇帝ルキシウスの可哀そうな過去とか、皇太后カエキリアを中心とした陰謀とか、あて馬男がヒロインを奪還に来て、皇帝と剣闘士試合をするとか、いろいろあったんだけど、やりまくってばっかりだった印象が。
官能レーベルだから別にいいんだけど、胸やけしました。

「スパルタカス・クィーン」というDVDがありまして、タイトルとパッケージと紹介文から、たぶんエロティック路線だと推測でき、その点を呑込んで古代ローマものだからとレンタルして視聴したら、予想以上にエロエロエロ。やりまくってる場面ばっかり。主役夫婦が情を交わしている最中に敵が踏み込んできてのラストだったのには変な笑いが出ました。

ん、まあ、この小説もそんな印象でした。

◆作者さんが後書きで言及しておられる古代ローマの皇帝は誰だ!?
解答は全て反転仕様です。

(1) 本当に剣闘士として闘技場で戦った。
【反転開始】コンモドゥス。【反転終了】
(2) 暴虐の限りを尽くしたあげく暗殺された。
【反転開始】軍人皇帝時代なら暗殺だらけですが、暴虐の限りを尽くしたメジャーどころと言えばカリギュラでしょう。作中の花嫁略奪のエピもカリギュラかな?【反転終了】
(3) ローマの繁栄の礎となった名君。
【反転開始】アウグストゥス。名君は何人かいるけど、「繁栄の礎」なので。【反転終了】

◆二つばかり興味深いなと思った設定や展開があります。

(1) ヤニスが宦官奴隷であり、踊り子ドニはそれを受け入れたうえで恋人同士であること。
主役二人よりこのカプの方が気になるわ(笑)。
下衆な好奇心ではなくて(性愛はどうしてるの?とかでなく)。

奴隷の身分から解放されたので、所帯をもって、養子を迎えると幸せそうに今後の計画を話していました。
「天は赤い河のほとり」(篠原千絵著)のナキアとウルヒの二人も、こういう人生をつかんで欲しかったな(そうなってたら、「天河」はなかったんですが)。

(2) 当て馬男マリウスは、ユリアを奪還せんと追いかけてきましたが、宮廷陰謀に加担し、娼婦で脱童貞を果たした後はヤリマクリーくんになりました。

当て馬が立派過ぎると、キャラの魅力の力関係が崩れるので(ヒーローより魅力的になっちゃいけないもんね)、これぐらい安っぽい野郎でちょうどいいんでしょうが、なんとなく「娼婦で脱童貞」って、「愛あるセックス」を重んじる女性の為の創作ジャンルでは、「悪」なんだなあと思って。


しかし、一方で、「ヒロインの為に、他の女を踏みつけにする」ことを是とする考え方もあります(わたしは同意しません)。

他の女と肉体関係を結んでも、そこに心がなければ、気にならないどころか「いい経験」くらいな扱いなのが少女漫画なのだ。詳しくは別の漫画で解説するが、主人公以外の女をどんなにおざなりにしても許されるのである。
(和久井香菜子【少女漫画に学ぶ[ヲトメ心とレンアイ学]2 『ベルサイユのばら』編~その2】より引用)



皇帝ルキシウスは、肉親の愛に飢えた過去体験ゆえに、愛する女はひとりだけと決めていたらしいんですが、それにしちゃ、しょっぱなから手馴れていて、あ、これは、練習用の女とは経験済みだなと。

和久井さんは、「主人公以外の女をどんなにおざなりにしても許される」とおっしゃってますが、当て馬の娼婦による脱童貞は明記するのに、ヒーロー側はうやむやであるところを見ると、それなりに憚りがあるかと思いました。

◆イラストについて。
表紙絵を見たら、ヒロイン&ヒーローともに地味な顔立ちで、かつ、カラー塗りも地味なのであまり期待しなかったのですが、モノクロ絵は魅力倍増です。

構図を工夫したり、細部をきちんと描き込んだり、背景もちゃんとしてて、きちんといいお仕事をしてらっしゃると好感を持てました。
強弱のある線使いも良いです。

ベタなし頭同士のベッドシーンなのに、まっしろ単調にならないよう描いてらっしゃるところも良い。

しかるにリウィアは初代皇帝アウグストゥスにふさわしい、偉大なる貴婦人であった。

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