2016年08月05日 (金) | Edit |
   

Kindle版「佐伯かよのSF短編集」全三巻を読む機会を得ました。
参考までに、各巻の収録作品を記載します(←本作に限らず、売る側は収録作品を買い手にわかり易く公開した方がいいと思う)。

1巻
「アリスの13時間」
「紅いラプンツェル」
「黄泉からの声」

2巻
「地球最後の男の話」
「黒い聖夜」
「ジムニイの箱」
「割れたカップ」

3巻
「炎の伝説」
「もしも・・・・」
「午後5時1分前・・・!」
「迷路」

どれも読みでがありましたが、良くも悪くもびっくりした一作、「アリスの13時間」について語ります。

何にびっくりしたかと言いますと、

ヒロインが何もしない、できない、役立たず。
とことん役立たず。
少女まんがって「成長」が主題でもあるのに、まったく成長なし。変化なし。役立たずのまま終わりました。


この世に生まれて××年、わたしのまんが読書歴は長いのですが、こんな役立たずヒロインは、女の子が添え物になりがちな少年まんがでも見たことがないです。

いきなり「役立たず」と言っても、ブログ読者には何のことやらわからないと思いますので、あらすじから説明します。

本作は、パニックもの(災害や大惨事など突然の異常事態に立ち向かう人々を描く(日本語wiki「パニック映画」参照))の一種かと思います。
「一種」と断った理由は、参考にした日本語wikiからは、パニックものは、動的、攻撃的な印象を受けたからです。
本作は、極限的な危機に見舞われた人間が、生き伸びる為に知恵と勇気を振り絞るお話ですが、静的、受動的なトーンで終始しています。

前振りはこれくらいにして、簡潔に説明すると、
(1) 飛行機が墜落しました。
(2) 7人が生き残りました。墜落した先の島はサブ島と言いました。
(3) ラジオが生きていたので、ニュースを聞き、自分たちが捜索されていることがわかり一安心、と、思ったら、「A国が太平洋上のサブ島において、原爆実験を行うことを発表しました」。
(4) 実験は本日午後7時。今は午前6時。残された時間は13時間。それまでに、この窮地を脱する方法を考え、実行しなければならない!

登場人物(墜落から生き残った7人)
1.アリス・ジョフリン(白人) タイトルにもなってるので多分ヒロイン
2.マイク・ハーレー(白人) 工科大学の学生。ヒーロー。
3.ジョニー・パーク軍曹(白人)(男) 悪役
4.少佐(黒人)
5.社長(男)(白人)
6.7.未亡人と赤ちゃん(ともに白人)(赤ちゃんの性別は不明)

※外見だけで白人、黒人と判断できないので、トーンを貼った肌、トーン無し肌と書くべきかと思いますが、外国人(欧米人)をキャラとした作品なので、まんがの文法上、本作のトーン無しは白人、トーン肌は黒人と判断しました。



「窮地を脱する方法を考え、実行しなければならない」と書きましたが、考え、実行したのは、少佐とマイクだけです。

タイトルに名が挙がっているヒロイン、アリスは何もしません。
いや、何もしないは不正確だな。
彼女がしたことと言えば、

(1) 原爆実験の報を聞き、悲鳴を上げ、マイクに慰められる。
「いやよ、いや。パパ、ママ、助けて。私はここにいるの。ここにいるのよう」

・・・この件はしかたないと思います。
いきなりこんな状況になって気丈に振る舞えるこは少ないでしょう。

ただ、ヒロインなのにそこからまったく成長しないし、どっこも変化もない。

(2) 海に堕ちた飛行機まで非常用のボートをとりにいく、少佐と軍曹を見守る。

・・・この時も、何もできなかったのはしかたないです。
他の4人も見守るだけしかできなかったし。

なお、少佐はこの時鮫に襲われて死亡。
軍曹は少佐を見捨てて生き延びます。
当然、ボートも持ち帰れない。

(3) マイク、操縦室になる通信機を直して外部に通信しようとする。
アリスは別になにしません。

(4) 弱々しく泣く赤ちゃんの為に、アリス、食べ物を探しに行く。
しかし、軍曹に襲われる(悲鳴を聞いて駆け付けたマイクに助けられ、未遂)。

(5) 海から原住民らしき人たちが小さい電動ボートでやってきた。
軍曹は彼らを殺し、ボートを奪取。
軍曹、ボートが小さいので自分一人だけで脱出する気であったが、金ならいくらでも出すと言う社長の同乗を許す。
ついでに、「色気がないのも寂しい」からと、アリスに同乗を促す。
アリス、きっぱり断り、母子の同乗を頼む。
しかし、軍曹が引き受けるはずもなく、それどころか、行きがけの駄賃とばかりにマイクに向けて発砲する。未亡人、マイクをかばって死亡。
「あなたが死ねば、この子が助かる望みもなくなりますもの・・・」
「どうぞ、この子を、この子を・・・、助けて・・・」

軍曹一行は、海へ漕ぎ出したものの、バランスを崩したボートがひっくり返り、海に投げだされて鮫に襲われています。おそらく死亡でしょう。

(6) 残された時間はあと30分。アリス、絶望し入水自殺を図るも、マイクに叱咤され、生きる望みを取り戻す。

(7) 通信機が直り、マイク、生存報告を発信する。
マイクとともに、「その時」を待つアリス。
午後7時。何事もおこらなかった。
マイクとともに、生きている喜びをかみしめるアリス。


(5)の場面で、同乗を断り、言わば「生存できる可能性」を母子に譲ろうとした点は「立派」だと思います。

しかし、印象としては、アリス、何もやってねえええええええ。

「ヒーローを励ます」とか、「ヒーローに窮地脱出のヒントをもたらす」ことすらしていない。
いらんやん、こんなヒロイン、いらんやん。

この7人の内、役に立ってるのは、少佐とマイクだけです。

アリスの役立たずっぷりに腹が立つとか以前に、等身大のゴキブリが買い物かごを持って商店街を歩いている光景を見た気分です。
自分でもこのたとえでは意味がわからんのですが、ありえなさすぎるヒロイン像で、わけわかりません。

佐伯かよのさんて、自立した女性キャラを動かす方だと思ってたので余計にわけわかりません。

ぐぐったところ、本作は1978年(昭和53年)の作品であるとのこと。
その頃は、こういう役立たず女でも、ヒロインになれた時代だったんですかねえ?
「何もしない、何もできないヒロインがヒーローに助けてもらう」お話が、受け入れられていた時代だったんですかねえ?

まあ、アリスは「いいこ」です。
わたしが、能動的、積極的に自分で考え、動くヒロインに慣れ過ぎていて、アリスみたいな「何もしない、何もできない、ただヒーローに助けてもらうだけのいいこ」がヒロインとなることを、まっーーーたく理解できないのでしょう。

しかし、1978年て、とうに、「ベルサイユのばら」はヒットし、美内すずえさんは「ガラスの仮面」を連載中で、それ以前には「白百合の騎士」を発表し、和田慎二さんが描く「スケ番刑事」こと麻宮サキが人気を得ていた頃でもあったんですがねえ。。。

しかるにリウィアは初代皇帝アウグストゥスにふさわしい、偉大なる貴婦人であった。

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