2016年09月16日 (金) | Edit |
当初は「家事メン」と題していたのですが、まんがの中で家事スキルの有無って、ヒーローどころかヒロインでも、判断できるほどに描かれてないことが多いので、料理スキルに絞りました。


「銀盤のプリンセス」
作者:パトリシア・ポッター
翻訳:杉本ユミ
まんが:秋乃ななみ
原題:2003年”Cassidy and the Princess”


「プリンセス」と呼ばれるほど人気のフィギュアスケート選手マリスはある夜、連続殺人犯に襲われる。間一髪で助かったが、犯人を目撃したため命を狙われることに。
そんな彼女を守るため、敏腕刑事マッケイが立ちあがった。彼は警備のためマリスを自宅にかくまうが、守りたいという気持ちがやがて恋へと変わり…。
(公式紹介文より引用)



「料理スキルに絞りました」と書いたそばからなんですが、わたしが読んだハーレクイン・コミックスでは、唯一最高の「家事メン」が登場します。
ただし、ヒーローではなく、ほぼモブの人物です。
ヒロインのガードにつく警官の一人で、小腹が空いたヒロインの為に、ちゃちゃっと料理をして食事を出しました。
「手際がいいのね」と誉められて答えて曰く、

「共働きだからね。家事は折半なんだ」



これだよー!
家事ってのは毎日のことです。
ハレではなく、ケです。
毎日々々、こなして当たり前、特に賞賛されるものでなし、だけど、さぼると日常の快適さがあっという間に下がってしまう。だから、毎日々々、こなしていかなければならない。

「お手伝い」の精神ではなく、当事者として「家事を折半」できる男、こういう男がのぞましい。


「恋の契約と億万長者」
作者:ファン・マイケルズ
訳者:不明
まんが:秋乃ななみ
原題:1981年”Beyond Tomorrow”


母と不動産屋を営むカーリーの前に客として訪れたのは、気品あふれる男性アダム。
名家の御曹子にしてやり手の弁護士の彼が探しているのは、理想の家庭を築けるような、あたたかく旧い家だった。
一緒に家を探すことになる二人だが、アダムの透き通った碧い瞳とその奥にあるぬくもりに、カーリーはどうしようもなく魅かれ始めて・・・。
(公式紹介文より引用)



紹介文では触れてないけれど、ヒーローであるアダムは「料理が出来る男」です。
しかも、副業でレストランを経営していて、弁護士業が休みの日には、シェフとなって自ら厨房に立つという。

・・・違うんだ。
わたしが求めている「クッキング・ヒーロー」は、そんな副業でシェフやってますってレベルじゃないいんだーーー。
先述のモブ男みたいに、日常生活のなかで「家事は折半」を実行できるレベルでいいんだ、と、なんとなく敬遠したくなるヒーローでした。

おまけに、ライバル女は安っぽいし、ライバル男の立位置が少々間抜けだしで、なんとなく、作品自体も安っぽいなあと思えたのですが、おつりがくるくらいのプラス要素がありました。

それは、「ヒロインは料理がからきしダメであるが、そのことを全然恥じていない設定」です。
「料理ができないヒロイン」だけであれば、わたしは加点しませんでした。
「料理ができない。そして、そのことを恥じていないヒロイン」だからこそ、加点しました。
(接続詞は意識して、「だけど」ではなく、「そして」を用いました。女が「料理ができない」ことを恥じる必要はないと思うからです。)

次に引用するのは、不動産業のカーリーが、ピックアップした物件にアダムを案内した時の会話です。

キッチンに案内して。
「もう少し広さが欲しいな。最新式の設備を入れたいんだ。
僕は料理をやるもんだから」
「ほんとに?すごいわ!
あなたと結婚する女性は幸せね。うちは母もわたしも料理はからきしで。使うのは電子レンジくらいよ」
「温め直し専門?」
「子どもの頃から“オフクロの味”は冷凍食品だったわ」
(大文字強調はわたしによります。)



この時点では、不動産屋と客の関係とはいえ、母親から焚き付けられており、すこーしロマンスを期待する気持ちも持っていたのに、「料理ができない」、しかも「母娘二代の筋金入りの不出来」であることを口にするなんて。

女と結婚と料理ってのは根深い問題でしてな。
「料理は女がするもんだ」との決めつけが根強い為、そこから、「料理出来ない女は駄目な女」と、人間性の否定にまでつながることがあるのですから。

(TVはあんまり見ないので、Twitterで知った番組ですが、TBSの「噂の東京マガジン」て番組で、「若い女の子に料理を作らせて、出来ないありさまを、主におっさんたちが嗤うコーナー」があるとのこと。「料理の出来なさ」をあげつらうならば、おっさんたちこそターゲットとしてふさわしいでしょうに。)

ネットしてると、婚活サイトであるオーネットの広告が時々表示されるのですが、以前流していた男性向けと思しき広告では、「今夜もコンビニ飯、嫁さん欲しいなあ」とぼやく男キャラもので、「飯を作るのは女」、「嫁さんをもらって、飯を作ってもらおう」との意識が露骨でした。

「惰弱者!めしぐらい自分で作れい!!」と毒づいたのはわたしだけではなかったようで、今は見当たらなくなりましたが、不評を受けて改善された(?)と思われるその後のヴァージョンは、
「離婚して1年 38歳 趣味は料理」

「趣味」かよ!

料理って何が大変かって、毎日毎日、作り続けることが大変なのだ。冷蔵庫に何があるから、どういうものを作ればいいのかとか、味付け、栄養が偏らないようにしなければ・・・などなど。
(和久井香菜子「少女マンガで読み解く乙女心のツボ」より引用)



料理を「趣味」にできる人はいいね(皮肉)。

なんか、だんだん脱線してきました。
とにかく、「料理は女がするもんだ」との決めつけが根強い為、恋愛市場、婚活市場では、女性が「料理上手」をアピールするのは戦術上当然でしょう。

しかるに、カーリーは、アピールどころか「母娘二代で料理が苦手」と率直に口にしている。母まで料理が出来ないなんて、普通の婚活市場では、評価駄々下がり要素でしょうに。

そして、カーリーは「彼の為に料理上手にならなくっちゃ!」とは微塵も考えず、料理下手の自分のままでいます。
物語自体も、カーリーの料理下手をいじくったりしていません。

いろいろあって、プロポーズと受諾の場面で終わりまして、読者の前に見せられる、「未来図」は、「妻と子どもたちに手料理を振る舞う夫」であり、「夫の手料理をテーブルで待つ妻」でした。

「料理ができない。そして、そのことを恥じていないヒロイン」であった点が大好きです。

そして、この物語のよさは、単に世間的な決めつけの男女逆転(料理のできない女&料理のできる男)を為した事ではなく、「料理のスキルが女の人格と結び付けられていない」世界を見せてくれた事です。
先に紹介したTV番組のコーナーが成り立つのも、世間では、女の人格と料理スルキが結びつけられており、「料理が出来ない女=格下の女」、だから、いじっていい、バカにしていい、嗤っていいと思われているからでしょう。

「料理のスキルが女の人格と結び付けられていない」世界、それは、こんなに心地良く、ラクなものであったのかと、改めて、「料理スキルと女の人格を結び付けて、料理下手な女をこきおろす」現実世界の酷さに憤りを感じました。

こういう設定であれば、2000年以降の作品なんだろうなあと思ったら、なんと1981年作でした。

◆カーリーが、「オフクロの味は冷凍食品」であった点について、全然恨みがましさや残念さを抱いていない様子であるのも好ましいです。

日本では、「料理スキルと女の人格を結びつける」思考を反映して、
「子どもに手間暇かけた愛情料理を作ってやれないのはダメな母だ」、「冷凍食品ばかりを子どもに与えるなんて母親失格」等の決めつけが強いですから。

◆他に、思い当る「ハーレクイン・コミックのクッキング・ヒーロー」たち。
めんどくなったので、漫画家さんの名前とタイトルのみで。

原ちえこ作画「すいれんの咲く庭で」
ヒロインが朝起きたら、ヒーローが朝食を作り終えてテーブルにセッティングしていました。
「一人暮らしが長いから」らしいです。

秋乃ななみ作画「昼さがりの誘惑」
離婚した元夫婦の復縁もの。
結婚していた間は料理しなかった夫が、再会したら、料理をするようになってた話もありました。

さいとうちほ作画「青い悪魔のセレナーデ」
出張帰りで疲れて眠ってしまったヒロインの為に、ヒーローは朝食を作って帰りました。

藤原基央作画「甘美すぎる復讐」
ヒロインより先に起きて、ヒーローは朝食を作りました。

他にもあるでしょうけれど、一応これくらいで。
結婚後、「料理も家事も嫁さんの仕事、俺は関係ない」との思考に染まらないように祈ります。

外部リンク:【妖怪男ウォッチ「女たちはもっとカジュアルに「家事離婚」すればいいよ」】
こちらで紹介されている例は、どちらも「ひどい男!」との憤りを呼びやすい、わかり易い例ですが、もっと地味でも穏当でも、家事は他人事感覚の男性っています。奥さんが病気で寝てるとこを起こして、「僕の食事は?」と催促したりね。。。

◆「使った食器を棚にしまうまでが料理です」。

男の口から、「趣味は料理」なんて聞くと、ちゃんと食器洗ってしまうとこまで考えてるのかな、実行してるのかなと疑ってしまいます。

今回紹介したクッキング・ヒーローたち、料理はできてたけど、洗いものはしたのかな。食器はしまったのかな。

ハーレクイン・コミックではないけれど、獸木野生さんの「パーム・シリーズ」で、ジェームス他、男性陣が、みんなで食べた後の食器をちゃんと洗ってたのは高ポイントです。それに、男三人と女一人の同居生活ですが、女一人に家事を押しつけてません。

書き添えておくと、男性であれ、女性であれ、向き不向きはあります。
だから、
「僕は献立を考えるのも料理好きだ。だから僕が担当する」
「わたしは献立を考えるのも料理するのも苦手だわ。でも洗い物は大好きなの」
と、互いに「分担する」ことを批難してません。

「趣味・料理」の立場で、台所も相手の家事手順も自分本位に引っ掻き回して、自己満足だけに浸ることを批難しています。

◆レーヌスさんのところで、まんがにおける料理する男のエントリがアップされました。参考になるうえ、読み物としても楽しいのでリンクを貼っときます。

外部リンク:「レーヌスのさざめき」内「料理する男キャラあれこれ」

しかるにリウィアは初代皇帝アウグストゥスにふさわしい、偉大なる貴婦人であった。

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知人の話
 まんがばなしでなくて恐縮ですが。
 私の母の友達の、私と同年代の娘さんの話です。結婚紹介所に登録する際に「趣味」という欄があり、そこに「ゴルフ、ドライブ」と書いたら、「そういうのは男性の書くこと」と却下されて、「料理はなさいますか?」「レジピを集めるのは好きです」--で、「料理」にされてしまったとか。その人は、同僚が上司にゴルフに誘われた時にまで一緒についていってしまうくらいゴルフが好きなのに。こうまで、女のすること、男のすること、という色眼鏡があるのはけしからんですな。これももう10数年はまえのことですが。

 まんがキャラと料理という話題ではいくつか思い浮かぶのですが、自分のところで書きますね。
2016/09/19(Mon) 15:47 | URL  | レーヌス #t1rTeCTA[ 編集]
Re: 知人の話
>レーヌスさま

身近な実話をありがとうございます。
十数年前のことで、過去話になってれば、笑い話にもなるのですが、現代でもありそうですね。
恋愛と違って、条件から始まる結婚紹介所ですから、昔も今もしかたないでしょうけれど。
あるいは、こういう婚活に参加するからには、昔ながらの男女の役割分担を受け入れることが大大大前提なのかしら。

ところで、もしかすると現代なら、ほんの少し進歩してて、やみくもに「ゴルフ・ドライブ」は却下させず、「もうちょっと女らしい趣味も併記したらいかがですか?」と提案して、「趣味 料理・ゴルフ・ドライブ」と盛りだくさんに書かせるのではと思いました。

>  まんがキャラと料理という話題ではいくつか思い浮かぶのですが、自分のところで書きますね。

楽しみにいたします♪
2016/09/20(Tue) 19:47 | URL  | サラ #ndrEhoxc[ 編集]
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