2016年09月25日 (日) | Edit |
尊厳者誕生日に遅れたうえに、再録ネタです。

◆その1.可哀そうなアウグストゥス

「わたしのリウィアよ、そなたの依頼どおり、そなたの孫のクラウディウスが、軍神マルスの祭典にどうすべきかについてティベリウスと話し合った。そしてわれわれ二人は、彼の処遇に関し、今後いかなる方針をとるべきかを、このさいはっきりと決定すべきだということで意見の一致をみた。
(中略)
リウィアよ、以上のようなわけで、われわれが今後いつも希望と不安の間を揺れ動かなくてすむように、一度全体の方針について、何か決めておいた方がよいとした私の考えを了解してくれたと思う。
そなたさえよければわれわれのアントニアにもこの手紙のこの部分を読ませてあげなさい。」
(スエトニウス「皇帝伝」クラウディウス-4)



訳者・国原吉之助氏の注釈によりますと、この手紙はゲルマニクスが執政官であった年に書かれたとのことです。
即ち、AD12年です。
アウグストゥスは74歳。
69歳になる妻リウィアからクラウディウスの処遇について相談を受けたのでしょう。
その件について懇切丁寧に返答しています。

タキトゥスとディオ・カッシウスの見解に従えば、涙なしには読めません。
だって、リウィアは、

息子ティベリウスの帝位継承を確固たるものにしようと、アウグストゥスの親族を次々と謀殺(M.マルケッルス、ガーイウス・カエサル、ルーキウス・カエサル、アグリッパ・ポストゥムス)。ついには夫の好物の無花果に毒を仕込んで彼を暗殺したしたとも伝えられる。
(中略)
史家ディオーン・カッシウスによると彼女がアウグストゥスを毒殺したのは、帝が孫のアグリッパ・ポストゥムスを流刑地から連れ戻して支配権をこれにあたえるのではないかと危惧したためで、帝の面前で無花果の実を自ら食べてみせてから、あらかじめ毒を仕込んでおいた実を夫に食べるようすすめたのだという。
(松原國師著「西洋古典学事典」内の「リーウィア・ドルーシッラ」の項目より引用)



かわいそうな、アウグストゥス。
あなたが「わたしのリウィア」と呼びかけている妻は、はるか昔にあなたの甥を謀殺し、さらには、あなたが希望を託した孫たちをも次々と葬ったんですのよ。
あなたが、「話し合った」相手、実子ティベリウスの帝位継承を確固たるものにしようとして。

さらにはこの手紙から2年後、アグリッパ・ポストゥムスが呼び戻されることを怖れて、あなたをも毒殺してしまいますのよ。

哀れで愚かなアウグストゥス。
妻の本心に気付かなかったなんて。
リウィアを信頼しきっていたのですね。

そんな信頼を踏みにじって、夫の血族を次々と謀殺し、挙句の果てには夫も殺したなんて。
最初の甥殺しから、この間、おおよそ40年。
リウィアって恐いですね。
リウィアって狡猾ですね。
リウィアって冷酷ですね。

「だから、ぼくは歴史家には呆れ返るのさ。彼らときたら、一つの事態の納得性ということに関して何も考えてみようとしないらしい。(後略)」

「きっと、すり切れた昔の記録ばかりいじっていると、人間を学ぶひまがなくなるんでしょう。記録に出てくる人間のことではなくて、つまり、生きている人間という意味よ。血と肉のある、本当の人間ね。そして、そういう人間の環境に対する反応を考える、ということを忘れてしまうのね」

(ジョセフィン・ティ「時の娘」より引用)



追記.
皮肉を効かせたつもりの文章を自分で解説するって、ものすごく恥ずかしいんですが、この項目の肝は最後に引用した「時の娘」の一文です。

そこに至る「可愛そうなアウグストゥス」という憐みの言葉は、タキトゥスにせよ、ディオ・カッシウスにせよ、某著者にせよ、「マルケルスの死」「ルキウス・カエサルの死」「ガイウス・カエサルの死」「アウグストゥスの死」を、点でばっかり見てて、「納得性ということに関して何も考えてない」事を皮肉ってます。

◆その2.「戦場のヴァルキリア」vol.4

レンタルショップで借りるDVDを物色していたら、「戦場のヴァルキリア」vol.4のパッケージが目に留まりました。


これ↑。

アップのおにいさんが、オクタビっぽく見えました。
月桂冠らしきものを頭につけてて、髪は短く刈り込んだ薄黄色で、美形で腹黒そうで。

これで名前がアウグストゥスならあつらえたようにぴったりだなと思って、Amazonでの紹介を見たら、この作品は、マクシミリアン、カール、グレゴールとドイツ名の世界のようです。「ヴァルキリア」だから当然か。でも「ガリア」方面侵攻部隊本部なんてあったりもします。

パッケージを眺める以上の関心はないので、レンタルもせず、検索して詳細を調べることもしていませんが、オクタビを彷彿とさせるおにいさんということで、ブログのネタにしました。

◆その3.映像でオクタウィアヌスを演じた役者さんたち


ロディ・マクドゥウェル(エリザベス・テーラー主演「クレオパトラ」1963年)

「クレオパトラを主人公に据えた物語では、オクタウィアヌスは悪役になる。しかも魅力的な悪役ではなく、とことん陰険で卑小で、カエサルの名を盗んだ悪党にされてしまう」事を、知らない頃に見ました。

「オクタウィアヌスが見れる~」と、ワクワクドキドキしていたのに、カエサリオンが正当後継者であるとの主張で、オクタウィアヌスを盗人扱いする展開を視聴することになった、わたしの悲嘆と怒りをお察し下さい。
オクタウィアヌスの人物像について、まるきり嘘で固めているのではない所(フィリッピや、アクティウムでの無様な有様など)もむかつくというか。
役者さんの容姿はハンサムと言える部類ですが、甲高い声がイヤだったな。

アグリッパがおっさんの風貌で出演。マエケナスの出番はなし。


リチャード・チェンバレン(チャールトン・ヘストン主演「ジュリアス・シーザー」(「史劇大全集」に収録))

颯爽とした二枚目でした。
かっこよかったけど、やや体育会系よりのキャラだった気がします。生徒会長も務める、サッカー部のエース・ストライカーといった感じ。

「ジュリアス・シーザー」なので、アグリッパもマエケナスも出ませんでした。


ジョン・キャッスル(チャールトン・ヘストン主演「アントニーとクレオパトラ」1972年)

残念ながらDVD化もブルーレイ化もされてません。

「ROME」のサイモン・ウッズを見るまでは、イチ押しのオクタウィアヌス役者。
声も容姿も役作りも申し分なし。
金髪に赤いトゥニカが映えてきれいでした。
ヘストン演じる熱血漢のアントニウスに比べて、その場の気温を下げる冷静沈着ぶりがとてもよかったです。

これも、アグリッパがおっさんの風貌で出演。マエケナスは出てません。

余談ですが、ジョン・キャッスルは、ジェレミー・ブレッド主演「シャーロック・ホームズ」シリーズ、「美しき自転車乗り」にて、カラザーズ氏を演じてました。
原語で視聴した時、「この品のある低い声は聞いたことがある」と、気づきました。
ついでに書くと、「ROME」のカエサル役の人は、「ボール箱」のジム・ブラウナーを演じてます。


★リンクはしない★
ルパート・グレイブス(レオノラ・ヴァレラ主演「レジェンド・オブ・エジプト」1999年)

見た記憶を消したいわい!
オクタウィアヌスの人物像も最低ならば、容姿も最低。
オクタウィアヌスに限らず、なにもかも最低のドラマ。

アグリッパとマエケナスの出番については覚えてません。ググっても出てこないけど、出番があったけど、載ってないのか、本当に出番がなかったのかは不明。だからといって、見直す気は全然ありません。

余談。
タキトウゥスの「年代記」をパロった小説「この私、クラウディウス」によって、リウィアさまの悪名をよりポピュラーにしたのはロバート・グレイブス。
グレイブスの名はわたしには鬼門かもしれない。


ベンジャミン・サドラー(Benjamin Sadler)(ピーター・オトウゥール主演「ローマン・エンパイア」2004年

肖像に似た面立ちで、二枚目と言える顔立ちなのですが、うーーーん。
なんとなく、HBOドラマ「ROME」でリウィアを演じたアリス・ヘンリーの容姿に抱くのと同じようなモヤモヤがわきます。素直に、「美男」と言い難いところが。
でも、いいポジション(主役だから当たり前とはいえ)であり、いい役作りでした。
スペイン遠征ではぶったおれ、フィリッピでも活躍できず、しょぼーんな演出も、リズ主演の「クレオパトラ」と違って、腹立たしくなく鑑賞できました。
主役であるって、大事ですね。

やっと出た、オクタウィアヌスに従う若きアグリッパとマエケナス。
リウィアさまも出ました。

余談。
HBOドラマ「ROME」で、ブルートゥスが登場した時、どこかで聞いた声だと気になったところ、「ローマン・エンパイア」でオクタウィアヌスの吹き替えを担当した成田剣さんとわかりました。


サンティアゴ・カブレラ(本人が主演「EMPIRE―エンパイア―」2006年)

珍しい黒髪設定のオクタウィアヌス。
脳筋キャラで、オクタウィアヌスらしくないので、あんまり覚えていません。
リウィアさまも出なかったし。

HBOドラマ「ROME」における、オクタウィアヌスの母アティアの大胆な脚色を見た今では、本作のオクタウィアヌスと精神的な恋に落ちる、あのウエスタ聖女を「リウィア」と名乗らせていても、全然問題なしの気分です。リウィア本人であろうが、同名別人であろうが。

彼女が「リウィア」だったら、もう少し、身を入れて見れるかもしれない。

マエケナスは出なかったけど、アグリッパと名乗る青年は味方として出てきました。



サイモン・ウッズ(HBOドラマ「ROME」)2005年

サイモン・ウッズ、きれいです。
鉄仮面というか、感情を断ち切ったような、クールなたたずまいがなんともいえません。
ライティングもよく、役者さんの無表情の感情を上手に見せています。
わたしは、第17話、元老院でブルートゥス一派を糾弾する場面のオクタウィアヌスがとても美しくて好きです。
そして、第21話、オク&リウィ夫妻の手の動きと一瞬の柔和な表情も(笑)。

帝政ローマ三人衆そろい踏み。
リウィアさまも出ました。

しかるにリウィアは初代皇帝アウグストゥスにふさわしい、偉大なる貴婦人であった。

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