2016年10月30日 (日) | Edit |
「ブクオッフで買いましたw」とか、「ネット上で無料Zipをダウンロードして読みました♪」とかは作り手側に失礼なので、なるべく伏せておいた方がいいとは知ってますが、「Kindle unlimitedで読みました!」ってのはどうなんでしょう。

「どうなんでしょう」と言いつつ、わたしは公表しちゃってますが。

AmazonのKindle unlimited(Kindle読み放題)を無料の30日、その後、有料で30日継続して、計60日間利用しました。

せっかくなので、里中作品の感想などをと思いましたが、その前に、感想を公開する機会がなさそうなので、同じくKindle unlimitedで読んだ「黒脳シンドローム」1巻を。

お断り。
Kindle unlimited利用はしばらく前のことなので、内容を思い出しながら感想を書いています。多少の記憶違いはご勘弁を。


石川オレオ「黒脳シンドローム」1巻

LINEマンガ連載サスペンス・ホラージャンル読者数堂々1位!!
「元の体を返してほしかったら、マネキンゲームに参加する?」
交通事故で瀕死となった高校生・雪村は、"全くの別人"の姿で目を覚ました。
スピーカーを通じて謎めいたミッションが下され、命がけのゲームが幕を開ける!!緊迫のサスペンススリラー!!
(作品紹介より引用)



Kindle unlimitedで知ったのですが、「クリア式ゲーム」みたいなジャンルが出来てます。
便宜上、「クリア式ゲーム」と表現しましたが、正式名称はわかりません。そもそも、ジャンル名称があるかどうかも知りません。
この「黒脳シンドローム」の他に「奇少物件100LDK」、「オンライン The Comic」、「僕たちの生きた理由」、「マッシブドライブ」、その他いろいろ、「現実世界にゲーム世界が当たり前のように存在し、条件をクリアして、次のステージに進んでいく」タイプのまんがです。

で、この手のまんがって、わりかし、女キャラへの加害が、性的な加害も含めて、目立つ。
しかし、「黒脳シンドローム」1巻だけで言えば、そういった、女キャラへの加害ゆえの読みづらさってのは少なかったです。
主人公が、無愛想男キャラってのもあるんでしょうが。

ただし、わざわざ採りあげたくなった理由はそこにはなくて、1巻収録の番外編です。

主人公の雪村くんは一人暮らしです。体操選手なので、身体のメンテナンスには非常に気を使っていて、お弁当は自作です。
雪村くんの友人は、両親が忙しい為、ここのとこ缶詰とパンがお弁当でした。
彼の為に雪村くんがお弁当を持参します。
雪村くんの自作弁当に感激した友人は、「俺、料理の勉強しよう!」

気持ち良い思考じゃないですか。
「弁当代を払うから作ってくれ」でもなく、「料理のできる彼女が欲しい」でもなく、自分から「料理の勉強をしよう」なんですから。
「今夜もコンビニ飯 嫁さん欲しいなあ」野郎に、爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。

関連エントリ:【ハーレクイン・コミックス感想 クッキング・ヒーロー特集】

雪村くんが自作弁当であることを、クラスの誰も馬鹿にしたりからかったりしてない所も良かったです。



ではでは、里中作品の感想を。
読んだ作品全部についてはしんどいので一部だけ。
そして、所有している里中作品についてはここでは語っていません。


里中満智子「海のオーロラ」
1978年???


ムー大陸時代、結ばれなかった恋人同士、ルツとレイが恋を成就する為に、古代エジプト、邪馬台国、第二次大戦下の欧州、未来へと転生を繰り返す壮大な物語。

古代エジプト編を読んで知りたくなりました。
ダブル・ヒーロー制であるが、正ヒーロー・レイと副ヒーロー・トトメス、連載当時、どっちに読者人気があったのだろうと。
だって、トトメスの方が好ましかったのですよ。

情熱的で一途なところといい、継母に疎まれ自暴自棄な半ニート生活から、ルツにふさわしい男になりたいと心機一転するところといい、どうあがいても、正ヒーローにルツの心は向いているので、恋が叶わない悲しい境遇といい。

トトメスのキャラが先か、レイのキャラが先かは不明ですが、レイはトトメスとは真反対のキャラ設定です。寡黙で強い思いを胸に秘めといった、良くいえば穏和、悪く言えば影のような存在です。

ダブル・ヒーロー制の難しい所は、正ヒーロー、副ヒーローの読者人気(支持)は拮抗していなければならないが、ヒロインとくっつくのはあくまでも正ヒーローなので、副ヒーローの人気は、正ヒーローよりは劣らねばならない点でしょう。

作り手にとって困るのは、おそらく、正・副ヒーローの人気差が広がりすぎることと、副ヒーローの人気が正ヒーローを上回ってしまうこと。

連載当時、どうだったんだろうなあ。

なお、古代エジプト編以降の、邪馬台国編、ドイツ編、未来編、いずれにおいてもダブル・ヒーロー制は採られていません。
ドイツ編でルツに思いを寄せる金髪青年が登場しますが、副ヒーローと呼ぶほどの存在感はないです。

さて、「ルツとレイが恋を成就する為に、転生を繰り返す物語」と、あらすじを紹介しましたが、「成就」だけなら「成就」してたんですよね。いつの時代も両想いであるのは互いにわかっていたんですから。ただ、両想いとわかっても、いろいろな邪魔によって、ゆったりまったり長く一生を共にすることができなかっただけで。

「恋の成就の為の転生」と書きましたが、「現世で末永くゆったりまったり幸福に一生を共にする為」の転生だったのでは、と思えました。

以下、少々下世話な話になります。
この二人、互いに両想いであるとわかっていても、「結ばれる」ことはなかったと推測できるので、「末永く一生を共にする」の中には「性行為」も含まれていたんだろうなあ。

「愛し合ってるのになかなか結ばれない処女と童貞(※)が、セックスをする為に転生を繰り返す物語」、と、紹介すると、身も蓋もないな・・・。

(※)ルツは多分、いつの時代もヴァージンのままだったと思います。
一方レイは・・・。女とは、課せられる道徳も機会も違うし、経験済みってのがリアルなんでしょうが、そこは少女まんがですから、童貞ってことにしておいてください。


里中満智子「悪女志願」4巻
1978年-1979年


「悪女志願」、「狩人の星座」(1979年-1982年)、その他、1970年代から1980年代に描かれた現代ものを読んで気がついたのは、喫煙場面の多さ。

男も女も喫うわ、喫うわ。妊娠した奥さんの前で夫が喫ってる場面まであります(上にリンクした「悪女志願」4巻)。
夫の結婚前からの不貞が露見して倫婚の話が浮上中なので、嫌がらせの喫煙かと思ったのですが、全然そんなことはなくて、まさに「呼吸するように、煙草を喫ってる」。
妻の側も、「妊娠中なのに!」と怒ってない。きっと、喫煙は呼吸といっしょだと思われている。不貞が露見した憎い夫でも、呼吸を禁じることができないのと同様に、喫煙を禁じることはできないと思ってるんだわ。

一応、「妊婦の傍で煙草を喫うのはよくない」との知識はある時代みたいなんですが。
妻が元カレを訪問した時、煙草を喫おうとした元カレが、妊娠中であることを思い出して喫煙をやめようとしたのに、「気にしないでください。夫も喫ってますから」と受け入れている。

分煙、禁煙が当然の現代とは隔世の感があります。

現代のまんがと喫煙場面について比較しようと思ったのですが、うちの所蔵まんがは、スペインやイングランドの王様だの、前世武将の高校生だの、剣とドレスの女王や女公爵だの、霊感猫だの、王妃マルゴだの、煙草を喫う現代ものが無い、と、悩んだところで、こういう時こそ、ハーレクイン・コミック!
そして、手元の数冊にさっと目を通した限りでは、喫煙場面は無い・・・!

「現代」を舞台にした作品て、作品そのものの魅力とは別に、執筆された当時の世相や風俗が反映されてる面白さがあります。

余談。
少女まんが界の「三大ヘビースモーカー」と言えば、次の三人でしょうか?
エーベルバッハ少佐(青池保子著「エロイカより愛を込めて」)
バンコラン少佐(魔夜峰夫「パタリロ!」)
速水真澄(美内すずえ「ガラスの仮面」)

速水さんは、たしか月影先生の病室でも煙草を喫ってた気がします(記憶違いならご勘弁を)。
バンコランは、禁煙の美術館(?)で屁理屈こねて煙草を喫ってたような(記憶違いならry)。
エーベルバッハ少佐は、「トロイの木馬」回で、禁煙の世論に押されて隔離された喫煙室で煙草を喫ってましたな。禁煙、分煙は日本だけの波ではないようです。


里中満智子「北回帰線」
1980年から1984年頃


別エントリで少し触れています。そちらをどうぞ。
関連エントリ:【御前モカ「CREWでございます! スチュワーデスお仕事日記」他】


    
里中満智子「愛人たち」全5巻
1985年頃


「パンドラ」とか、「愛人たち」とか、「里中さんて、下衆下劣な恋愛もお描きになれるんだと知りました。
引き出しが多いと言うのか、「俗」を描けるからこそ、「聖」なるものも描けるんだなあ。

・・・「下衆下劣な恋愛」と表現しましたが、ひらたく言えば「不倫」です。
この方の描く「不倫」は、妻子持ちのくせして欲情だだもれのウンコな男と、それにひっかかるバカ三乗の女による、汚水垂れ流しのようなむかつきマックスのゲロのような関係です(わたしの感想です)。

口が悪くてごめん。
里中作品以前にも「不倫」を題材とした作品(主に山岸凉子さん、津雲むつみさんによる作品)を読んだことはあったんですが、ここまでむかついた経験はないです。

ごく大雑把なわたしの印象では、山岸さん、津雲さんの不倫ものは、「女もひどい目に遭ってるが、男もひどい目に遭っている」。
しかし里中さんの不倫は、「女が泣きをみてる」「女が大きく損害を被っている」。被害者意識が強いと言われ様がそんな印象です。

ということで、一番むかつかせてくれた不倫まんが、「愛人たち」にリンクしました。
「愛人たち」と複数形になっている通り、三人の「愛人」が登場します。

出版社に勤める五月(めい)は、妻子ある小説家、三枝仁と恋に落ちてしまう。妻と別れるという三枝の言葉を信じ、五月は彼の仕事場に暮らしはじめた。そのマンションの隣に住むイラストレーターの朋子には、圭介という恋人がいたが、彼には彼女以外にも女性関係があった。朋子の隣には政治家秘書の妻、藤村亜紀子の愛人、劇団員の来栖貢が住んでいた。同じマンションに住む3人の愛人たち、それぞれの愛の葛藤を描く。
(作品紹介より引用)



ゴタゴタ、ウジウジ、グダグダを経て、愛人たちは全員相手と切れて、一応前向きに生きていくラストなんですが、なんか、女がバカを見たようにしか思えなかったわ。

五月(めい)は、三枝仁との間に子どもが出来たものの、今はまずいから中絶してくれと頼まれ、葛藤の末に堕胎、その挙句に生殖器を摘出して、一生子どもを産めなくなりました。その間、三枝仁の妻は妊娠して出産しています。

朋子は、妊娠→堕胎がなかっただけ五月(めい)よりマシですが、男の側が何事もなかったように妻とほのぼのとしてるのがむかつく。

来栖貢は、唯一の勝ち組。貧乏な劇団員が藤村亜紀子の援助のおかげで、レッスンを充分に受けて芸能界にデビュー、自分を心から愛してくれる女と結婚して子どもにも恵まれたんですから。
不幸なのは、彼のパトロネスであった藤村亜紀子です。
来栖貢に愛され、自身も愛しながら、浮世の事情に縛られて、彼を「愛人」として囲う形でしか関われないでいるうちに、来栖貢に去られてしまったのですから。

ついでに書くと、三枝仁も圭介も、妻子の元にもどって、平穏に暮らしています。
(三枝仁の妻は熟年離婚の計画があるみたいですが、当分は平穏でしょう。)

こうして見ると、「愛人である」「愛人を囲う側である」に関わらず、「男は一応ハッピーエンド、女はバッドエンド」であるとわかります。

里中さん流の警告なんでしょうか?
妻子持ち男の甘言にのって不倫にのめりこんだって、男は結局妻子を選ぶのよ、子どもが出来たって堕胎を懇願され、中絶したなら不妊症、挙句の果てには、捨てられるのよ、不倫なんておやめなさい、との。

どうでもいい追記。
五巻全部にリンクした理由は、女二人と男一人の「愛人たち」にも関わらず、五冊とも表紙絵は女たちばかりってのはなぜだろうと思いまして。
「男は一応ハッピーエンド、女はバッドエンド」であることと関係あるのかな。

1巻の短髪が五月(めい)、2巻の長髪が朋子、以上2人は「愛人」の立場、3巻のやや巻き髪のボブスタイルは亜紀子で、彼女は「愛人を囲う」側です。


里中満智子「ジュンとヨーコ」
1997年?


ジュンとヨーコは、何処にでもいるような平凡なカップルだった。二人は当たり前のように、ずっと幸せな日々が続くと思っていた。ところが、ジュンが交通事故に遭い、血液検査を受けてから運命の歯車が狂いだす。
(作品紹介より引用)
(補足すると、血液検査の結果、ジュンがエイズ・キャリアであることが判明しました。)



作品紹介文から、エイズをテーマにした一作かと推測したらその通りでしたが、内容は予想以上に解説的でした。読みながら、エイズに取り組む団体からの依頼で描いた啓蒙本かなと思ってたら、エイズ予防財団が関与してるらしいとのことです(「らしい」と書くのは、検索して出てきた図書館の所蔵データでしか確認できてないので)。

啓蒙本なので、エイズについて茶化すことなく、非常に真面目に描いてあるのですが、その点を優先した結果、男主人公ジュンの設定につっこみどころが生じています。

女主人公(ヨーコ)が万引きしている現場を見つけて声をかけたら、たまたま同じ中学で顔見知りだった。
そんな浅い関わりだけで、万引きの非を説き、万引きに至る自堕落な生活を諭し、立ち直るなら一緒にがんばろうと励ましてくれるほどの出来杉くん(ジュン)が、齢15歳(たぶん、誕生日のきていない高1)にして、「先輩に誘われて」「好奇心」で風俗を経験済みですってんですから。

おそらく、「クスリの回し打ち」や「避妊具なしのセックス」の経験者であるヨーコが感染者であれば、読者の目には「自業自得」と映ってしまい、そういう逸脱した行為をしなければ大丈夫だと思ってしまいかねないので、たった一度の性行為でも感染することがあるとのリスクを訴えたかったのだと推測します。
そして、ジュンの過去経験を、一対一の真摯な恋愛の結果としなかったのは、交際相手の女性へと話が広がってしまうことを避けたのでしょう。

おかげで、真面目で他者の為に尽力できる立派な人間なのに、性道徳は半世紀前、さらに、男同士のホモソーシャルの団結優先という、芳しからぬ男キャラになりました。

「先輩に誘われて」「好奇心」で風俗に流された自分を悔いて、出木杉くんになった可能性を考えましたが、ジュンくん、ヨーコとのセックスでは、「コンドームをつけずに何度も」行っています(ヨーコがピルを飲んでた様子はない)。
・・・たぶん、「コンドームなしのセックス」はエイズを含めた性感染症の危険があると主張する為の、「コンドームなしのセックスを悔いる」展開なんでしょうが、おかげで、ろくに避妊もしないバカ男キャラになりました。

(つくづく思った。バカでドジで有り得ない行動や思考は、物語を動かす為に不可欠なのだと。)

本作自体は、まじめでわかり易いエイズ啓蒙書です。
「物語」よりは「啓蒙」に重点を置いているので、偏見や迫害が起きても、さっと、それを否定し批難する人物が現れますので、怒りを溜めずにすみ、読み易いです。

しかるにリウィアは初代皇帝アウグストゥスにふさわしい、偉大なる貴婦人であった。

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