2016年12月05日 (月) | Edit |
(注意)ネタばれ有り。




   
青木朋「龍陽君始末記」全三巻
衣装の描きこみがお見事!
(トーン、じゃないですよね?最近デジタル・トーンが発展してて、どこまでが手描きなのか、わからない時があります。)

清代、広東省広州府龍陽県に新しい県知事、趙天麟がやってきた。
赴任以来、鮮やかな手並みで難事件を次々と解決してくていく趙天麟に、街の人々は大喝采。
けれど民衆は知らなかったのです。趙天麟が龍陽の徒(男色家)であることを。
今日も今日とて、趙天麟は絡まった事件の糸を解きほぐしつつ、美男への懸想に余念がないのでした・・・。



以上は、一般向けに説明。

以下は、少し古めの少女まんが愛読者向けの説明。一文で済みます。

淑人さまが主役になった煌如星シリーズ。



ただし、1巻を読んだ限りでは、煌如星シリーズのような、読後の辛さ、やりきれなさ、悲しさ等は皆無なので、より一般受けするのでは、と思いました。

例えば「龍陽君始末記」1巻収録の第二話「纏足」
三寸金蓮どころか、二寸五分の小さな足を誇る娘さんがいました。
小さな足を見初められ、玉の輿の嫁ぎ先も決まったのに、病床に伏す間に足が一回り大きくなってしまいました。
こんな大足では破談になってしまうと嘆く彼女を、婚約者は、しっかり抱きしめたのでした。
「きっかけはたしかに小さい見事な纏足でした。でも、今は彼女自身を愛しています。足が大きくなったくらいで別れません」(要約)。

求婚の動機となった「纏足」が損なわれても、君自身を愛してるんだ!と言ってくれる。気持ちいい結末じゃないですか。

これが煌如星シリーズ「瘞花銘」(はなをうずむるのめい)だと・・・。
夫亡き後婚家にとどまり、独身で通している未亡人がいました。
貞節な彼女を崇拝し、求婚した男性がいました。
しかし、彼女には秘密がありました。婚家の舅姑から無理強いされた「貞女」のまま朽ち果てていきたくなかった彼女は、過去に新たな恋をして子どもを儲けていたのです。
けれど恋人との仲は裂かれ、産んだ赤ん坊は養子に出され、失意の日々を送っていました。それが、「貞女」の真実でした。
真実を知った時、男は幻滅し去っていきました。

「纏足した足が大きくなってしまった」と「隠し子がいた」では同一に論じるのは乱暴ですが、煌如星シリーズって、ハッピーエンドもあったのに、こういうやりきれない結末に胸苦しくなることが多かった印象です。

譬えるならば、強姦の被害を訴えた女性が、「おまえから誘ったんじゃないのか」「隙があったくせに」「自衛が足りないんだよ。お前が悪い」と、よってたかって誹謗され、結句、訴えを取り下げて去って行く、正しきが報われず、悪が悪のままはびこる、この世は不当なことばかり、そんな気持ちにさせられる結末が多かった印象です。

それでも、わたしは煌如星シリーズが好きです。読後感の切なさ、悔しさも含めて。

おっと、「龍陽君始末記」の感想のはずだったのに、煌如星シリーズの話になってる。

さて、ここまでは、1巻読了時点での感想です。
以下、3巻(最終巻)までを読んでの感想を。

楽しく明るいチャイニーズ・デティクティブ・ストーリーかと思いきや、一話完結にして、一話完結に非ず、一話一話が意味を持ち、連鎖し、アヘン戦争へとつながる、縦糸(物語)と横糸(キャラ)が織りなす見事な一品でした。
だからといって、娯楽、即ち、読者を「楽しませる」ツボは外していなくて、登場人物が負うものは、それぞれ重かったはずなのに、明るい開放的な気持ちで読み終えました。

つい、煌如星シリーズと比較してしまうのですが、この後味の違いはどこからでてるのか。

念の為言っておくと、煌如星シリーズは暗いからダメとか、「龍陽君始末記」は明るいから優れていると言いたいのではありません。
わたしはどちらも好きです。

ただ、ハッピーエンドで終わる話も少なくなかったのに、全体的に、やりきれない思いを噛みしめることになったなあと、煌如星シリーズを思い出さずにはいられません。

では、「龍陽組始末記」の感想を箇条書きで。

◆×姓(重要ネタばれにつき伏字)登場でピンとこなかった自分が、歴史好きとして情けない・・・。

◆最終回、好きです。
「良く生きた者だけが、良く死ねる」とは、山岸凉子さんの「六の宮の姫君」であったか、あるいは、内館牧子さんのエッセイであったか、出典はともかく、「良く練られた話だけが、良き最終回を迎えられる」と実感する結末でした。

◆最終回で好きなとこ。
わたしが好きなのは、趙天麟(男)と汪来嘉(女)が結ばれなかったことです。

あらすじで説明してませんが、汪来嘉は趙天麟の幕友(私設秘書)を務める女性です。
家庭の事情で纏足を施されず、大足のままで、それが劣等感にもなってます。

阿片をめぐる騒動のさなか、趙天麟たちと別れ、イギリスに渡って看護師の資格を得て、故国に戻ります。そして、フリーの形で阿片や奴隷売買を駆逐している趙天麟一派と再会しました。

で、汪来嘉は、看護師のスキルを生かして、趙天麟一派の仲間として参加します。

ラストシーン、汪来嘉に手を差し伸べる趙天麟と、その手を取ろうとする汪来嘉のツーショットでありますが、最後の最後まで、「趙天麟は男色家」である設定はぶれずにいたので、ここは、「恋の始まり」ではなく、わたしは「仲間との再会、そして未来へ」だと受けとめました。

作者さんがお上手なのは、ヘテロ恋愛を好む読者の期待も切り捨てていないこと。
いや、逆か。
少女まんがであることを考慮すれば、ヘテロ読者向けに「恋の始まり」のムードをかもしつつ、恋愛ではない解釈も可能にしたラストだと思います。

最終回でもうひとつ好きなエピは、結婚した良佐(男)さんと珊珊(女)さんが、実子三人の他、14人の子どもを養子に迎えていたこと。
「夫婦と実子だけが家族」以外の姿を描いて下さった点が好きです。

しかるにリウィアは初代皇帝アウグストゥスにふさわしい、偉大なる貴婦人であった。

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コメント
この記事へのコメント
レス
>12月15日、鍵コメントを下さった方へ

コメント拝見いたしました。
申し訳ありませんが、現時点ではご遠慮したいと思います。
お申し出ありがとうございました。

2016/12/17(Sat) 21:33 | URL  | サラ #ndrEhoxc[ 編集]
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