2017年03月24日 (金) | Edit |
(注意)ネタばれ有り。

好きとか嫌いとか、感情も理由も明確であればすっきりするんだけど、たまに曖昧なことがあって、もやもやします。

たまたまプリGOを読む機会があり、連載中の「新☆再生縁」を知りました。
作中で登場した萬貴妃が気になって。
悪役なんだけど、なんだけど、なんだけど・・・。
ごめん、なんと言っていいかわからない。

好悪で言えば、「好」です。
だけど、好感情と表現するのはためらってしまう。
そして、自分が「好」感情を抱く理由がわからない。


滝口琳々
「新☆再生縁-明王朝宮廷物語-」1巻


その後、1巻のみ期間限定で試し読みが公開されていました。
雑誌での1話だけなく、まるまる1巻読めば好悪も理由も明確になるかもしれないと思い、読みました。
しかし、わからなかったです。

好悪で言えば、「好」です。
だけど、好感情と表現するのはためらってしまう。
そして、「好」感情を抱く理由がわからない。

だって、萬貴妃って悪役なんです。ただの悪役なんです。
読んだ範囲では、悪にならざるを得なかった悲劇的な背景はなく、やってることも、目障りな皇太子暗殺をたくらみ、人事を私し、宝石等贈賄を受けとり、と、私利私欲のみ。
ぜんっぜん、「好」感情を持てる要素はないのに。

彼女に思い入れもありません。
陳舜臣さんの歴史エッセイ「妖のある話」で読んだくらいです。
(思い入れがないからこそ、「悪役」であることに腹が立たないとも言えますが。)


陳舜臣「妖のある話」
(中国およびアジア史の女性たち、萬貴妃ほか、王昭君、西施、卓文君、ヌール・ジャハーン、秋瑾、木蘭など収録。歴史上の女性の紹介と言うより、女性を紹介しつつ、著者が一家言を添えてる歴史随筆といった趣です。)

だけど、気になる。
好悪で言えば、「好」で気になる。

萬貴妃って存在そのものが「世間の常識」に照らして「悪」であるからかなあ?
「世間の常識」とかっこつきで表現しましたが、要するに、「男社会の常識」です。
「世間」てのは、まだまだ「男の意見」であることが多いので。

夫よりも17歳も年上であり、
年老いた女であり、
すでに子どもを産めなくなった女であります。
男にとって、生殖の役にも立たず、性的魅力も失った女であるにも関わらず、年下の男を支配している。
あらゆる点で、男にとって許されない悪です。
男の視点から見て悪の存在だから、逆説的に、わたしは「好」感情を抱いている・・・、のか?



考えて、考えて、どうやらわたしは、作中の萬貴妃本人ではなく、作者さんの萬貴妃の描き方に、「好」感情を抱いているのでは?とも、思えました。

(1) 主人公側が、萬貴妃を「ばばあ」、或いは、それに類する言葉で罵倒していない。

萬貴妃は夫の成化帝より17歳年上です。作中1巻時点で57歳。
男性視点が幅をきかせる世の中である為か、創作でも、「老いた女」と「年上の女」は、しばしば「あってはならないもの」、「悪」として扱われます。

関連エントリ:【女は「老い」を許されない】

世間では、というより、男性が、気に入らない女性に対して「ばばあ」と罵倒するのは珍しくありません。
「ばばあ」にまーったくあてはまらない10代、20代の女性であっても、男から「ばばあ」と罵られることがあります。
「ブス」って罵倒も多いね。美人さんに対してでも。
それだけ、女は老いること、醜くあること、そして老いて醜くあることを、ひいては、「男の欲望を満たさない存在であること」を許されていないのでしょう。

主人公側にとって萬貴妃は敵です。ラスボスです。
当然、敵意を持ち、嫌悪を抱いており、萬貴妃を語る言葉は、批難に彩られています。
けれど、「ばばあ」とか「年も省みず年下の陛下をたぶらかして」等、年齢を謗る誹謗は出てきていません。

萬貴妃は夫の成化帝より17歳年上であり、年齢差にも関わらず、成化帝の寵愛が厚いとのセリフはありましたが、あくまでも「事実」として述べられており、「ばばあ」を謗るものではりませんでした。

主人公側が批難しているのは、萬貴妃の年齢ではなく、皇太子暗殺を画策し、国政を紊乱していることです。

追記.
これを書いてる時、とある女性政治家が糾弾される立場にありました。
批難するツィートのなかには、「おばさん」「ばばあのくせに」等の、職務とも人間性とも全く関係ない女性性を貶める文言もありました。
これが世間の通常であるなら、やはり、萬貴妃を決して「ばばあ」あるいはそれに類する言葉で主人公側が罵っていない点は良い意味で注目点かと思います。

(2)萬貴妃が美魔女でない。
いや、お美しいです。
お美しいんですが、くっきりと描かれたほうれい線といい、でっぷりとしたあごといい、年齢不詳の「若さ」は描かれてないな、と。

先に述べた通り、「老いた女」は「悪」なので、悪役である萬貴妃だから、作者さんは、遠慮なしに老いた容姿でキャラデザしただけかもしれないのですが、わたしはこの老いを刻んだキャラデザに「好」感情を持っていて。

理由がわかりそうでわからんとこがもやもやします。

強いて言えば、「女は老いを許されない」、だから、老いを刻んだ容姿で登場したことに「好」感情を抱いた・・・、のか?

とにかく、わたしが、作中の萬貴妃の老いを刻んだキャラデザに「好」感情を抱いてることは確かです。

老いてはいるけど、強い意志を宿した瞳を持つ萬貴妃は美しいです。
この「強い意志を宿した瞳」も、世間的には「自分の意志を持つ女」として、「悪」なのでしょうが。



それやこれやで、気になるので続きも読んでみたいのですが、読者に好かれてナンボの主人公たちと違って、萬貴妃は悪役。読者に嫌われてナンボ。
思いっきり、歪められ、貶められて描かれるやもしれぬので、手を出しかねています。

あるいは逆に、「悪とならざるを得なかった過去」とかが出て「悲劇の悪役」と化すのであれば?

「陛下が一番お辛い時(成化帝には冷や飯喰らいの時期がありました)、そばにいてお支えしたのは、わらわであった。
年の差はあれど、わらわは陛下を慈しみ、陛下もわらわを愛して下さった。
子どもにも恵まれた。
なぜ、何の苦難も共にしていない女の産んだ子に、陛下の跡を継がせねばならないのだ?
陛下の跡を継ぐ資格があるのは、わらわの産んだあの子だけです。
亡くなってしまった、あの子。あの子が生きていれば!
もはや戻らぬ命であれど、他の側妃が産んだ子に、陛下の後は絶対継がせない!」



こんな独白がでてきたら、どう感じるだろう、わたしは。



今なら、作品への好意だけで終わります。
続きを読んで悪い方にころんで、作品にも作者にも嫌悪を抱く、なんてことになったらいやだしなあ・・・。悩ましいです。

主人公側の一人、劉奎璧(りゅう・けいへき)なんて、「ばばあ」と口にしそうな男だしな。

劉奎璧、こやつはわたしを不快にさせる何かを持っている(笑)。
「真田丸」、真田信繁のセリフが元なので、「何か」ともったいぶった言い方をしましたが、こやつに抱く不快感の原因はわかってます。

雨夜の品定めよろしく、皇太子、酈君玉(男装主人公)(りん・くんぎょく)と語らう男子トークで、劉奎璧は「理想の女人像」について一席ぶちます。

昔から世間では、「美人で教養のない女」がもてはやされますが、私はバカな女では話が合わないからゴメンです。
私を励まし、しっかり支えられるような優しく賢い女で、いざという時には勇気をもって事に当たれるような、強い面を持ってる女性が理想です。
でも武術ができる女はいただけない。性格はきついし、守ってあげる喜びがないですからね。



自分は世間の凡夫とは違うと言いたげですが、言ってることは
「俺に尽くしてくれる女がいい。俺の役に立つ女がいい。俺の自尊心を満たす女がいい。」

ベクトルは違うけど、「美人で教養のない女」を好む凡夫といっしょだよ、あんたは。

心底悪い奴ではなさそうですが、他の言動も、なんか、チクチク不快なとこがある人物です。
でも、これはこれで、作者さんはお上手です。
主人公側が、正義感の強い聖人君子ばっかりではメリハリが無くてつまらないですもの。
辛子のような劉奎璧の存在感が、主人公側の魅力のひとつになっていると思います。



余談ながら、「妖のある話」の萬貴妃の章を読み直したら、
(1)孝宗(「新☆再生縁」中の皇太子)の頭には大きな禿があった。
(2)成化帝外出のおり、萬貴妃は武装して伴をした。

「新☆再生縁」に、採り入れられているでしょうか(笑)。

もひとつ余談。
萬貴妃は悪役であり、多分ラスボスであると思われますが、政治をうっちゃらかしてる成化帝も「悪」だよなあ、と、無能、無責任ゆえに、悪役の謗りを免れている事に嘆息したのですが、

「明の皇帝は無能がデフォルト(たまに名君もいるよ♪)

であったと思いだしたのでした。
明の皇帝ってやつぁ・・・。

しかるにリウィアは初代皇帝アウグストゥスにふさわしい、偉大なる貴婦人であった。

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